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04 ダンスレッスン

「もうすぐ開催される音楽祭のダンスパーティーにむけて、ダンスの最終確認を行います」


 教師が言うには、3年生は下級生のお手本となるよう、特にAクラスはいろいろな意味で注目されるから、今日は当日流れる曲を使ったリハーサルの時間にするということだった。


「最初の曲は実力のあるメンバーのダンスを鑑賞しましょう。では、ダミアン殿下とエリザベス嬢、そして、レオナルド殿下とソフィア嬢、ルイス様とマリアベル嬢、前へ来ていただいても?」

 ダンスの教師に促され、前に出る。


(レオナルド殿下のお相手なら身分的にエリザベス嬢が適任なのになぜ私なのかしら)


 ソフィアはそう思ったが、教師からダンスがきれいに見える身長差を考慮したペアだと言われて納得する。


「レオナルド殿下、ルイス様、できましたらこの曲については帝国流の振付でお願いしたいのです。見たことがない生徒が何人もおりますので。ソフィア嬢もマリアベル嬢も帝国流の振付を学んでおりますので、お相手として問題ないかと思います」


「わかった。ソフィア嬢、急に振られたが大丈夫だろうか?」

「はい。問題ございませんわ」


 お相手に挨拶をするところから始まり、差し出された手を取る。

 レオナルドの手に触れた瞬間、ソフィアは一瞬心臓の鼓動が大きく脈打つような感覚を覚えた。


(……今の、何?)


 でもレオナルド殿下の表情は変わらないのでソフィアも平静を装う。


(今は帝国流の振付に集中しないと。先生も、前もって教えてくれれば予習してきたのに……)


 曲が流れ始める。


(……踊りやすいわ。ダミアン殿下のリードも悪くはないけどレベルが違う。レオナルド殿下のリードは、私にピッタリ合っているという感じ……)


 やっぱり身長差って意味があるのかもと思いつつ、リードに従ってステップを踏む。


 すると、レオナルドが話しかけて来る。

「ソフィア嬢、帝国流の振付はどこで覚えられた?」

「学園入学前に、侯爵家でお願いしていたダンスの先生が、帝国出身の方でしたの」

「そうか、ステップも完璧だし、踊りやすいよ」

「私も今同じことを思っておりました」

「そうか。なら良かった。では、本番のダンスパーティーでも1曲いかがだろうか?」

「光栄ですわ。よろしくお願いいたします」


「ところで、ソフィア嬢、今つけている香水のブランドを教えてくれないか?」

「?」

「何というか、品があって好ましいので、帝国にいる母や姉へのお土産に買いたいんだが」

「えっと、いま香水はつけておりませんの」

「では、寮のルームフレグランスかな?」

「そちらも特には……」

「ではこの香りはなんだろう。シャンプーかな?」

「シャンプーは寮に備え付けのものを使っておりますので、ほかの皆さまと一緒ですわ」


 会話をしているうちに、あっという間に曲が終了した。


 見学をしていたクラスメイト達からは、大きな拍手と、「素敵だわ~」という声とともにため息がこぼれていた。

 3組とも流れるような美しいダンスでお手本としてはこれ以上ないものだったからだ。

 特に、帝国流を初めて見たクラスの面々は、難しいステップについていけるソフィアとマリアベルに尊敬の眼差しを向けていた。



 2曲目に入り、ほかの生徒たちが踊り始めると、レオナルドは先ほどのソフィアとのダンスを思い返していた。


 なぜなら、ソフィア嬢が今まで踊った帝国の令嬢たちの誰よりも踊りやすかったからだ。

 まさか、帝国流振付のダンスパートナーとして一番しっくりくるのが他国の令嬢とは思いもしなかったのだ。


 ただ、最初に手が触れた時の、ぞわぞわするような感覚と、踊っている間にほんのり感じたなんとも好ましい香りが一体何だったかが謎のままだ。


 もう一曲踊ってみたかったが、今は授業中。

 ダンスパーティーで踊る約束を取り付けて、いつもはあまり気乗りしないパーティーが今回は少しだけ悪くないかもと、思うのだった。

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