表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/50

15 二度目の接触(sideレオナルド)

 レオナルドは混乱していた。

 目の前に立つ俺の唯一は今何と言ったのか。



 ミールが二度目の反応を見せたため、ルイスに目配せをしてからあわてて後をついていくと、廊下の先に彼女がいた。


 彼女がミールの誘導でこちらに向かってくるが少し焦っているようにも見える。

 その後方に、うろちょろ害虫みたいなものが見えた気がするが……駆除は後回しだ。


「レオ様、早く二人きりになりたいの」


 いきなり!? しかも、そんな甘い声で!


 何やらいろいろ必要なステップがすっ飛んでしまっているようだがどうでもいい。


 これは俺の願望が見せる幻か妄想か? ルイスの言う通り白昼夢なのか。まあ、こんな夢ならずっと見ていてもいい。


 二人きりになったら、あんなことやこんなことを……いや、いろいろ想像してしまう前に思考回路を止めた方がいいかもしれない。

 こんな風に誘われたら暴走してしまいそうだ。


 今から俺の専用サロンでじっくり親交を深めよう。今日は名前を聞くまで絶対帰さない。


 エスコートするため手を差し出す。

 ああ、すべすべの柔らかい手だ。このかわいい手も何もかも俺のものにしたい。


 サロンまで移動する間も、遠慮がちだが少し寄りかかってくる。あのいい匂いもする。


 まずいぞ、まずい。平常心を保てよ俺。

 耐えろレオナルド!


 次に彼女に会えた時はこの専用サロンに誘ってゆっくり話ができたらいいなと思っていたが、いきなり実現するとは。


 だが、彼女の手が少し震えているような気がする。表情もこわばっているようだ。

 おそらくさっきの害虫から逃げたくて、ひと芝居打ったというところか。

 この間のゲームといい、肝の据わった女だな、君は。

 まったくもって俺の妃にふさわしい。


 だが俺の唯一を追いかけて怯えさせた虫けらは排除一択だ。覚悟しておけよ。



 サロンの扉が閉まると、案の定、彼女は距離を取ろうとするが、その手を離すという選択肢はなかった。


 やはりお芝居だったか。でもこんなチャンスは逃さないと強く思う。


 何か怖い思いをしたのだろうか、体が震えているし、目元も潤んでいる。何か言い訳をしようとしている彼女を安心させるため抱きしめた。

 誤解しないでほしいが、俺の中ではこの行動は介抱の位置付けだ。


 怖かったのかと聞くと、小さく頷く俺の唯一。

 表情は残念ながら見えなかったが、反応がかわいいのに萌える。


 怖いときは、俺を頼ればいい。俺が必ず守るから。

 でも、ああ~、いろいろ柔らかい。このまま上を向かせて唇を奪ってしまおうか。


 手が無意識に髪の毛を撫でてしまったが、これも彼女の気持ちを落ち着かせる手段という解釈だ。


 だが、彼女の口から「殿下」という言葉が出てきたところで冷静になる。

 そうだ、俺たちは名前を呼び合うことすらできていないのだ。


 早く「レオ」と呼ばせたいが少しずつ慣らしていくしかなさそうだ。


 ソファーに座ってもっと親交を深めようとしたところで、お邪魔虫ルイスとエマの登場だ。

 いい雰囲気が台無しだ。なんだか今日は虫が多い。


 俺の唯一の顔がほんのり赤くなっている。照れているのか? かわいいな。


 絵師でも呼んでこの姿を残しておきたいくらいだ。だが、ほかの男にこの顔を見せたくないから、女性の絵師限定だ。


 そこからはとにかく唯一の素性を知りたくて質問攻めをしてしまった。

 つまらない男だと思われてしまうのも怖いが、何しろ俺は毎日会いたいのだ。まだ本名は出し渋られているが、せめて次の約束くらいはとりつけたい。


 結局、今日の収穫は、フィフィという愛称を聞けたことと、来週月曜日にこのサロンで会えること、この2つだった。

 まあ、実在していることがわかっただけでも良しとしよう。



 それをルイスに伝えたら、鼻で笑われた。

「名前を教えてもらうという、もともと低めのハードルを越えられていませんからね」


「まあ、フィフィがどこの誰か突き止めるまでは、帝国には報告はしないでくれよ」

「心得ています」



「フィフィというのは名前から来ているのだろうか?」

「“フィ”が名前に入る令嬢は何人かいますよ。1年Aクラスのフィアナ嬢、ジョセフィーヌ嬢、Cクラスのセフィリア嬢、2年Aクラスの……」

「ちょ、ちょっと待て、覚えているのか?」

「側近として当然です。ああ、うちのクラスのソフィア嬢も当てはまりますね」

「どんな記憶力だ。もしかしてあの外見が一致するリストアップの時もこういうことだったのか」

 ルイスが自分の側近でよかったと思うレオナルドだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ