表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オリガン家の落ちこぼれ  作者: paiちゃん
289/384

E-288 目的地はかなり遠い


 約束に日に、エディンさん達が荷馬車を20台も引いてきたのには驚いた。

 しかもボニールで曳く荷馬車ではなく、2頭立ての馬だからなぁ。ボニールの曳く荷馬車の2倍は搭載出来るんじゃないか。


「エクドラル王国もかなりの荷馬車を準備しているようですよ。レオン殿のところはボニールを多用しておりますが、多くの荷を積むともなれば馬が一番です。荷馬車1台に付き御者を1人付けますからご安心ください。元レンジャー達ですから、自分の身を守ることは出来るはずです」

「ご協力、ありがとうございます。本来なら報酬を払うことになると思うのですが、エクドラル王国からの報酬だけで十分なのですか?」

「今まで沢山稼がせて頂きましたから、これぐらいの事で帳消しに出来るとも思えません。戦が終われば荷を積まない荷馬車はそのまま私共の下に帰ることになるでしょう」


 荷馬車が5台ほど足りないとエニルが言っていたけど、これなら十分に搭載できるだろう。荷を分散してボニールの曳く荷馬車を軽くも出来るんじゃないかな。


「火薬とカートリッジは依頼された2倍を運びました。魔族が10倍と聞いております。お気を付けて戦に臨んでください」


 エディンさんに、笑みを浮かべて頷いた。

 火薬はありがたいけど、今回の戦に使う分は既に荷馬車に積んであるからなぁ。今回運んでくれた火薬は次の戦の為に保管しておこう。


 翌日からエニル達が積み荷の入れ替えを行ってる。

 荷馬車が増えたし、積載量もかなりある。搭載を諦めた品も詰んでいけるに違いない。

 クロスボウを使う少年達も、一緒になって積み荷の入れ替えを手伝っている。既に戦支度なんだけど、体が重くないのかな?


 出発の2日前に関係者が集まった。

 集まった連中を前に、レイニーさんが最終的な派遣軍の全容を明らかにする。

 俺がエニル達銃兵部隊と民兵であるクロスボウ部隊1個小隊を率いていくのは前にも明らかにしたのだが、レイニーさんはさらに1個小隊を追加してくれた。

 ヴァイスさんの率いる弓兵2個分隊とガイネルさんの部隊からオルガンさん率いる2個分隊の元重装歩兵だ。

 夜間監視はヴァイスさんに任せても良さそうだな。トラ族2個分隊もありがたい。力自慢が揃っているからね。

その上に、ガラハウさんのところから3人と、エクドラさんのところからも3人出してくれるらしい。

 ドワーフ族がいるなら荷馬車の故障も対応できるし、石火矢の方も手伝って貰えるだろう。エクドラさんのところからの3人は食堂の小母さんだから、道中の食事や陣を作った後の食事も美味しく頂けそうだ。


「さすがに重い鎧は着せることが無いが、長剣の腕は確かだぞ。槍もそこそこ使えるが、何といっても力自慢の連中だ」


 女性が派遣軍の8割方を占めているからなぁ。柵作りはお願いすることになってしまうだろう。


「まともな食事が出来ないと、力も出ませんよ。少しはマシな食事を食べさせないといけません」


 確かにそうなんだよなぁ。エルドさんも頷いているぐらいだ。


「これで全部です。かなり石火矢を運びますから、ガラハウさんは増産を継続してください」

「了解じゃ。レオンの留守中に魔族が来ると困るからのう。たっぷりと魔族に撃ち込めるよう作ってやるぞ」


 一番の気掛かりはそれなんだが、全員がその危機を自覚しているなら問題は無いだろう。一丸となって魔族を相手にしてくれるに違いない。



「クロスボウ部隊に光通信機を使える者がいますから、連絡は密にお願いします」

「到着までは何も無いと思いますから、俺達の陣を作ったところで毎晩状況を伝えます」

「そうしてください。連絡文は翌日に掲示板に貼って皆に知らせようと思っています」


 レイニーさんの言葉に皆が頷いている。

 確かに此処だけの話では無いはずだ。ブリガンディ王国の迫害を逃れて来た人達ばかりだからなぁ。戦の推移は気になるに違いない。


「エディンさんがかなり荷馬車を提供してくれました。荷の積み込みを3日で終えて、1日休んだところで出発したいと思います。15日は掛かると思っていますが、途中で何が起きるか分かりませんからね」


「余裕を5日見込んでの出発ですね。ティーナさんにはレオンの方から伝えてください。それでは今夜はこの辺りで終わりにしましょう」


 レイニーさんの言葉で会議が終わる。

 指揮所に残ったのは俺1人だ。既にナナちゃんは夢の中に違いない。

 メモを取り出して、忘れたことが無いことを再度確認する。

 強いて言うなら、嗜好品の確保だな。

 エディンさん達が雑貨屋に積み荷を運んでくれたはずだし、同行してきた行商人達も明日は店開きをするだろう。

 少し多めに買い込んでおくか。王都の店でも買い込んできたんだが、多い分には困ることはないからね。

               ・

               ・

               ・

 エディンさん達がマーベル共和国を出て2日目の早朝。連合軍へ参加するために俺達もマーベル共和国を出発した。

 いつもより1時間も早く起こされたから、眠い目をこすりながらの朝食だったな。

 広場に集結した俺達の周りを住民が囲み、レイニーさんの激励の挨拶を受けた。

 簡単に「元気に帰ってきます!」と答えたんだけど、周りから拍手が巻き起こった。

 拍手が続く中、中央楼門を次々と荷馬車が通り抜ける。

 先行はヴァイスさんだ。まあ、何となく分かる気がするな。特に問題も無いし、周囲の警戒もやってくれるに違いない。

 荷馬車の後方にエニルの部隊と民兵1個小隊、それにトラ族の2個分隊が続く。

 俺とナナちゃんはエニルの部隊の前方に位置したんだが、ナナちゃんは荷馬車の荷台に何時の間にかちょこんと乗っている。

 小柄だからなぁ。俺達と歩くのは疲れるんだろう。

 

 杖代わりの槍を持ってエニルの隣を歩くことになったが、エニル達も短槍を持っている。やはり杖代わりということなんだろうけど、短槍は色々と使えるからね。邪魔な武器とはならないはずだ。


「荷馬車だけで25台です。石火矢の搬送は考えないといけませんね」

「便利ではあるんだが場所食いだよね。棒を分離しているんだけど、それでも15台になってしまったからなぁ」


 石火矢に比べると、大砲の方は1門だけだから砲弾も木箱5箱で済んでいる。新型大砲を運用するときにもこんな感じで砲弾を運ばないといけないんだろうな。ボニールの数をさらに増やさねばなるまい。


 3日目に、渡河地点に出る。

 荷馬車を連ねてはいるが、ほとんど徒歩での移動速度で行軍しているようだ。このままなら、余裕を持って現地に到着できるに違いない。

 昼近くに到着したから、河原に焚火を作り今日は此処で野営をする。

 釣り好きな連中が竿を出すのを見て、俺もバッグから釣り竿を取り出した。

 エディンさんが贈ってくれた、ツナギ竿だ。4本を繋ぐと5ユーデほどになるし、矢竹を使った竿は思った以上に軽い。

 道具は良いんだが……、釣果はいつもより少ない感じだ。

 それでも十数匹は上げたはずなんだが、ナナちゃん達が直ぐに持って行ってしまうから、いつも釣果が分からないんだよなぁ。


 竿を畳むとネコ族のお姉さんが残念そうに見ているんだけど、河原に10人以上の釣り人がいるんだから全員が串焼きを食べられると思うんだけどなぁ。

 道具を仕舞って、焚火の日でパイプに火を点ける。

 もう直ぐ夕焼けが始まるんじゃないかな。

               ・

               ・

               ・

 街道に出たのは出発して9日目だった。少し強行軍だったかもしれないな。

 疲れた連中を町で雇った荷馬車に載せて先を急ぐ。

 11日目にエルデ川の橋を守る関所を通り、ひたすら東に向かって進む。

 マーベルを出発して17日目に北東に王都が見えてきた。

 ナナちゃんと一緒に、王都を出てから十年以上時が過ぎている。

 俺達が泊った宿の小母さんはどうなったんだろうな……。無事に災禍を逃れたんだろうか。


「さて……、まだ他国の軍は来ぬようだ。我等はどこに陣を張るのだ?」


 ティーナさんはヴァイスさんと一緒に前にいたはずなんだが、心配になってきたのかな?


「王都から1コルムで良いでしょう。王都への街道の東に陣を張ります。西側ではエクドラル王国軍の進軍の邪魔になりますからね」

「邪魔とは思わんだろうが、さすがに街道を閉ざすようでは問題だがな」


 直ぐに軍馬を前に進めて行ったから、ヴァイスさん達に知らせるのだろう。

 伝令を送れば十分に思えるんだが……。それでは遅いと思っているのかもしれない。


 王都の南、1コルムに陣を張ったのは翌日だった。出発してから既に18日が過ぎている。やはりブリガンディは遠いんだな。

 エディンさんが用意してくれた荷馬車の荷を下ろして、大きなテントの中に積み上げておく。

 現場指揮所と同じ大きさのテントだから、5張りのテントに荷を下ろしたところでエディンさんが準備してくれた荷馬車はここで引き返して貰う。

 エディンさんから報酬を貰っているのだろうが、俺達からも御者に銀貨を2枚ずつ渡しておく。

 ここまで荷を運んでくれたんだからなぁ。やはり感謝の気持ちは必要だろう。


 荷馬車からボニールを放して、荷馬車を柵代わりに陣の北に並べる。

 銃兵1個小隊が監視をする中、慌ただしい夕食を取る。

 魔族との距離は1コルムだ。今夜は緊張で眠れないかもしれない。

 夕食が済むと現場指揮所に小隊長達を集めて、明日の作業を調整することにした。

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ