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オリガン家の落ちこぼれ  作者: paiちゃん
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E-249 俺達の領土が大きく広がった


 誰もが知ってる秘密組織の結成に伴って、ビーデル団への依頼を見直し、いくつかの仕事を取り下げることにした。

 城壁前の荒地の草刈りや薪の配布、それに投石用の小石の山の管理等は大人達の仕事に違いない。

 

「とりあえずはこれで良いでしょう。後は様子を見ることにしましょう」

「それにしても、これほど頼んでいたとはのう……。エディン達がやって来た時に小遣いを配っているようじゃが、もう少し出してやらんとなぁ……」

「その辺りは、エクドラさんとマクランさんで調整してくれると助かります。年少、年中、年高に区分して渡せるなら彼らの不満もあまり出ないかと思います」


 うんうんとエクドラさんが頷いているから、後は任せておこう。団長と相談してきちんと決めてくれるに違いない。


「エルドよ。あの看板ややり過ぎじゃないのか? 最初見た時は、吹き出しそうになったぞ」

「慌てて路地を橋って腹を抱えて笑ったからのう。秘密組織の秘密基地なんじゃろうが」

「でも子供達は喜んでましたよ。『俺達の秘密基地だ!』ってね」


 大人と子供の感性の違いなんだろうな。

 でも、それが分かるエルドさんはまだまだ子供の心を持っているということかな?

 そういう意味ではヴァイスさんも同じなようだ。

 初めて見た時に、しきりに羨ましがっていたトレイニーさんが言っていたからね。


「まあ、公然の秘密ということであえて見て見ぬ振りをしてください。何と言っても秘密基地ですからね」

「もちろん、それぐらいはしてあげるにゃ。たまに差し入れもしてあげるにゃ」


 ヴァイスさんの言葉に皆が頷いているから、御菓子に困ることは無さそうだ。

 

「とはいえ秘密基地だからなぁ……。大人の出入りは出来ないってことか?」

「そりゃあ、お前……、秘密基地だろう?」


 要するに子供達だけの城として認定されたということかな。ちゃんと維持してくれれば良いんだけどね。


「次は、エクドラル王国のサドリナス領分割に伴うマーベル共和国の対応なんですが、俺とレイニーさんに任せて貰っても良いということですね?」

「この地にワシ等が暮らせるのもレオンが頑張ってくれたおかげじゃ。最初に囲った柵から比べれば開拓村が地方都市ぐらいの大きさになっておる。開拓民も開拓するだけの内が増えるんじゃからなぁ。来年もここを離れて村に向かう連中も多いに違いない」


 開拓農家の次男三男も独立して農地を得られるということにマクランさん達が喜んでいる。

 今は2つだけだけど、いずれは豊かな農村がいくつか出来るだろう。


「俺達に確認するということは、何か問題でもあるのでしょうか?」

「たぶん現在の領地の2倍ほどになりかねません。そうなると、防衛が出来るかどうかちょっと自信がありません」


 俺の言葉に、皆が意外そうな表情を見せた。

 やはり領土は広い方が良いと思っているんだろうな。分相応という言葉を知っているんだろうか?


「レオンの言葉とも思えんぞ。領土は広い方が良いに決まっておるじゃろうが。ここに来た当初よりも住民は数倍以上に膨らんどるんじゃ。それぐらい何とかせんか!」

「はぁ……。頑張ってはみますけど……」


 溜息混じりに答えたけれど、本当に出来るんだろうか?

 どう考えても中隊規模で軍を拡張する必要があるんだけどなぁ……。


 指揮所に籠って、どうやって防衛体制を構築するか考えこむ日々が続いている。

 レイニーさんは2個小隊規模の徴募を考えているようだけど、それが限界だと思うんだよなぁ。

 どう考えても中隊規模は不可能だ。民兵の拡大も視野に入れてはみたけれど、個人経営の農家を作る方向に逆行しかねない。

 西の防衛には最適だが、南はまだまだ開拓が進んでいないからなぁ。

 

 結局は小さな砦と機動部隊ということになりそうだ。

俺達の戦力は4個中隊。その内の1個中隊は民兵だからね。西の尾根の防衛に1個中隊、ここの防衛に1個中隊。南の見張り台と新たな砦に1個中隊を置いて、機動部隊を1個中隊とすれば良いのかな。

全ての中隊が守備体制を維持するとなると、休養を取れる部隊が無くなってしまうのが問題だ。俺の直轄部隊であるエニル達の銃兵部隊を拡大して機動部隊とするしか方法は無いのかもしれないな……。

 となると、新型大砲を早く完成させたいところだ。

 最大射程が3コルムを越えて、正確な砲撃が出来るなら機動部隊としての役目を十分に果たせる可能性がある。

               ・

               ・

               ・

 グラムさんが立派な馬車と騎場隊1個小隊を伴ってマーベル共和国を訪れたのは、夏を過ぎた時期だった。

 ティーナさんが早々に訪れると言っていたけど、結構時間が掛かったのはサドリナス領の分割に王宮の思惑が入り入りと絡んだためだろう。

 分割することで今までよりも戦力が劣るようなことにならなければ良いんだけど、分割の目的は派遣軍の縮小というもう1つの目的があるからなぁ。

 訪問の挨拶を受けた翌日。俺とレイニーさんで」迎賓館の会議室へと向かう。

 この迎賓館も立て直したいところだな。ログハウスも風情はあるんだが、やはり石造りにしたいところだ。


 軽く挨拶をしたところで、会議室の大きなテーブルに着く。テーブルを挟んで座ったのは、グラムさんと顔だけは見たことのある立派な服を着た貴族が2人。その後ろに5人程が腰を下ろしている。副官と従者ということかな。


「レオン殿の思惑通りの活躍をしたようだ。愚息の指揮でも魔族の大軍をほとんで殲滅したのだから天才的な軍師であると国王陛下が天を仰いだらしい。魔族を撃退したことからサドリナス領の分割がいよいよ形をとることになった。魔族の脅威が本国よりも小さいということで、飛び地を欲しがる輩も出てきたので色々と手間取ってしまったが、一応国王陛下の裁可を受けることが出来た。その話が今回やって来た目的の1つとなる。

 これが、サドリナス領の分割になる。王子殿下も所領を得ることで第一王子殿下が国王になった時点でこの領地を持つ貴族になる。場所は……」


 やはりサドリナス領の一番東ということだな。これだと辺境伯ということになるんじゃないだろうか? 領地そのものはオリガン家の所領の数倍はありそうだ。だけど街道の北の領地も半分ほどあるから、領内の町や村は5つほどになる。だけどその領内には貿易港があるから、かなりの収益を得る事が出来るのは間違いない。


「王子殿下の所領の北にある領地は?」

「街道から北に半日の距離に14個の小さな領地が東西に連なる。領地を持てなかった武門貴族達が入ることになる。東西の距離は短いが南北の距離は歩いて3日ほどになるから、これからの開発次第ということになる。砦は領地内に入り事で、砦の防衛は各々の領主の責任となるが、顔ぶれを見る限り任せても問題は無いだろう。街道を含めた南の土地は文官貴族達が所有することになるが、税の一部はサドリナス領内の部門貴族の砦維持に使われる……」


 色々と考えているんだな。

 さて一番目立つこの部分について聞いてみよう。


「俺達の領土が大きくなりすぎてませんか?」

「これぐらいの規模であるなら、満足してくれるだろうと本国から口添えがあったぞ。土地は広いがそれほど豊かとは言えんし、何といってもサドリナス領内に侵入する魔族を相手に戦ってくれているのだ。ワシとしては街道付近にまで領地を伸ばしてあげたかったが、さすがにそこまでは出来なかった」


 とんでもない広さだ……。

 西の尾根の1つ先まで領地だし、南は俺達の渡河地点からさらに南に広がっている。

 これはいくら何でもあんまりだと思うな……。

 隣のレイニーさんも地図を見てから、目が見開いたままだからなぁ。


「これは、予想を遥かに超えてます。さすがにこの領地を俺達で維持することは困難です。出来ればこの範囲を……」


 俺達の渡河地点から西に指で千を引いた。

 何とかこの範囲で皆に納得して貰ったからなぁ。


「さらに西についてですが、現在の尾根を越えるというのも難しいところです。現在の尾根は死守するつもりですが、1つ先の尾根は現状では緩衝地帯ということになるでしょう」

「軍を置くことは出来ぬが、魔族を見掛ければ攻撃するということかな。それで十分だと思うぞ。だが、南を放棄するとなると……」

「マイヤー殿の所領が3割程広がりますな。マイヤー殿であるなら国王陛下も頷かれると思いますが?」

「本家よりは少ないか……。王宮内にはオリガン家からの持参金替わりと知らせれば納得してくれるかもしれんな」


「この南の領地は!」

「レオン殿の姉家の輿入れ先になる。次男ではあるが先の戦で功績を上げているし、家柄も問題ない。本家はエクドラル本国に領地を持っているぞ。この領地を得ることで、分家貴族ではなく永代貴族となるのだ」


 長男では無かったのか。だけど母上達も喜ぶんじゃないかな。隣の領地だからね。貴族連合に戻ったとしても、貿易港から近いから訪ねることも可能だろう。


「色々と考えて頂いて恐縮する限りです。そうなると、レイデル川の監視は王子殿下、マイヤー殿との協議で進めてもよろしいですね?」

「たぶん、両者ともにあいさつ代わりにやってくるだろうな。その時で十分だろう。それでレオン殿の姉上の婚儀だが、マイヤー殿が領地に着任してからということで良いかな? 来年の秋、秋分を目安としたい。場所は旧王都の宮殿を予定している。招待状はオリガン殿それにレオン殿の兄上の3人としたいのだが」


「状況次第でしょうね。場合によっては父上の名代として兄上と母上になるかもしれません」

「戦の最中だからな。武門貴族としては下がることは出来まい。それで十分だ」


 いよいよ嫁いで行くことになるのか……。

 あれから2度程会ったけど、良い武人に思える。

 兄上も、彼なら笑みを浮かべて姉上を送り出してくれるに違いない。


 どうにか、所領を確定したところでワインを飲んでいると、ティーナさんが大砲を1門頂いたとグラムさんに報告している。手紙で知らせなかったのかな?


「大砲だと? 確か攻城槌を運んでいた兵士共々1発で破壊したと聞いているが……」

「その大砲です。原理は銃と同じであることは確か。だが、大砲は防衛だけでなく攻撃にも使えると教えて頂きました」

「何と! また新たな兵器ですか」


「模造した爆弾の威力は、知っての通りだ。あのフイフイ砲と合わせて使えば確かに周辺諸国を従わせることも出来るであろうが、それをやれば我がエクドラルは侵略国家との汚名を残すであろうな。かつてのサドリナス王国のように、民衆をも巻き込むような内乱を起こすようなら義は我等にあるだろうが……」

「魔族相手なら何ら問題はありますまい。民は安心して我が軍の後方で畑を耕すことが出来ます」


 そんな言葉にグラムさんが頷いている。

 とりあえず問題は無さそうだ。もっとも大砲をどうやって軍に組み込むかの問題が大きいと思うけどね。


「大軍が相手ですから、寡兵の俺達にはそんな工夫で乗り切るしかありません。たぶん爆裂矢の模造は既に行っていると思いますが、さすがに石火矢の情報提供は出来ませんよ」

「仕方あるまい。一応石火矢についても模造はしているのだ。とは言っても、まったく使い物にならん。それからすれば大砲の提供はありがたい話だ」


 完成品を提供したら、分解して構造を確認するんだろうな。

 やはりこのままで行くとするか。

 もう1つガラハウさんに頼んでいる兵器なら、完成品を幾つか渡すことも可能だろう。さすがに火薬の組比や純度の分析は出来ないだろうからね。

 


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