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オリガン家の落ちこぼれ  作者: paiちゃん
157/384

E-156 色付きガラスがあるらしい


 無理難題を持ち込んできたかと思ったけど、どうやら穏便な話で少し安心した。

 だけど、爆弾の数を増やして欲しいとの願いはこれ以上は……、ということで納得してもらう。

 その後の話では、やはりエクドラル王国でも爆弾の開発を行ってはいるようだが、俺達の様に殺傷範囲を広くすることができないらしい。

 火薬そのものの性能に差があるからだろう。それに、ただ火薬を丸めただけではそれほどの威力にならないからなあ。

 とはいえ、広範囲に火の粉を散らすことができるまでにはなったらしいから、焼夷弾的な使い方はできるということかな?


「フイフイ砲に爆弾の組み合わせなら、エクドラル王国に攻め入る者をことごとく排除できるに違いない。もっとも、あの大きさだ。こちらから攻め入るのは難しいな」

「俺達が防衛目的で作ったものですからねぇ。敵を攻略するとなればまた違った形になるでしょう」

「だが、我等にフイフイ砲を解体してまで提供してくれたことを考えると、フイフイ砲に勝るとも劣らない兵器を作ったということになるのではないのか?」

「一応、作ってはあります。簡単に設置できますから、常に城壁に設けずとも問題はありません。ですが……、さすがにそれを提供するとなると、エクドラル王国の国王が覇王になりかねません」


 俺の顔を見て苦笑いを浮かべている。

 持っていると使いたくなるに違いない。それが魔族相手に使われるなら問題は無いのだが……。


「なるほど……。オリガン家が栄えるのは、野心を持たぬからなのだろう。そんなオリガン家を潰そうなどと考える輩がいるとは……。隣国ながら将来が不安になるな」

「まさか、ブリガンディと争うおつもりですか?」


 思わず身を乗り出して問いかけてしまった。

 俺の動きが面白かったのか苦笑いから、笑い顔に変っているし、笑い声までだんだんと大きくなっているんだよなぁ。



「ハハハ……。そうとるか! 苦々しくは思っているが、まだ争うことはないだろう。我等も新たな領地の当地で手一杯。それに本国よりも魔族の動きが活発だ。こんな状態で戦を始めるような人物はエクドラルにはおらんよ」


 直ぐにではないということかな?

 いずれは……、と狙っているのだろうか? だが、それはブリガンディにも言えることだ。サドリナス王国が滅んでエクドラル王国がサドリナス領を手に入れたけど、進駐してきた軍は2個大隊程度だからなぁ。魔族との戦で戦力が低下するのを狙っているようにも思えるんだよね。


「さすがに人間同士の戦には加担できませんよ」

「その時には、文を1つ書いてもらえれば十分だ。我等より依頼はするが、文面はレオン殿に任せる。そしてその文章を我等は見ずに先方に送るつもりだ」

「俺の意見ぐらいで動くとは思えませんが?」

「だが、大勢の兵士がそれで死なずに済む可能性がある以上、王子殿下は依頼をするつもりでいるようだ」


 戦は最後の手段。戦をするときには戦力の低下が起きないように……。中々の軍略家だな。サドリナス領の統治を任せられるわけだ。


「さて、そろそろエディン殿達の出発の準備ができたに違いない。砦には出掛けたのだし、エクドラル国王陛下よりの名誉市民の称号まで授与された身だ。サドリナス領の宮殿を訪ねて欲しい。王子殿下が心待ちにしているのでな」

「少し考えてみます。訪問するにしてもそれなりの用意が必要ですから」


 うんうんと頷くと、席を立った。

 慌てて俺も立とうとしたのだが、俺に向かって手を下げてくれた。

 このままで良いということだろうが、それでは礼を欠くことにもなりそうだ。

 指揮所の玄関口で、オルバスさんが馬車の列の中に入っていくのを見送ることにした。

 レイニーさん達は東の楼門付近でナナちゃんと一緒に見送るらしい。


 去っていく馬車の列を見ながら、宮殿訪問について考えてみる。

 まだ早いようにも思えるが、王子殿下の治世を見るのは俺達にとっても利があることは確かだ。

 今回やって来た新たな住人は、全てブリガンディからの避難者だけだからなあ。サドリナス領内の獣人族は昔と同じように暮らし始めているのかもしれない。

 それは宮殿のある旧サドリナス王都に行けばすぐに分かることだ。どれほどの獣人族が旧王都で生活しているか……。それは早めに見ておく必要があるように思える。


 光通信機の概略をまとめていると、レイニーさんとナナちゃんが帰って来た。エルドさんも一緒に入ってきたからオルバスさん達の来訪目的を詳しく知りたかったのだろう。

 ナナちゃんは俺達にお茶を入れると、すぐに指揮所を出て行ったんだけど、果たして向かった先はどこなんだろう?

 姉上の学校かな? それともヴァイスさん達と一緒に、弓の練習をするのだろうか。


「エクドラル王国の重鎮がわざわざやって来たとは驚きましたね。やはり陶器の専売はそれほど利が大きいのでしょうか?」

「俺達からの買値の2倍で卸すと言ってましたよ。その後大商人達がさらに数倍の値を付けて売るんでしょうね。エクドラル王国としては笑いが止まらないと思いますが、俺達はそれで安全が保障されるなら十分でしょう。それにかなりの金貨を俺達も手に入れることができます。砂金が先細りですから、これでしばらくは国庫が潤うと思います」


「マクラン殿達の開墾も順調ですからね。エディン殿と取引量はそれほど変化してませんが、マーベル共和国の人口増加を思えば、それだけ自給が出来ていると言えるでしょう。エクドラ殿も食料倉庫を見てため息をつくことが無くなりましたからね」


 エクドラさんも苦労してたんだな。

 俺達にはいつも笑顔を見せてくれてたんだけど、全住民に対する食事の提供は案外重い仕事だったのかもしれない。


「羊が10頭増えましたよ。マクランさんが頼んでいたようです。開墾後に直ぐに種をまかずに、しばらく放牧すると言っていました」

「開墾したばかりでは土が痩せているからでしょう。その辺りの事はマクランさんに任せておけば安心できます。何と言っても開拓を一生に仕事にしている御人ですからね」


 全くマクランさんには頭が下がる。元開拓農民を率いて周辺の開拓をして貰ったのが始めなんだけど、西に広がる畑はマクランさんの賜物と言って良いだろう。銅像を作って敬意を表したいくらいだ。


「ところで、それだけでしたか?」

「その他では、腕木通信台を整備して砦間と宮殿を繋ぎたいと言っていました。将来は本国の宮殿まで通信網を伸ばしたいようでしたから、それは少し待って欲しいと提言しました。次の通信手段なら平文で通信が送れますからね。

 爆弾の追加については断わりました。やはりエクドラル王国も爆弾を作ろうとしているようですが、上手く行ってはいないようです。爆発力に大きな差があるとのことですが、これはあえて教える必要は無いと考えてます。

 最後に、一度サドリナス領の宮殿を訪ねて欲しいと言われましたが、さてどうしたものかと……」


「旧王都に行って帰って来れますか?」

「そこは信頼関係になりそうですけど、多分俺とナナちゃんだけならだいじょうぶだと思います。万が一の時にはナナちゃんを抱えてここまで走ってきますよ。でも行ってみる価値はあると思っています……」


 旧王都にどれほどの獣人族が戻っているのかを確認したいと言ったら、皆が頷いているんだよなあ。やはり気にしているのだろう。


「少なくともサドリナス王国と異なりエクドラル王国は獣人族と人間族の垣根はないようです。オルバスさんはトラ族ですけど、王子殿下の後見人ですからね。砦の軍人も人間族と獣人族がいましたよ。さすがに兵種によって分化しているようですが、それは種族の特徴を考えれば頷ける範囲です」


 皆が集まったところで、再度今回の話をしてみるか。

 やはり旧王都に行くとなると皆の賛同が欲しいところだ。


 その夜の会議で、来春に王都を訪問する許可を得ることができた。

 エディンさん達と一緒に王都に向かえば、少しは安心できそうだな。


 発光信号機の方はレンズと光球の集光を上手く考えないといけない。

 単に箱に光球を閉じ込めて、一方に仕切りを開閉するだけでは遠くまで光の点滅を伝えることができないだろう。

 俺のもう一つの記憶を探ると、鍋底のような曲面の鏡を使うことで、光を一方向に放つことができるようだ。曲面鏡とレンズの集光を組み合わせれば良いのだろうが、これも試行錯誤になるのかなぁ……。


 簡単な概略図を描いて、ガラハウさんに相談すると、鏡をどのようにして作るかが問題になった。

 ガラスが一番に思えるが、ガラハウさんはガラスの加工は出来ないらしい。

 さらに曲面の鏡を作るのは、ガラス職人でも難しいと言われてしまった。


「まあ、レンズは何とか出来るだろう。面倒だが、銀で作ってみるか? 銀は放置すると曇ってしまうんじゃが、たまに皮で磨けば元通りになるぞ」

「それでは、お願いできますか? 球体を半分にしたような形になるんですが」


 箱を含めて作ってくれるらしい。レンズは望遠鏡を作る時に余った物の中から大きな奴を選んでおこう。

 発光信号機の目途が立ったところで、今度は、点滅のパターンを文字と数字の数だけ作ることになる。

40文字近くなりそうだが、これは表にしておこう。

姉上達が子供達に文字を教えているから、この表の点滅のパターンを1つの文字として覚えさせることはそれほど難しくはないんじゃないかな。

               ・

               ・

               ・

秋分にマーベル共和国を訪れたエディンさんに、王子殿下より依頼された陶器のセットを託す。

笑みを浮かべて受け取ってくれたから、話は聞いているのだろう。

ナナちゃんの描いた花の小皿がかなりの人気らしい。次はもっとたくさん作って欲しいとお願いされてしまった。


「ガラスの皿もあるにはあるのですが……。あのような品にはなりません。飾るにはやはり絵があるのと無いのではかなり異なった印象を受けますな」

「ガラスの色は色々とあるんですか?」

「はい。青に赤、白や黒、緑と黄色もあります。ですがそれで絵を描くというわけにはまいりませんからなあ」


 その話を聞いている俺の脳裏には、不思議なガラス細工が浮かんできた。

 色ガラスを組み合わせて絵を描いているのか……。そのガラスを接着する方法は……。

 俺が考え込んでしまったのを見て、エディンさんの話が途切れてしまった。

 ふと、自分の姿に気が付いて、改めてエディンさんに顔を向けると、笑みを浮かべてパイプを楽しんでいた。


「何やら面白そうなことを考えられましたかな?」

「面白いかどうかは、やってみないと分かりません。オビールさんに頼んで、色の付いたガラスを沢山送ってくれませんか? それとガラス職人の道具を一揃いに、鉛のインゴットを1つお願いします」


 値段を聞くと、「出来た製品を見せてくれれば、タダで良い」と言ってくれた。

 タダより高い物は無いと兄上が言っていたからなぁ。ここは無理やり大銀貨1枚を受け取って貰うことにした。


「ガラス板を沢山買い込んでも、これほどの値にはなりませんよ。ですが、早く届けて貰うことにしましょう」

「よろしくお願いします」


 上手く出来るかなぁ……。場合によってはナナちゃんに手伝ってもらおう。俺よりも器用だし、何といっても審美眼があるみたいだからね。


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