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オリガン家の落ちこぼれ  作者: paiちゃん
123/384

E-122 ギルドの支店が出来そうだ


 さすがに使者を派遣するのは、エクドラル王国としても考えたんだろうな。ましてや旧サドリナス王国の領地を治める代官であれば、失態を上塗りすることを避けたいということだろう。

 先の戦についての謝罪が最初に書かれている。そして無用な戦に対する補償まですると言うのだから驚きだ。それなら最初から交渉するべきではなかったのかと言いたくなる。

 最後に今後の対応についての話し合う場を作りたいとあるから、向こうから来てくれるということになるんだろう。

 もう1度最初から読み直して、変な文章が無いことを確認する。

 レイニーさんに文書を手渡して小さく頷くと、顔をエディンさん達に戻してレイニーさんが読み終えるのを待つことにした。


「戦のあとの交渉ですか……」

「本来なら、この地の分割をブリガンディ王国としたかったんでしょうね。でも、少しは向こうも折れてくれるでしょう。さて、どうします?」

「無用な争いを避けるべきかと思います」

「なら、エクドラル王国にいつでも会う用意があるということでよろしいですか?」


 改めてレイニーさんに顔を向けると、小さく頷いてくれた。

 どんな交渉になるかはわからないけど、最初から交渉を否定するようでも問題だからなぁ。

 エディンさんに、そのまま伝えて欲しいと頼むことにした。


「先の戦ではブリガンディ、エクドラル王国軍以外に旧サドリナス王国軍もいたようです。本来なら王国ごとに使者を弔うべきだったのでしょうが、生憎と数が多すぎました。遺灰を引き渡すことは今回はできません。南西に塚を築いて弔いました。その旨、お伝えください」

「戦死者は野ざらしと昔から言われています。塚に葬られたと知れば遺族も救われるでしょう。家族が塚に参ることへの制限はありますかな?」


「さすがに大勢でやって来られては宿泊する場所がありません。エディンさんも知る通りこの国の宿は1つですからね。どうしてもという人物がいるのであればエディンさん達の車列に加わることでなんとかなるとは思うんですが……」


 近くの村までは5日程掛かるらしいからなぁ。数人での墓参りは命懸けだ。エディンさん達と一緒なら、護衛のレンジャーだっているからかなり安全に旅ができるだろう。


「確かにあの宿は小さいですからなぁ。エクドラル王国との交流が出来るなら、もう1つ作った方が良いでしょう。それに、オビール殿達にも利があるように思いますよ」


 ん? どういうことだろう。オビールさんに顔を向けると笑みを浮かべている。

 直ぐに話を始めないところを見ると、後で話をしたいということかな?


「それでは、これで……」

 

 俺達に頭を下げてエディンさんが指揮所を出て行った。次はエクドラさんのところで交易の詳しい話をするのだろう。


 3人になったところで暖炉近くのベンチに場所を移し、ワインを飲みながらオビールさんの話を聞くことにした。

 パイプ片手にオビールさんが話してくれたのは……。


「ギルドですか!」

「まあ、ギルドと言っても支店のようなものだ。レンジャー登録は出来ないし、住民が依頼をすることは出来ない。南にある町のギルドの職員を2人ほど常駐させてレンジャー達の活動拠点としたいということになっているんだが」


 詳しく話を聞くと、街道から南の森や荒れ地で大勢のレンジャー達が活動したことで獲物が減ってしまったらしい。

 それは理解できるが、さすがにここは離れすぎているんじゃないか?


「エディン殿の護衛をしながら狩りをするんだが、良い獲物が取れるぞ。レンジャーの活躍の場としては十分だ。確かに町までの距離はあるが、魔道具を使えば獲物が傷むことはない。荷車3台で定期便を作れるだろう」

「年に4回ではなく、各月ごとに交易の荷馬車が往来するということですか……」


「先ほどの宿の話にも繋がることだ。新たに1つは必要だろう。レンジャーは家を持たないからな。数人で狩りをするが、そんな連中を3つほど送りたいところだ。あまり送るとトレム達に嫌われるだろう」


 互いに顔を見合わせての苦笑い。

 俺達の内情を調べようとする連中が紛れないようにとの配慮もあるのだろう。

 立ち入り制限を設けて、塀の北側に出入りしないなら問題は無さそうだ。


「レンジャーが来るなら肉屋と鍛冶屋もできそうですね」

「不便な場所だとは仲間にも話しているが、獲物の大きさと数に目を輝かせているような連中ばかりだからなぁ。とはいえ、町の店には限りがあることも確かだ。長年勤めても自分の店を持てないと嘆くものも多い。店を開きたいなら、職人を斡旋することは可能だぞ」


 いよいよ本格的な町になりそうだ。

 問題は誰に相談すれば良いかということなんだが……。


「話は聞かせて頂きました。マーベル国にとっても良いことだとは思いますが、さすがに私達だけで判断するということは出来ません。しばらく待っていただけないでしょうか?」

「だろうな。エディン殿に使者との話し合いについて了解したのなら、たぶん夏至前にはこの国へ訪れる月日を知らせに俺が来ることになるだろう。それまでにどうするのかを決めておいてくれないか」


 それなら俺達が話し合う時間が十分にあるはずだ。

 レイニーさんが「分かりました」と言ってくれたから、オビールさんもほっとした表情でワインを飲み始めた。


「まさか4個大隊近くの軍勢を追い返したとはなぁ……。町では、これで北の連中も終わりだろうと噂があったぐらいだ。ところが軍隊の終結場所である町に帰って来た軍は出掛けた時に半分にも満たない有様で、将軍達も宿から出なかったと聞いている。かなりひどい負け戦だったわけだ」

「こっちもかなりやられましたよ。エクドラル王国軍はブリガンディ王国軍よりも手ごわいですね。楼門を燃やされてしまいました。今回の後ろにはブリガンディがかなり暗躍していたようです。南からの攻撃時に東の方からも攻撃を受けました。ブリガンディとしては南は陽動、本命は東だったのではないかと推測します」


「戦の前にブリガンディから使者が来たと聞いたが?」

「金、銅に加えて、鉄の生成ができることを教えたんですが……」


 俺の言葉にオビールさんが大笑いを始めた。

 どうやら俺が原因だと分かったらしい。

 困った奴だ、という目で俺の顔を見ながらバッグからワインとタバコの包みを取り出す。


「レオン殿がいる限りこの国はだいじょうぶだな。無理はしないでくれよ。この辺りは良い猟場なんだからな」

「トレムさんとヴァイスさんには、なるべく南東での狩りをしないように言っておきますよ。魔族の監視をしながら南西の狩場で我慢してもらいます」


「よろしく頼む」と言いながら、オビールさんが席を立った。

 仲間達と酒場で飲むのかな?


 さて、レイニーさんに顔を向けるとレイニーさんも俺に顔を向けている。

 思うところは同じということかな。


「基本はギルドの支店ということなんでしょうけど、レンジャーが活躍するとなれば、それなりの店が必要ということになるんでしょうね。それは私達にとって喜ばしくはありますが、私達の事情も加味しないといけません……」


 最低条件があるってことだな。

 それは獣人族であることだ。それははっきりと伝えるべきだろう。

 とはいえ、店によっては獣人族でない可能性も出てくる。それがどんな店になるのかも知っておく必要があるな。


「絶対に洋服店は必要にゃ!」

「独立した酒場は必要じゃろうなぁ……」


 こんな話だと、自説を曲げないんだからなぁ。

 夕食後に集まって来た連中は、レイニーさんから話を聞いた途端に騒ぎ出した。

 頂いたワインを振る舞ったせいもあるんだろうけど、収拾がつかなくなってしまった。


「皆さん、静かにしてください。ギルドの支店に肉屋と鍛冶屋は確定です。酒場は今ある宿屋と同じように1階を酒場と食堂にして、部屋数は少し多くしたいところです。鍛冶屋はガラハウさんの工房と競合しそうですが、農具とレンジャーの使う武器の修理とするなら問題は無いでしょう。その他の店については、当座は3つとします。その3つは、投票で決めましょう」


 更に騒ぎが大きくなりそうだ。

 とはいえあまり変わり映えしない暮らしだからね。こんな大きなイベントは久ぶりかもしれないな。


「場所は、中央広場の周囲になるのかにゃ?」

「あそこなら空き地がたくさんな。とりあえずログハウスで良いんだろうが、店となるとちょっと考えてしまいますね」

「鍛冶屋ならワシ等が縄張りをしてやるぞ。肉屋で働いていた住民も1人ぐらいはいるはずじゃ」


 穴掘りから解放されると思って嬉しそうだな。

 問題は、その木材をどこから調達してくるかだ。近くの林や森はだいぶ間伐したからなあ。少し遠くまで行って材木を調達することになるんじゃないか。


「ところで、レンジャーであればマーベル共和国の住民とはならないでしょうから、人間族の出入りもあるでしょう。でも、店ともなれば住民そのものです。ここで暮らすのは獣人族だけということにはならないのでしょうか?」


 ちょっと心配そうな声で話をしてくれたのは、マクランさんだった。

 俺もそれが一番気になっているところなんだけどね。


「お店を持って定住するとなれば獣人族ということで良いと思います。レンジャーについてはマーベル共和国での仕事を期間限定ということにすれば問題は無いかと。そうですね……、例えば春分から秋分までの半年という感じですね」

「冬は南に帰すということじゃな? 秋分では早すぎるように思えるのう。冬至の一月前辺りが適当に思えるが」


 その辺りは、もう少し皆で話し合う必要がありそうだ。

 マーベル共和国のレンジャーであるトレムさんの意見も聞いた方が良いかもしれないな。


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― 新着の感想 ―
[一言] エクドラルとエルドリアって同一?
[良い点] あまり見ないタワーディフェンス型のお話 [気になる点] 主人公に主体性が無いせいで何がやりたいのか判らない点 [一言] 獣人を認める国が周りに無いのにこの国でも人間を排斥してるせいで、結局…
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