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第九十八話 その頃 別動隊は どうなったか

「ふふふ、だいぶうまくいっているようだな」


 ここは暗い部屋だ。だが壁一面に巨大な絵が描かれている。それは絵ではなく、映像であった。

 そこにはドゴラン王国の国境で、ドゴランの配下たちがサゴンク王国の第10王子、バオカジの軍隊を打ち破り、バオカジ自身を処刑した光景が映し出されている。


 この部屋の主はたった一人だ。禿げ頭の冴えない中年親父が眼鏡をかけて椅子に座り、丸いテーブルの上にワインを載せて、酒を飲んでいた。

 その顔は邪悪に歪んでいた。だがすべてを見抜く狡猾な悪魔のように見える。

 彼はマジッサ王国の宰相ヒアルドンだ。そして1970年から活躍した魔女ドボチョンの記憶を受け継いでいる。


「ドボチョン・ロックブマータと正反対の展開なのだ。相当なストレスが溜まっているに違いない」


 ヒアルドンは再び杯を口にする。この光景は使い魔が見ている物を映し出したものだ。

 魔女が生み出した使役魔法である。ヒアルドンは自分が魔法使いであることを隠してきた。この事は一部の部下しか知らない。家族でさえヒアルドンは冴えない親父と思われていた。

 マジッサ王国国王キガチィ40世はヒアルドンを無能呼ばわりしてきた。その一方で彼を処刑したり役職を解くことはしない。

 なぜならキガチィはヒアルドンの傀儡だからだ。ヒアルドンが口答えをしても彼を排除する考えは微塵も浮かばないのである。ヒアルドンにとってキガチィを含めた王家は自分の思い通りに動く人形たちであった。


「さて、もう一方はどうかな? まあすでに解決していると思うけどな」


 ヒアルドンは別の映像を移した。


 ☆


「なぜだぁ!! なんで俺たちが負けるんだぁ!!」


 見渡す限りの海原に、赤い鋼鉄船が一隻進んでいる。その周囲を木造船が十隻ほど取り囲んでいた。

 鋼鉄船はキャコタ王国が所有する船だ。外国からの輸入品などが積まれている。さらに民間人は千人ほど乗っていた。船を守るのはキャコタ王国海軍の軍人たちだ。海上での戦闘に特化している。

 

 木造船は海賊の船だ。キャコタ王国とカモネチ王国の間には、北にカナネイ王国と、南にはリャダック王国と言う発展途上国がある。どちらもキャコタ王国の援助を受けているが、その恩恵は平民にはまだ行き届いていなかった。そのため彼等は海賊行為で食べるしかない。

 だが一番獲物を多く持つキャコタの船は追いつくことが出来ないし、装備も魔導銃と言って一度に数十発の弾丸を発射する。そのため兵士一人でも十人ほどは一瞬で殺すことが出来た。


 ところがある一部の兵士が裏切った。彼等は誰からか小銭をもらっており、武器などの装備を海に捨て、レーダーを無力化して、海賊たちを招いたのである。


 その船には花級フラワークラスや花びらペドルクラスの冒険者たちも乗っている。裏切り者たちは彼等の装備すら海に捨てて無力化したのだ。


 海賊の頭目はヒタキテといい、美丈夫であった。カナネイ王国を中心に荒らし回る二十代前半の男だ。短き刈揃えた銀髪に日に焼けた肌。黒いバンダナに右目に眼帯をかけ、上半身裸で、下半身は白いズボンをはいている。手にはカトラスを握っていた。


 ヒタキテはヒアルドンに雇われた海賊だ。裏切り者たちもヒアルドンに操られたマジッサ王国の人間が、そそのかしたのである。


 彼等は武器と装備さえなくなってしまえば、冒険者など一方的に殺せると信じていた。

 シフンド三兄弟は念道布で作られたふんどしがなければ、ただのむさ苦しい中年王味だと思い込んでいたのだ。


「お前らは我々を舐めすぎなんだよ」


 むさ苦しい海の男であるアフカン・シフンドが答えた。彼は革の鎧を身に着けている。手には棍棒が握られており、血がべっとりとついていた。

 アフカンは念道布のふんどしを盗まれたが、問題ではない。彼にとってふんどしは戦闘を早めに終わらせる手段の一つでしかないのだ。

 彼は着替え呪文コプスレで装備に着替えると、海賊たちを一掃していった。


 海賊たちは6000人ほどいるが、彼等が一気に行動できるわけではない。

 アフカンひとりで百人ほどの相手をすることができるのだ。それは他の冒険者たちも同じである。


「まったくでござるな。冒険者は剣を選ばぬでござるよ」


 白いふんどし一丁の男が答える。志熊荷しぐまに王国の侍、炉守都京ろしゅ つきょうだ。

 彼も自慢の刀を奪われたが、海賊の剣を奪い、すでに百人ほど切り殺している。


「相手の弱点を突くのは戦術としては正解よ。でも詰めが甘いわね」


 アフロのオカマであるヘダオス・キャコタが相手を見下していた。彼は風魔法による広範囲の捜索を封じられたが、すぐに気持ちを切り替えて海賊たちを相手にしていた。収納呪文で棍棒を取り出し、海賊の頭を殴り飛ばしたのである。

 彼等は自分たちの長所を封じれば、すぐ無力化できると信じていたのだ。その結果海賊たちはほぼ全滅したのだ。


「ほっほ、まろの式神で検索しましたが、敵は彼等だけでおじゃりますね」


 烏帽子をかぶり、狩衣を着た男が言った。尻の部分は丸出しだ。都京と同じ国の冒険者で、陰陽師の桔尾円出けつお まるだしである。彼は式神と呼ばれる紙に命を吹き込み、周囲を捜索していた。


 ヒタキテは頭の中が真っ白になった。圧倒的な戦力差があるのに、自分を除いて全滅したのだ。

 もう残る手段は一つしかない。


「ごめんなさい!! 申しません!! 許してください!!」


 ヒタキテは土下座した。ヒアルドンが負けそうになった時にこうしろと指示したのだ。

 彼はそんなことありえないと鼻で笑っていたが、結局やる羽目になった。

 もう屈辱で胸がいっぱいだ。なんとかして油断を誘い、弱そうな女子供を人質にして、冒険者どもを皆殺しにしなければ気が済まない。

 

 早く俺を許せよ、俺様が頭を下げて謝っているんだ。お前らは俺様を笑って許さなければならないんだよ。


 だが突如爆発音が響いた。それはキャコタの軍人が魔導銃でヒタキテの頭を撃ち抜いたのである。

 脳漿をぶちまけて、ヒタキテはよろよろと後ろに下がると、そのまま鋼鉄船から落下していった。どぼんと水音を立てると、ばしゃばしゃと音がした。サメたちがヒタキテの血に引き寄せられたのだろう。彼の遺体はサメの餌になったのだ。


「まあ、仕方ないな。海賊はどうせ処刑の運命にある」


 アフカンが海を見ながらつぶやいた。ヒタキテに対しては油断せず、無力化するつもりでいた。

 だが軍人によって彼は殺されてしまった。悪人が死んでもちっとも面白くない。できるなら生きて償ってほしかった。

 あっさりと死んでしまったら、今まで殺した人々が満足しないと思ったからだ。


「あ奴は遺体をサメの餌にされたのでござる。その魂は引きちぎられ、地獄の底で苦しむでござるよ」

 

 都京がアフカンに言った。彼なりに慰めているのだろう。


「……今回の襲撃、もしかしたら相手の思うつぼかもしれないわね」


 ヘダオスが答えた。一体どういうことだろうか?


「いくら装備を無くしたからと言って、あたしたちがこいつらに後れを取るわけがないわ。彼等はわざとあたしたちの引き立て役にされたのよ」


 実際にヘダオスの懸念は当たっていた。船員に尋ねたが、キャコタ王国やカモネチ王国など、世界各国で自分たちの行為が雲に映し出されたという。もちろん冒険者たちに罪はない。

 しかしその光景をワイトたちが目撃したそうだ。その様子を見てキョワナはますます怒りに震えていたという。


「まったく厄介でおじゃるな。まろたちがカモネチ王国にたどり着くまで、どうなることやら」


 円出は不安そうであった。

 すでに捨てられた装備は回収されている。ズゥコ王国の冒険者、カムゲシャが海に捨てられる前に、人形を使って回収していたのだ。

 裏切り者の兵士たちは全員拘束されている。キャコタに戻れば軍法会議に掛けられ、死刑判決を下されるだろう。彼等は鋼鉄船の乗客と船員を危険にさらしたのだ。当然と言える。

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― 新着の感想 ―
[一言] 圧倒的な強さではありましたが、陽動ですか。
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