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第八十九話 木組での相談

「というわけで、私たちは休職します」


 朝の教室で、ワイトとパルホは木組ウッドクラスの生徒達に報告した。

 全員、突然の言葉に驚いている。他の生徒より筋肉で一回り大きい、キウノン・バデカスや、高慢そうなお嬢様ソヘタク・ズゥコ。

 そしてボンクラと馬鹿にされていたマルデ・ダ・メナコも同様であった。


「お二人が休職するということは、何か重要なことを任されたのでしょうか?」


 キウノンが訊ねた。入学前は人の話を聞かない、傲慢な脳筋であったが現在は真面目に勉強と訓練を行う模範生となった。


「その通りです。これは全校生徒に知らせることですが、私たちはマジッサ王国へ赴き、悪の根源を断つために旅立つのです」


「今回はパドルびら級と花級フラワークラスの冒険者が百人同行するでござる。それでも下手をすれば死んでもおかしくない旅でござるな」


 ワイトとパルホがこれから散歩でも行くかのような口調で言った。そもそも花びら級と花級は普通の冒険者とはわけが違う。実力はもとより人格も重視される。花びら級一人なら小国ひとつは滅ぼせる実力を持っている噂だ。

 人殺しはご法度だが、相手が殺意を持って襲ってきたら反撃してもいいことになっている。


「というかなんでキャコタ王国が動かないのでしょうか? それにマジッサ王国に隣接する国もなぜマジッサを攻めないのでしょうか?」


 こちらはソヘタクだ。金髪ロール髪の典型的なお姫様である。以前は頭の出来が悪かったが、今は真っ当な人間に生まれ変わっていた。


「そもそもキャコタ王国が動く理由がないでござる。マジッサ王国がキャコタに手を出したなら反撃するでござるが、何もしていないのに手を出すと諸外国がうるさいでござるからな」


 パルホが説明した。キャコタ王国は巨大な鋼鉄船を数十隻は所持し、さらに魔導銃という最新式の武器を数多く保有している。

 それ故に貿易相手からは警戒されていた。自分たちが鉱石などの資源を提供すれば自分たちが攻められるのではないかと疑念を抱いている。

 それ故にキャコタは貿易国に使い古しの鋼鉄船を売却していた。さらに初期の魔導銃の設計図と技術者も売り渡している。

 もっとも魔導銃は百年前に発明されたものだ。炎や氷、雷の魔力を宿した弾丸を撃てる。ただし一発しか撃てない。とはいえ使い方次第では百人ほどでも強力な軍隊を編成できる。

 炎の弾丸なら敵の兵糧を焼き払い、氷の弾丸は井戸水を凍らし、川の水を凍らせて敵の足を止める。

 さらに雷の弾丸なら水に撃てば川にいた者は感電死させることができた。

 弾丸はキャコタしか作れず、輸入に頼っている。


 キャコタ王国にとって貿易相手の顔色をうかがうのは当然のことだ。なぜならキャコタは島国である。ろくな資源がないので、資源のある国は金と技術をバランスよく売らなくてはならないのだ。

 今回のマジッサ王国では、キャコタが介入する理由がない。

 さらにマジッサ王国の周辺国は問題がある。北のピロッキ王国は協調という言葉はない。さらに現在は内乱に明け暮れ、領土を広げることしか頭にないのだ。


 東部のサゴンク王国も似たようなものだ。ドゴランの治める国に対抗心を抱いており、協力などするわけがない。

 最後に南部のカモネチ王国だが、これは問題外だ。そもそもカモネチの民は、古くはマジッサの民である。カモネチにとってマジッサの民は兄弟のようなもので、いざとなればマジッサに与する可能性があった。


「えーっと、冒険者なら国と関係ないので自由に動けるんだよね。でも国が助けてくれないから自己責任だよね」

 

 マルデが答えた。鼻水を垂らしたいかにも馬鹿っぽい少年はすっかり利口になった。家臣たちは泣いてワイトたちに感謝の言葉を述べ、勲章を授与するようメナコ王国に進言したくらいだという。


「その通りです。私たちがマジッサに潜入して捕まっても誰も助けてくれません。自分の命は自分で守らなくてはならないのです。それが花びら級や花級の冒険者たちの役割なのです」


「なので狂が拙者たちの最後の授業になるかもしれないでござる。とはいえ死ぬ覚悟など決めぬでござるよ、自分の命は賭けるでござるがな」


 ワイトとパルホが言った。二人は12歳だが百人近い冒険者たちと触れ合い、厳しい訓練と冒険をしてきた。

 二人の精神はそこらの大人よりもはるかに成長している。とはいえワイトがマザコン気味なのは内緒だが。


「ところでキョワナはどうなったのでしょうか?」


 キウノンが手を上げて質問した。


「……彼は逮捕されました。操られたとはいえ王立学園を危険にさらそうとしたのです。彼は退学となり、カモネチ王国へ帰国することとなりました」


「……なんか悪い予感がいたしますわ。キョワナさんをカモネチに帰して大丈夫なのでしょうか」


 ソヘタクが心配そうに尋ねる。キョワナの悪行はすでに知れ渡っていた。あまりの行為に可愛らしい黒いハムスターは、薄汚いドブネズミとして扱われていたのだ。


「キョワナ殿の力は常人より上でござる。押さえつけてもすぐに暴れだすでござるよ。カモネチの大使殿も頭を抱えているでござる」


 パルホは首を横に振った。そこにマルデが口を挟む。


「ならお二人で見張ればよいのでは? キョワナが何かをしでかしても、二人ならなんとかできるはずですが」


 それを聞いてワイトとパルホはポンと手を叩いた。キョワナは爆弾と同じだ。それもいつ爆発するかわからない危険な状態だ。なら爆弾処理が得意な人間を配置すればいい。

 それはワイトとパルホしかできないことであった。


「マルデさん、そのアイディアいただきます」


 ワイトはそう言うと、マルデはにっこり微笑んだ。

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[一言] いよいよ旅立ちでしょうか。
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