第八十話 キョワナがなんで!?
「ふふふ、うふふふふ……。僕たちの邪魔をするなんて、とんだお馬鹿さんだね。ちびとでかぶつの醜い女ども……。この美しい僕たちがお前たちを毛虫のように踏みつぶしてあげるからね」
ドイラプは手をぶらぶらさせながらつぶやいていた。まるでゾンビである。
それを見たセヒキン三姉妹の三女、シジョルがにらみつけた。
「お姉さまたち。あいつらはキチガイだけど、実力は本物だよ。遊びは一切なしに速攻で決着をつけましょう!!」
「当然です。彼等は生きていること自体害悪ですからね。まあ生け捕りにして尋問をかける必要がありますが」
「そうですわね。わたくしたち三姉妹の力を見せつけてあげましょう」
長女のシジョフと次女のシジョムが身体をダンゴムシのように丸めた。
そしてシジョルは二人を水風船のようにバンバンと弾ませた。それを見たトスラは怒りの声を上げる。
「ああ、なんということでしょう。姉二人を妹がおもちゃにしています。あんな鬼畜な女は早く殺しましょう」
トスラは両手を上げると、大気中の水分が集まりだした。すると彼女より一回りも大きい水の塊りが生まれたのだ。
「あれは伝説の水妖シフオキの技ですね。8年前に見たことがある。今はドゴラン王国の国王にに屈服し、忠実なしもべになっているとか。ならば対処法はいくらでもあります!!」
シジョルは姉たちの髪の毛を引っ張り、分銅のように回した。
彼女たちに一切のダメージはない。彼女たちは無機質な武器と化したのだ。
シジョルは姉たちを振り回す。土埃が起こると、それらがシジョフたちに集結していた。
見る見るうちにシジョフ達は土の塊となった。トスラはシジョル達に濁流を投げつけた。濁流は下手をすれば人間を簡単に巻き込み、命を奪う。トスラは無抵抗の開拓民たちをこの力で殺しまくっていたのだ。
トスラはかすかに笑っている。彼女は偽善者であった。自分の気持ちばかりを押し付けて他人の気持ちを一切考えたことはなかった。他人に否定されると逆に癇癪を起し、相手につかみかかる質の悪い女であった。
「ほほほほほほ。龍の顎でございますわ」
トスラの生み出した濁流はシジョルを襲う。しかし彼女は土の塊と化した姉たちを叩きつけた。
すると濁流はシジョフたちに巻き取られ、天へ上っていく。そして空には泥の塊りが浮かんでいた。
「へ?」
トスラが惚けていると、シジョルは彼女に対して巨大な泥の塊りを叩きつけた。
「ぷちぃ!!」
ずしぃんと大地が揺れ、砂煙と泥のしぶきが舞い上がる。視界が晴れると、そこには泥まみれになったトスラが大の字で横たわっていた。その顔は醜く歪み、目は大きくひん剥いてて、鼻は豚のようになっており、唇は分厚かった。これがこの女の本性であった。
「ひやぁぁぁぁぁぁ、トスラさぁぁぁぁぁぁぁん!!」
ドイラプが絶叫を上げた。この男は仲間が傷つくとすぐに切れるのだ。そして切れたら辺り構わず攻撃を繰り広げるため、狂戦士と呼ばれていた。
「5歳のドゴランも家臣を傷つけられたら、暴れまくっていたそうです。ですが5歳児と23歳の成人は違います。なんてこらえ性がないのでしょうか」
シジョルが忌々しそうに独白した。彼女はキャコタ王立学園により、ドボチョン・ロックブマータとコブラツイスターズという小説とドゴランの関連性は報告されていた。ドイラプたちがそのコブラツイスターズに似ていることも知っている。
彼女たちはドゴラン王国でモデルとなった暗殺者を見ていた。彼等は醜く、異常な力を持っていた。だがドゴランは彼等を叩きのめし、家臣にした。どんな相手も受け入れる度量をドゴランは持っていた。
だがこいつらは違う。力の管理者を自称し、自分の命令を聞かないものを力づくで屈服させていた。その力を弱い人間にばかり向け、自分たちに花級の昇格させるよう命令してきたのだ。
「貴様らぁぁぁぁぁ!! 許さんぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
ドイラプは切れていた。もう抑えのきかない子供である。他の面々も同じであった。
自分たちの力を振るうことしか頭がないのである。
「えーい、死んじゃえ!! 雷神撃ち!!」
スラーが鬼のような形相で弓を放つ。矢には雷が宿っており、ひとたび矢を放てば雷雲が生まれるのだ。
次にシジョルはシジョフたちを空へ投げ飛ばした。ぴんと塔のように伸び切ると、二人の身体は木に変化した。
スラーの電撃はシジョフ達に被雷する。それがシジョルへ伝わると、彼女の口から電撃が飛び出した。
シジョル達は人間避雷針になったのだ。
「ばちっと!!」
飛び出た電撃はスラーに直撃した。彼女は黒焦げになり、髪の毛はパンチパーマと化した。
煙を口から吐き、ばったりと後ろに倒れた。
「ひぎゃぁぁぁぁぁぁぁスラァァァァァさぁぁぁぁぁぁぁん!!」
ドイラプは切れた。スゥロスとヴィーエンも切れていた。
「きしゃまぁぁぁぁぁ!! 美人のトスラとスラーを攻撃しやがってぇぇぇぇぇぇ!! この人でなしがぁぁぁぁぁぁ!!」
「許さぬ、許さぬぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!! 我らの仲間を傷つけるやつは全員死刑だ!! 俺たちがそう決めたんだぁぁぁぁぁ!!」
なんとも勝手な言い分であった。今まで他人を一方的に傷つけてきたくせに、自分たちが傷つくと被害者ぶっている。まこと自己中心的が過ぎる自己愛に溺れた怪物であった。
「なんて胸糞が悪い人たちなのでしょう。残る三人も始末しないとね」
シジョルがつぶやくと、後方から慌てふためく声が聴こえた。
「校門が破られた!!」
背後で兵士たちの叫び声が聴こえる。そしてシジョルの背中に衝撃が走った。
何者かがシジョルの背中を刺したのだ。一体誰なのかとシジョルは後ろを振り向く。
そこには黒いハムスターの少年、キョワナがいた。彼は短刀を手にしていたのだ。
「えへへへへ……。よくも偉大な冒険者である、トスラさんとスラーさんたちを傷つけたな……」
キョワナの眼は凶器を宿していたのだった。




