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第七話 二人の関係

「ふぅ、気持ちいいです」


「冷たい水で汗を流すのはスカっとするぜ」


 ワイトとパルホは水着になって水浴びしていた。ワイトの肌は真っ白で身体は細かった。お尻が結構大きくなっている。遠目で見れば女性に見えた。

 パルホは紺色の水着を着ているが、腕や足が岩のように太くなっていた。日焼けをしており岩が歩きだしたように見える。まるで男だ、それも水も滴るいい男である。


 二人は城の中にある浴室で稽古で流した汗を冷たい水で洗っている。中は兵士が百人いても充分な空間があった。何十人も入れる広い浴槽に壁には鏡が設置してあり、シャワーもついていた。シャワーはキャコタ王国から輸入したもので、摘まみをひねるだけで熱いお湯から冷たい水まで雨のように降らせることができる代物だ。風呂に入る時間がなくても、汗だけは数分で流せるのである。


「ほっほっほ。お二人ともがんばったでおじゃりますからね」


「うむ!! 特にパルホ殿は中々の太刀筋でござったぞ!!」


 陰陽師の桔尾円出けつお まるだしと侍の炉守都京ろしゅ つきょうだ。二人とも褌を身に付けている。素っ裸でもいいのだが、パルホと一緒なので褌を身に付けていたのだ。本来なら女性のパルホは使用人が使う風呂を使うべきだが、パルホが望んだためである。


「うん、パルホはすごいよね。狼の魔獣の口を剣で切り裂いたんだから」


「ふふん!! 炉守先生の教えのおかげだよ!! 遅速ネトッリ呪文を自分に掛けたら、確かに相手の動きも鈍く見えたからね!!」


 遅速呪文は基本的に敵へかけるものだ。相手の動きを鈍くして一気に畳みかける。だが都京の場合は自分自身に掛ける。そうすることで相手の出方をくじくことができるのだ。

 

 パルホは森の中で狼の魔獣たちと戦った。町を荒らす害獣退治のためだ。

 狼は相手の動きを予測して攻撃してくる。だがパルホは遅速呪文をかけることで動きを鈍くした。攻撃してきた最中に予測外の動きが入ると相手は戸惑う。狼の魔獣は普通の狼より知性が高い。それ故に動きが鈍くなるだけで身体が一瞬固まったのだ。

 

 そこをパルホが事前に剣を横に構え、狼の口に当てる。狼は上顎と下顎を切り裂かれて絶命した。

 仲間の狼たちは驚愕した。壮絶な死にざまに身体が硬直したのだ。その隙をワイトは逃さなかった。


束縛シッバテ呪文!!」


 ワイトは地面に手を当てて呪文を唱えた。すると地面から木の根が出てきた。木の根は狼たちの四本足を瞬時に縛ったのである。

 束縛呪文は木の根や蔓、網などに魔力を注ぐと、相手を拘束することができるのだ。

 こうしてワイトは狼の魔獣を束縛した後、連れて帰った。王国軍に預け猟犬として調教するためだ。ワイトが調教すれば立派な猟犬に成長できるだろう。仲間の悲惨な死を見た直後なら、恐怖で服従するはずである。


「ワイト殿も素晴らしかったでおじゃるよ。確かにまろは魔獣を無力化しろと指示したでおじゃるが、まさか拘束して猟犬に育てようとしたのは見事でおじゃる」


「はい! ただ殺すのは芸がないので束縛してみたんです!!」


 円出に褒められてワイトは嬉しそうだ。円出と都京も綿が水を吸収するが如く物覚えの良い教え子に満足している。


「……ん? ワイト殿、髪の付け根が白くなっているでおじゃるな?」


「そうですか?」


「ええ、よく見ないと気付かないでおじゃるが」


 ワイトが鏡の前に立つと、頭を見た。確かに周囲の黒い髪の毛に比べて、付け根が白くなっている。


「病気なのかな?」


「後で主治医に見てもらうといいでおじゃる。さて今日の稽古はここまででおじゃるよ」


 円出が言った。ワイトとパルホは頭を深く下げて礼を言ってから立ち去った。後に残るのは円出と都京だけだ。


「……実を言うとな。パルホ殿もどこか変なのでござるよ。同年代の女子に比べて筋肉がついてきたでござる」


「それを女子の前で言わなかっただけ、立派でおじゃるよ」


 都京の言葉に円出は答えた。ワイトとパルホは筋力トレーニングを行っている。ワイトは線が細いままだが、パルホは女性の凹凸より、筋肉が目立ち始めた。特に腹筋はバキバキに割れている。


「ワイト殿もここ最近男子ではありえない女子の色気が出てきたでおじゃるな。肌もあまり焼けておらぬし、身体つきも女子に近くなっているでおじゃるよ」


「ほう、ワイトの尻が欲しくなったでござるか?」


 都京は円出の尻を撫でた。頬が紅潮するが嫌がっていない。


「まさか。子供の尻など欲しくないでおじゃるよ。まろが求めるのはそなただけでおじゃる」


「兵士たちはまだ来ない。早いうちに拙者の邪気を抜き出し、お主に魔力を注がねばならんでござる」


 その内に浴場から肉を打つ音が響いた。数分後、二人ともすっきりした表情になっている。


「ふぅ、結構邪気が溜まっていたようでござるな。身体がすっきりしたでござる」


「まろも体内に魔力がみなぎってきたでおじゃる。やはりそなたでないと駄目でおじゃるな」


 二人は衆道しゅうどうの契りを交わしていた。故郷には互い妻子はいるが、長年共に戦ってきた仲間だからこそである。ちなみに仲間の王名鵬柳おうな ほうりゅう田土歪夫だつち わいふには内緒にしている。


「これはワイト殿達にはまだ教えられないでおじゃるな」


「まったくだ」


 そう言って二人はシャワーを浴びるのであった。だが世話をしている侍女たちにはばれており、いつも黄色い声を上げていた。なのでワイトとパルホは気づいていたが、あえて知らん顔をしていることに、二人は気づいていなかった。もちろん仲間の王名と歪夫も気づいているのは言うまでもない。

 日本は割と男同士ですることが多かったようです。古くは室町時代の足利義満と世阿弥、織田信長と森蘭丸がいます。

 僧侶も女の代わりに稚児を相手にすることがあったそうです。西洋文化が入ってきたとき、同性愛は悪と広がったために、男色は異常扱いされたと思いますね。

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― 新着の感想 ―
[一言] 侍女たちにはバレていたんですね。
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