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第七十八話 ドイラプ一味とは

「ワイト先生、ちょいとよいでしゅか?」


 キャコタ王立学園にある職員室、腰まで伸びた豊かな白髪をなびかせ、赤いぴっちりしたスーツを身に付けたワイト・サマドゾに対して、小太りの男が話しかけた。

 彼はネトブリといい、天然パーマが特徴的な愛嬌のある男だ。ワイトの同僚でもある。

 今は昼休みで、職員室でワイトはメイドのナイメヌが作ってくれた弁当を広げるつもりだったが、そこにネトブリが話しかけたのだ。

 ワイトは美少女に見えるが、中身は男である。だがそんじょそこらの女たちと違い、神に近い女子力と美貌を持つ両性具有の女神であった。


「はい、ネトブリ先生。どのような用件でしょうか?」


「昼食を妨げてしまい申し訳ないでしゅ。実は火急の報せが来たのでしゅよ」


 舌足らずなしゃべり方だが、ネトブリの眼は真剣だ。ワイトもきちんと耳を傾ける。双子の妹であるパルホは席を外していた。生徒達と一緒に中庭で弁当を広げている。


「冒険者ギルドから指名手配されている冒険者五人組が、貴殿を狙っているとの情報を得たのでしゅ。そいつらは長らくトアル王国というピロッキ王国の西部にある国に潜伏していたのでしゅが、つい最近姿を消したとのことでしゅ」


「トアル王国には冒険者ギルドがありませんよね。よくその指名手配犯が逃げたとわかりましたね?」


「そこは腕に埋まった賢者の水晶サージ クリスタルの破片のおかげでしゅ。もっともトアル王国は冒険者ギルドの介入を拒んでて、調査をしようにも少ない職員を動員せざるを得ない状況だったのでしゅ。もちろん監視は付けてましゅが、ある日消えてしまったとのことでしゅ。なんでも変な男が隠れ家に入ってきて、ぴかっと光ったらもぬけの殻になっていたのでしゅ」


 ネトブリの話を聞く限り、相手は転移呪文ニョゲを使った可能性が高い。

 だが転移呪文は自分が行ったことのある地しか行くことは出来ないのだ。そもそも転移呪文は冒険者ギルドでもギルドの許可が下りなければ使用は不可である。ワイトも使えるが、許可なしで使ったことはない。母親のバガニルは許可がなければ使わなかったぞと言いくるめられれば、ワイトはそれに従うのだ。


「その指名手配犯の名前は何というのですか?」


「植物を操る巨漢、ヴィーエン。天才女射手、スラー。水魔法の達人、トスラ。魔法剣の天才にして拷問のスペシャリストでもあるスゥロス。そして彼等を率いるリーダーがドイラプだ」


「……確か6年前にナーロッパ諸国を荒らした冒険者でしたね。当時は26人の大所帯だと聞きましたが」


 ワイトはその名前を聞いて思い出した。6年前はまだ6歳だったが、ドイラプたちの悪行は辺境であるサマドゾ王国にも轟いていたのだ。

 彼等は自分たちが力を管理する者であり、自分たち以外に力を振るう者は容赦なく潰していったという。

 さらに自然を愛していると抜かして、辺境の開拓村を焼き払い、せっかく作ったダムを破壊するなど傍若無人な活動を行ってきたという。

 極めつけが花級フラワークラスや花びらペドルクラスの冒険者に対して、推薦を求めていたそうだ。

 花級への昇格は花級か花びら級の推薦が必要になるが、彼等はそれを満たすどころか所業が悪すぎる。


「以前、サリョド叔父さまは怒っていましたね。なんでお前らを推薦しなければならないんだと」


「それは未熟だからでしゅか?」


「いいえ。サリョド叔父さまとアルジサマ様に対してなんで不細工なあんたらが花びら級なんだよ、おかしいだろうと詰め寄ったそうです。さらにケダンやナイメヌに対して美男美女でなければ、混ざりものなんか殺していたとほざいたそうですよ」


 それを聞いてワイトは歯ぎしりした。世の中には人間とモンスター娘、魔獣の混血児は多くいる。故郷のサマドゾ王国ではそれは普通の事であった。

 ドイラプたちは不細工な混血児は殺されるべきだが、美男美女なら殺人犯でも生かすべきだと主張していたのだ。相手の美醜で罪を裁くべきだと言われたときは、ワイトも怒りを覚えたくらいだ。


「ドイラプたちは他の冒険者たちにも失礼なことを言ってましたよ。もう差別主義者で選民思想が強すぎるとしか言いようがないですね。お父様たちもドイラプのチームを見かけたら生死を問わずに賞金をかけていたくらいですから」


「そうでしゅか……。実は調査員が隠れ家を念入りに調べたところ、相手はワイト先生とパルホ先生に恨みを抱いているでしゅ。家に残った残留思念を読み取った結果でしゅね。君たちが花級になれるなんて信じられない。きっとズルをしたんだ。そして粛清しなければならないんだと、謎の男が煽っていたそうでしゅ」


「その人は私に恨みがあるようですね。もしくはバガニルお母様に対しての意趣返しでしょうか? なんにせよ面倒ではありますが、相手を始末せねばなりませんね」


 ワイトは戦いが好きではない。バガニルと同じように内政を好んでいた。父親のマヨゾリは獰猛な大魔獣を一人で叩き伏せる実力を持っている。それを支えるのが妻であり王妃であるバガニルの仕事だ。

 

「ところでそれが火急の用事なのですか? 相手が学園内に潜入したならともかく、そんなに慌てる必要はないと思いますが……」


「うんにゃ、もう相手は来ているでしゅ。正確にはダイザフ侯爵領でしゅけどね。今は兵士たちが対処している最中らしいでしゅ」


 それを聞いてワイトは目を細めた。ネトブリがあまりにも暢気すぎるからだ。だらだらドイラプ達の話をするなどありえない。


「……デッパード教頭の命令でしゅ。ワイト先生たちを出す前に、自分たちで処理するべきだと言われたのでしゅよ」


「そんなに私たちは信用がないのですか?」


「信用と言うより、悪名を広めないための措置でしゅ。君たちの実力ならなんなく倒せると思うでしゅが、敵の狙いがよくわからない以上、君たちを矢表に出すのは得策じゃないのでしゅ」


 ネトブリの言う通りであった。謎の人物が遠いトアル王国からキャコタ王国へ転移呪文ニョゲを使ったのは明白である。かなりの実力者と見て間違いはないだろう。

 なぜ相手はドイラプたちをここに送ってきたのか。その理由が不明である。


「……そういえばドイラプの一味はドボチョン・ロックブマータとコブラツイスターズの登場人物に似ているんですよね」


 実際のモデルはドゴランだが、作中で起こしている悪行はドイラプたちと酷似している。

 これは偶然ではないだろう。一体何が起きているのかわからない。


「大変でござる!!」


 そこにパルホが現れた。ワイトと対照的に日焼けした肌が健康的な美少年だが、実際は美少女だ。


「ワイト一大事でござるぞ!! キョワナが無断で閉鎖した校門をこじ開けたと報告があったでござる!!」

 

 それを聞いたとき、ワイトは両手で顔を覆った。

 実はこの展開は連載当初考えていませんでした。

 本来なら冒険者として旅立つことを考えてましたが、危機感がないのはつまらないと思い、今回の展開にしたのです。

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[一言] キョワナいっちゃいましたか。
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