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第七十六話 今回はワイトではなく 冒険者たちが  やらかした

「やれやれ、なんとかなりましたね」


 黒髪の犬耳執事少年が王名鵬柳おうな ほうりゅうに声をかける。パルホの執事、ケダンだ。彼はパルホたちの護衛に来ていたが、襲撃者は王名たちによって始末されたので、その後片付けを手伝いに来た。


「うむ。やつらは雑魚だ。ワイトたちならなんとかなったかもしれんが、念のためにな」


「はい。ワイト様がまた何かしでかすとも限りませんからね」


 白髪の犬耳メイドがいつの間にか王名の背後に立っていた。ケダンの双子の姉、ナイメヌである 

 彼女は物静かに淡々と言葉を紡いだ。


「おいおいナイメヌ。なんだよその言い方。まるでワイトが粗忽者に聴こえるじゃないか」


「粗忽者ですよワイト様は」


 ケダンが不快そうに尋ねると、ナイメヌはばっさりと切り捨てた。

 それを見てケダンは顔をしかめる。ワイトを侮辱されたと思ったからだ。


「ワイト様は確かに素晴らしいお方ですよ。恐らくは母親であるバガニル様より上かもしれません。ですがワイト様は自分の事を顧みません。なぜならバガニル様ならもっとうまくやる、バガニルさまならなんでもできる。そんな自分はまだまだ無能だと思い込んでいますから」


 ナイメヌの言葉にケダンは反論できなかった。ワイトは美少女に見えるが男だ。そして重度のマザコンでもある。バガニルと結婚したいとかは思っていないし、必要以上に身体にべたべたすることはない。

 ただワイトはバガニルと同じようになりたいと願っている。故郷のサマドゾ王国では母親から英才教育を受けていた。講師は彼女だけではなく、王名を含めた百人ほどの冒険者たちも交じっていた。

 そんなワイトはすでに母親を超えていることを理解していない。それどころかバガニルの功績など知らないくせにバガニルならこうするだろうという思い込みで魔法を編み出すのだ。そしてそれを隠すことはしない。


「うむ。ワイトは神に愛されていると言っても過言ではない。しかし本人はその才能の恐ろしさを自覚しておらんのだ。その癖母親と比べて卑下しすぎておる。それ以外は心優しい子なんじゃがなぁ」


「一緒のパルホ様は魔法こそはワイト様に劣りますが、それなりに自重はしております。恐らくはパルホ様がいるからまだ抑えられているのでしょうね」


 王名の問いにナイメヌが答えた。パルホは美少年に見える美少女だ。しゃべり方は独特だが性格はかなりまともと言える。ワイトとは月とスッポンといったところか。


 さて襲撃者はすでに拘束されている。キャコタ王立学園の学園長であり、ダイザフ侯爵にはすでに連絡を入れた。彼等はダイザフ家が拘束し取り調べを行う。そしてその罪はキャコタ王家によって裁かれるのだ。外国人が犯罪を行った場合は、王家が責任をもって裁判をするのが定例である。


 彼等はワイトが受け持つ木組ウッドクラスの生徒、マルデ・ダ・メナコの関係者だ。

 彼等はマルデを亡き者にしようとして失敗している。メナコ王国はすぐに抗議を入れるだろうが、力関係はキャコタ王国の方が上だし、マルデ王子派の人間が擁護に回るだろう。

 トテモ王子派は今回で翼をへし折られた形になる。メナコ王国の膿を放りだした形となった。


「今回はワイトたちは活躍しなかったけど、ワイトたち今回で花級フラワークラスになったんだよな。さすがだぜ」


「ええ、まったくですね。これも私たちがワイト様たちを推薦したおかげでしょう」


 それを聞いて王名たちは目を丸くした。ケダンとナイメヌはなぜ彼等がきょとんとしているのかわからない。

 そこに陰陽師である桔尾円出けつお まるだしが訊ねた。


「おやおや、あなたたちは何を言っているでおじゃるか? ワイトが花級になれたのは麻呂たちの推薦のおかげでおじゃるよ」


「はぁ? なんであんたらが推薦するんだよ。俺とナイメヌ、親父たちが推薦したおかげだぜ。俺たち以外推薦しないと思ったしな」


「ぬぅ、拙者たちも、自分たち以外は推薦しないと思っていたでござるが……」


 ケダンの問いに侍の炉守都京ろしゅ つきょうが答えた。どうも話がかみ合わない。


「……もしかして、僕たち以外のパーティは、僕たち以外ワイトさんたちを推薦してないと思い込んでいるのではないでしょうか?」


 忍者の田土歪夫だつち わいふが答える。全員真っ青な顔になった。


「いや、まさか……」


 王名は顔が引きつる。普通は推薦状など滅多に書かない。軽々しく書けば軽くみられるし、相手が問題を起こせば推薦した者にとばっちりが来る。なので自分たちが安心できる相手を推薦するのだ。

 ワイトとパルホは安心できる。だが他の者は身内びいきはしないだろう。自分たちだけが推薦するだろうなと決めつけていた。


 ☆


「え? ワイトとパルホに推薦状デスカ? もちろん出したデス。ワタシたち以外誰もやらないデスシネ」


 これはモコロシ王国の大使エスロギだ。お供のパンダ、ウシワカ、キントキ、ベンケイも首を縦に振る。


「ワイト様とパルホ様に推薦証を出したかと? はい、カムゲシャ様とワマレド様、ラガクキ様は出しましたよ。多分自分たちしか出さないはずとのことです」


 こちらはズゥコ王国の冒険者、カムゲシャのメイド、クッグだ。カムゲシャの娘であるワマレドと、その孫娘のラガクキも同様である。


「ワイトとパルホは将来性が高い。今年入ったフナタリとパチルンも賛同した。なんだ、我々以外推薦しないだろう?」


 カハワギ王国出身の冒険者レッドモヒカンチームのリーダーフチルンが答えた。


 どうやら各パーティは自分たち以外、ワイトとパルホに推薦状を出していないと錯覚していたのだ。

 他の人は厳しいと判断しており、ケダンたちは親戚だからもっとやらないと思っていたのだ。

 だがワイトに尋ねたところ、推薦をしたのは約百人であり、その中に自分たちの名前があると知って驚いた。


「今回はワイト様とパルホ様に責任はありません。私たちの責任ですね」


 ナイメヌの言葉に推薦した冒険者たちは頭を抱えた。

 ただでさえ花級は他の冒険者たちから目立つ。推薦したパーティと組むことが多くなるからだ。

 花級と最上級である花びら級と付き合えば、普段は出会えない用心と会えたり、国から重要な仕事を任されることがある。さらに冒険者ギルドからは、武器や防具、日常品を格安で購入出来たり、交通手段も常人よりは上等なものに格安で利用できるのだ。


 ワイトとパルホは12歳でそれを手に入れたのだ。何十年も蕾級バドクラスにくすぶっている者たちにしてみれば、ワイトたちは王族だから、運がよかったからとやっかむものが出るだろう。そして殺意を抱くかもしれない。

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[一言] やっかまれても跳ね返す気もしますが。
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