第七十二話 ワイトとパルホは 冒険者たちに 愛されていた
「ようこそいらっしゃいませ。キャコタ王国支店へ!!」
ワイトたちは受付のカウンターに来ていた。対応したのは赤毛の三つ編みをした女性であった。二十代でどこか幼げな感じである。黒ぶちの丸眼鏡にそばかすという田舎臭い雰囲気があった。
「本日皆様を担当するのはわたくし、オコボと申します。よろしくお願いしますね」
「オコボ……。確かカホンワ王国にいた受付嬢さんですよね? ゲディス叔父さまやガムチチ様と関係のある」
ワイトが訊ねた。ゲディスとはワイトの叔父で、カホンワ王国の王太子だ。ガムチチはその配下である。
「あら、このわたくしを知っているのですね。というかあなたとわたくしはどこかでお会いしたでしょうか?」
「2年前、タコイメの町で見かけましたよ。申し遅れました、私はワイト・サマドゾです。あの時はバガニルお母様にパルホと一緒でした」
「そして拙者がパルホでござるよ!!」
ワイトが説明し、パルホが名乗ると、オコボは驚愕した。
「なんということ!! あのサマドゾ王国の王子と王女がこんなに歪に成長するなんて!!」
「歪とは何だ。私の正室になるワイトに対して無礼であるぞ」
「あっ、あなたはドゴラン様……。齢五歳で国を作ったお方ですね」
ドゴランが抗議すると、オコボは彼を見て驚いていた。ドゴランの名前を顔は遠いキャコタ王国でも知られているらしい。
「オコボ殿、今日は拙者たち全員で冒険者ギルドに登録するために来たのでござる。全員キャコタ王立学園の生徒でござるよ」
パルホが強引に言った。多分話が脱線するだろうと気を利かせたのだ。ドゴランは不満げだが、一応黙っていた。
どうせオコボが来たのは配置換えであろう。それとなくパルホが話を振ればあっさりと答えたから間違いない。
「そうでございましたか。では全員賢者の水晶で登録してもらいますね」
そう言ってオコボは部屋の奥に案内した。部屋の中にはエメラルド色の巨大な水晶板が置かれてあった。さらに四方には複数の男女が机の前に座っており、小さな石板の前で何やらにらめっこをしている。
「これが賢者の水晶です。この中には世界各国の冒険者の個人情報が記されているのですよ。さらに世界各国のモンスター娘や魔獣の情報や、各地で採れる素材の相場なども記録されています」
「……意味不明です。そんなことをして何になるのですか?」
オコボが説明していると、キョワナが訊ねた。彼は情報の重要さを全く理解していないようである。
「ネズミが余計な口を出すな。世界各国の情報を瞬時で読み取ることが出来る。これがあれば商人たちは何処の国に何を持っていけばいいか、儲かるか一目瞭然だ。ギルドは無法地帯でない限り存在するから、あらゆる依頼や魔獣の脅威などを時間差なく伝えることが出来る。冒険者ギルドが世界を制しているのも当然と言えるな」
「はい、その通りです。スポンサーは各国の商会から募ってます。もちろんここで得た情報を使って商売に生かすことは可能ですが、犯罪に関しては認められません。そしてキャコタ王国の国教ブカッタ教も関わっており、商人たちが冒険者たちを好き勝手に使うことも許されないのです」
ブカッタ教はスキスノ聖国の次に信者が多い宗教である。その正体は布教と称して魔道具に頼らない技術提供を行っているのだ。水力や風力の力を利用し、農業や冷蔵庫を作らせている。
キャコタだけではなく、他国の商人たちはブカッタ教の息がかかった冒険者ギルドの世話になっていた。
ブカッタ教を敵に回せば、商人たちも敵に回る。それが世の理であった。
一年前、カホンワ王国の王太子、ゲディスはブカッタ教の神の姿に変えられた。スキスノ聖国の愚かな枢機卿はゲディスの抹殺を裏ギルドに依頼する。
その結果スキスノ聖国は商人たちを敵に回したのだ。普通ならブカッタ神の重要性は商人だけでなく、スキスノ聖国の重鎮でも知っているのだが、王族の血筋と言うだけで枢機卿になった男には全く通じなかった。結果として枢機卿は惨めな死を遂げたという。
「さて皆さんには水晶の欠片を左の手首に埋め込みます。おっと痛みは全くありませんよ。水晶の欠片はこの賢者の水晶とリンクしております。死亡したら死亡したと報告が来るのですよ。さらに倒したモンスター娘や魔獣の数も記されます。ただし他人の個人情報は本人以外教えられません。ギルドマスターでも個人情報を悪用したら問答無用で解約になり、目玉が飛び出るような違約金を支払う羽目になるのです」
オコボがそう言うと、生徒たちは次々と水晶の欠片を埋め込んだ。オコボが賢者の水晶に触れると、パキパキと水晶の一部が突起し、オコボがそれをぽきっと折った。
蛍のように淡い光を放つと、左手首に埋め込まれる。少し熱く感じるだけで痛みは全くない。
そしてオコボは水晶板を眺めていた。
「キウノン・バデカス様、ソヘタク・ズゥコ様、マルデ・ダ・メナコ様……、すごいですね、全員蕾級ですよ!!」
冒険者には五段階の階級がある。初心者は種級、少し毛が生えたのが芽級、一般的な実力者が蕾級である。
次にギルドの審査を超えられたのが花級で、そのてっぺんが花びら級であった。
キウノンたちが蕾級なのはある程度実力が高いためである。
「では私たちも登録するとしましょう。お願いします」
ワイトが言うと、オコボは水晶の欠片を取り出して埋め込む。パルホとドゴランも同じだ。
「ドゴラン様は蕾級ですね。で、ワイト様とパルホ様は……」
オコボが水晶板をじっと見ている。何が起きたのだろうか?
「なんとお二人とも花級です。お二人の場合は推薦者が多数いるので、初回で花級が認められたのですね」
「推薦者、ですか?」
「そうです! まずは桔尾円出様、炉守都京様、王名鵬柳様、田土歪夫様、荷庫小芥子様、荷庫弁樹様、荷庫梅分様、サリョド・サマドゾ様、アルジサマ・サマドゾ様、ケダン・サマドゾ様、ナイメヌ・サマドゾ様、フチルン様、デマカラ様、ナガンチ様、ソンチ様、ケデッカ様、フナタリ様、パチルン様、カムゲシャ様、ワマレド様、ラガクキ様、エスロギ様、ウシワカ様、キントキ様、ベンケイ様、アフカン・シフンド様、アフオン・シフンド様、アフキン・シフンド様、シジョフ・セヒキン様、シジョム・セヒキン様、シジョル・セヒキン様、ヘダオス・キャコタ様……」
全員花級と花びら級の冒険者たちであった。普通は花級は3人ほどの推薦者がいればいいのだが、ワイトとパルホは冒険者たちに愛されていた。実力も認められている。それ故にこの結果となったのだ。もっとも推薦した本人たちはこのような事態になるとは思わなかっただろう。
ちなみにエスロギのお供であるパンダ三頭も冒険者として登録されています。
ケダンとナイメヌは花級の実力者です。ケダンはワイトが関わるとポンコツになるので、そのすごさは伝わりません。
ちなみに前作の下ネタファンタジーにおいて全員キャコタ王国のクーデター阻止に関わってます。




