第六十九話 ドボチョン・ロックブマータと ドゴランの関係性
キリョイは担架に運ばれていった。それをワイトたちはじっと見ている。
「キリョイ先生……、ドゴランが本当に大好きなのですね」
「好きだからと言ってやっていいことと悪いことがあるでござる。ああいった人間を出すのも、強者の悩みでござるな」
ワイトが同情して、パルホが答えた。ドゴランはまったく無関心である。
「ふん、今回は俺の失態だな。もう少しキリョイに俺の偉大さを伝えるべきだった。余計なことなどする必要はないとな」
ドゴランは無表情だが、心の中ではそれなりに心配しているようであった。
「そういえばキリョイ先生は言ってましたね。ドボロクは龍結びの儀式だと。あれはどういう意味ですか?」
ワイトが訊ねた。
「ああ、カウゲス族は12歳の成人の儀式に、毒蛇を生きたまま掴んで結ぶ儀式があるのだ。俺も試したが、大したことはなかったぞ。もっとも下手をすれば毒蛇に噛まれて死ぬことが多いから、命懸けではあるがね」
ドゴランが説明した。
「おいおい、それはマジッサ王国のコブラツイスターみたいじゃないか」
犬耳の執事服を着た少年が現れた。パルホの執事ケダンである。
「なんだ駄犬。主の危機に対しておっとり刀だな。そんなのでパルホを守る盾になれるのか?」
「パルホは強いからいいんだよ!! 大事なのはワイトだ!! お前みたいな変態に手出しされないように気を付けないとな!!」
ケダンはドゴランをにらみつけた。目から火花が飛び散っているように見える。
「ふむ。マジッサ王国とカウゲス族。遠く離れた国で似たような儀式があるのでござるな」
パルホが笑った。するとドゴランは否定した。
「いいやマジッサ王国にそんな儀式はないぞ。俺の国にはマジッサ王国から亡命した魔法使いがいるからな。ドボロクの話はみんなでたらめだとぼやいていたな」
それは衝撃的な事実であった。ならなんでマジッサ王国ではコブラツイスターズの儀式があるのだろうか。
「そもそもあの本は俺をモデルにしている。まったく人に断りを入れずに書くとは許せんな」
ドゴランがつぶやいた。その言葉にケダンが反応する。
「はぁ? ドボロクのモデルはお前だって? 何馬鹿なことを言っているんだよ」
「馬鹿ではないぞ。そもそも登場人物のミドノリはジゲラミという山男がモデルだ。あいつは植物の力を自在に操れていた。
デキシーニはシフオキという水の精だし、レッモーはドヤテキ、チャハはチクビリといって……」
ドゴランが説明した。彼等は全員ドゴランの命を狙う暗殺者だった。箆血翁や泥鎌嵐、六九兄妹もそうだ。
ワイトは空で思い出す。ドゴランが口に出した名前はすべてドボロクの登場人物と一致していた。
「確かに一致していますね。ですがドゴランさんがドボロクのような性格ではないと思いますが?」
「いいや、5歳の俺はドボロクと同じだったな。今思えば自分のやっていることは恥ずかしいと思うがね」
ワイトの問いにドゴランは遠い目をしながら言った。ドボチョン・ロックブマータは切れやすい少年だった。自分の思い通りにならないとすぐ癇癪を起し、暴力を振るう。
ドゴランは癇癪こそ起こさないが、自分の思い通りに事を運ぼうとさせている。暴力は振るわずあくまで相手を威圧していた。
「じゃあなんでキョワナたちはお前の事に対して反応がないんだよ。むしろワイトよりお前のことが好きになるはずじゃないか」
ケダンが疑問を口にした。
「そこなのですよ。なぜドゴランさんではなく、私なのか……。キョワナさんは私の事をドボチョン・ロックブマータに相応しい人間だと思っています。何かそうなるきっかけがあったと思いますね」
「そうなるとドボロクの本に問題があるでござるな。あのような内容になぜ影響されるのかを調べるのが大事でござる」
パルホが言った。そこに犬耳メイドが現れる。ワイトのメイド、ナイメヌだ。
「それなら私が調べられるだけ調べました。そこで面白いことがわかりましたよ」
「なんだよナイメヌ、お前いつの間に調べたんだ?」
「あなたがワイト様にストーキングしている間にね。結果から言えばキョワナ様やキウノン様、ソヘタク様たちはマジッサ王国の血縁だとわかりました。キウノン様たちは祖母がマジッサ王国出身で、キョワナ様は母親がマジッサ王国の亡命者なのです」
それは衝撃的な事実だった。だがマジッサ王国の人間に反応するなら、子供だけでなく大人も影響されるべきではないだろうか。
「あの本には複数の呪式が組み込まれています。素材も邪気を含んでおり、一冊の魔術書と言えますね」
魔術書。それはただ魔法の使い方を記しているわけではない。著者が特殊なインクで記し、邪気を含む樹木から作られた紙を利用するという。
魔力を持たない人間でも呪文を唱えれば発動することもある。大抵は数回限りで本自体が灰になるが。
「で、どんな呪式が組み込まれているんだよ?」
「それはわかりません。だって私は専門家じゃないから」
ケダンの言葉に、ナイメヌはあっさりと答えるのだった。
ドボチョン・ロックブマータとドゴランは最初関係ありませんでした。
しかし無関係すぎるのもあれなので、無理やり接点を持たせました。
小説は本当に作者でも予測不能ですね。




