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男の娘バニーガールは 最強の魔法使いで 学校で男だけのハーレムを築きます。  作者: 江保場狂壱
第十章 ドゴランは ワイトより トラブルメーカー
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第六五話 箆血翁

 ワイトが生徒でなくなった時、ドゴランから見る世界は灰色に変わった。

 すべてが色褪せた味気ない世界。風が吹こうとも、花の香りがくすぐろうとも、何も感じない。

 ただすべての生徒達はおろか、教職員ですら自分の足元にも及ばなかった。

 そんなドゴランは常に仏頂面で他者を寄せ付けないのだ。


 昼休み、食堂では大勢の生徒でにぎわっていた。友達と談笑しながら食事をする者、黙々と一人で食べている者など様々であった。

 そこにドゴランが一人でやってくる。カラスの羽根のように黒い長髪に女性のような美貌を持つ、すらりとした長身の持ち主だ。普通なら女性にもてるだろうが、ドゴランは違う。

 すぐに場は凍り付いた。まるで極寒の地に迷い込んだみたいに。

 今のドゴランは抜身の刀だ。迂闊に近づけばばっさりと斬られてしまう。そんな雰囲気を持っていた。

 ドゴラン自身他者とのなれ合いを拒んでいる。授業はどれも物足りない。それでも我慢しているのは学園にワイトがいるからだ。ワイトは男だが極上の美少女に見える。いや、それ以上に才能に溢れていた。


 落ちこぼれと馬鹿にされている木組ウッドクラスの生徒達に100の呪文を教えたという。それも人に教えられるほどの技量になったそうだ。

 さすがは将来の正室だとドゴランは感心していた。もっともできて当然とも思っている。

 生徒達がワイトに畏怖しつつ、尊敬を集めている。自分が他者から褒めたたえられてもここまで気持ちは高揚しなかった。やはり自分はワイトに惚れているなとうぬぼれている。


 さてドゴランは醤油ラーメンを注文した。ラーメン自体はドゴランの故郷にあるモコロシ王国にもあったが、キャコタ王国のラーメンは、麺が細長く、スープも魔獣の骨と数種類の野菜を煮込んで作ったものだ。スープの種類も豊富で、なかなかうまい。この国に来てドゴランはラーメンの虜になった。最近は昼食はラーメンになっている。


 ドゴランが注文している間、立ちながら待っていると、一人の生徒が近づいてきた。

 それは二年生の男子生徒で背がとても低かった。目に隈があり、肌も青白く、陰気な空気と匂いを纏っている。

 そいつはゆらゆらと身体を揺らしながら、ドゴランに近づいてきた。そしてテーブルの上にあるはしを手にすると両手に一本ずつ手に持って襲ってきたのだ。


「う~ひょいひょい!!」


 すると男子生徒は両手で箸を立てると、ウサギのようにぴょんぴょんと跳ねだしたのだ。さらに舌を出して下唇と上唇にぺちゃぺちゃと音を立て始める。とても気持ち悪かった。

 でたらめに周囲を飛び回っている。他の生徒の迷惑などお構いなしにだ。

 だが男子生徒が乗ったテーブルは不思議に振動がなかった。女子生徒が皿に満たされたコンソメスープがまったく揺れなかったのである。恐るべき身体能力と言えた。


「……またか。食堂は庶民たちの憩いの場。それを荒らすお前は許さん」


 ドゴランがそう独白すると、男子生徒と対峙した。


「ひょいひょい!!」


「その掛け声と高速ベロ、もしかして箆血翁へらちおうか? だが奴は今……」


 どうやらドゴランは目の前の男子生徒に心当たりがあるようだ。

 そこに角刈りで屈強な男性教師が、男子生徒の肩を捕まえる。その表情は怒りに満ちていた。


「お前!! なんで食堂で暴れているんだ!! 生活指導室まで来い!!」


 男性教師は男子生徒を強引に引っ張ろうとした。しかし離れない。まるで足に根っこのようであった。男子生徒は唇で薄く笑うと、その刹那、男性教師の両方の手の平に箸が突き刺さっていたのだ。

 あまりの出来事に男性教師は呆けていたが、すぐに痛みを感じると、絶叫を上げ、子供の地団太のように床に転がり、泣き叫んだ。


「その箸の使い方、やはり箆血翁か!!」


 ドゴランの問いには答えず、男子生徒、箆血翁はにやりと笑うと高速ベロを繰り返した。そして再びテーブルから箸を取ると、再びぴょんぴょん跳ねだした。

 目の前にいると思いきや、すぐに後ろに回り込んでいる。その癖着地の衝撃など一切聴こえず、生徒たちも頭を踏まれているのに、何の痛みも感じていないありさまだ。


「かつては箆で血を染めた暗殺者であるお前が、箸を暗器にするとはな。見下げ果てた奴よ!!」


 どうやらドゴランは箆血翁の事を知っているようだ。だが動きがあまりにも素早すぎて目に負えない。音を立てないから場所もわからない。厄介な相手であった。


「ひょいひょ……、あっ」


 すると箆血翁の足からボキっと嫌な音がした。骨が折れた音だ。ドゴランはその隙を突いて、箆血翁の顔に右足で蹴りを入れた。

 箆血翁は窓の外まで吹き飛んだ。木の幹に衝突すると、ぐったりと倒れこんだ。


「ふん。この俺に勝てるなどありえん。それにしてもなんでお前が俺を襲ったのか。これは王としての力不足だな」


 その時、カウンターからラーメンが出来上がったと声がかかった。ドゴランは床で芋虫のように転がり苦しむ男性教師を無視して、ラーメンを受け取るのだった。


 後日、男子生徒は停学処分を下された。モコロシ王国出身の生徒だったが、ドゴランを襲った記憶はないという。確かにドゴランは嫌いだが食堂で襲う度胸などないと証言した。確かに普段の男子生徒の生活を見れば、人前で目立つことなどできようもないと教師たちは判断したのだ。

 

 さらに男子生徒は興味深い話をしてくれた。


「箆血翁はモコロシ王国なら誰でも知っている暗殺者です。数年前ドゴランを殺しを依頼されたけど負けて配下に加わったとか……。食堂で行った高速ベロや飛び回る戦法はすべて噂される箆血翁のものですね」


 自分を殺しに来た暗殺者を配下に加えるとは。さすがはドゴランである。しかしなぜ男子生徒が箆血翁になったのか。その謎は残っていた。

 モコロシ王国は中国風なので、暗殺者の名前もそれっぽくしました。

 呼び方で察してください。

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― 新着の感想 ―
[一言] 確かにこれは謎ですね。
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