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第六十一話 レッドモヒカンチーム

「お前たち、異常はないか?」


 フチルンがチームメンバーに尋ねた。槍のように細くて背が高いナガンチと、リスのようにこじんまりした小男のソンチは周りを見てこう答えた。


「ひゅー、生徒たちはおとなしく従ってまーす。自国では立場が弱いことを理解してますから、やる気もありますねー」


「もす。ワイトたちに対して敵対心を抱いている生徒はいない」


「そちらはすでに淘汰されたという。残っているのはワイトたちの実力を思い知っているだろう」


 フチルンは周りの生徒達を見た。彼等は木組ウッドクラスで潜在する魔力は低い。それに国自体も弱小国が多かった。キャコタ王立学園で学ぶことは本国に帰れば武器になる。入学初期に喧嘩を売ったキウノン・バデカスのような人物は最初から退学になることを見込んで送られてきた。

 そのキウノンも他の生徒達と一緒に仲良く、木の幹から皮を剥がし、鍋を作っている。その顔は演技ではなく、本心のようだ。


「問題なのは、例の本ですねー!! あたしらも読んだけどどこが面白いのか、りかいふめー」

 

 ナガンチはクラゲのようにゆらゆら揺れていた。しなやかな竹のように強風を受け流すことができる。


「もす。思春期の子供が、物語に影響を受けるのはわかる。けどあの本は悪書。まともな本じゃない」


 ソンチは股間のケースで落ちている木の実をパクパク食べていた。


「どうもあの本はまともではない。カハワギ王国でも10歳から14歳の子供があの本の影響を受けている。だが登場人物になり切る程度で、キャコタ王国のように狂人となるほどではない。謎だな」


 フチルンは腕を組んで考えこんだ。彼は冒険者として世界中を旅しているが、常に本国であるカハワギ王国のアカデミーにはこまめに連絡を取り合っていた。

 

 本国ではドボチョン・ロックブマータの本に影響された10代の子供が自分は本の登場人物になり切る事件が多発しているという。やたらと切れやすくなり、自分は選ばれた人間、コブラツイスターズだと言い張るのだ。そして自分の言うことを聞かないものは暴力で黙らせることが多いという。


 それでもキャコタ王国ほどではない。暴力を振るうと言っても何度も注意された挙句、溜まりに溜まった感情が爆発した程度だ。こちらは沸点がやたらと低く、特にワイトに喧嘩を売ることが多かった。ドゴランにも喧嘩を売られたが、こちらは隣国の関係者が嫉妬で絡むことがほとんどだ。


「一体、あの本のどこがいいんですかねー?」


「もす。考えてもわかりましぇん」


 ナガンチとソンチは首を傾げていた。だが謎が解けるわけではない。


「ああ、本国では事件を起こした子供のデータを集めているのだ。冒険者ギルドの協力を得てな。集計が終われば輪郭が見えるかもしれん」


 フチルンは冷静だ。彼は精霊魔法の第一人者だが、統計学も重視している。

 この不可思議な事件も、データを集めれば何かわかるかもしれない。


「あの、教授よろしいでしょうか?」


 フナタリがしなを作りながらやってきた。実はフナタリはふたなりなのだ。女性の胸と男根を持つ稀有な体質である。ケデッカのように乳首だけ隠すことに恥じらいを覚えていた。


「フナタリ、今の私は教授ではなく、冒険者のレッドモヒカンチームのリーダーだ。間違えないように」


「申し訳ございません」


「まあ、よい。では報告を聞こう」


 フチルンに言われて、フナタリは頭を下げた。


「いやー、すごいぜ、すごいぜー、すごくて死ぬぜー!」


 後ろからパチルンが声をかける。全身イボイボだらけだ。


「実はワイト様が生徒たちに魔法を教えております。それもすでに10種類も」


「いやー、すごいぜー、サイコウだぜー! アカデミーですらあんなにあっさり教えられるのはいないぜー!!」


 パチルンは手を叩きながら絶賛していた。彼は今年初めてレッドモヒカンチームに入ったのだ。なのでワイトとパルホと出会ったのは初めてなのである。


「ひゅー、パチルンー。お前のしゃべり方は、あたしとかぶってんのよねー!」


「被ってるか?」


 ナガンチとソンチは関係のない話をしているが、内心焦っていた。二人とも一年前にワイトとパルホに出会っているが、現在とは違っていた。たった一年であそこまで変わるとは思いもよらなかった。


「もちろん、魔法を使わないやり方も教えています。とてもわかりやすく教えてましたよ。ですがその後に魔法をポンポンと教えていました。しかも教えた生徒が別の生徒に教えるようになったのです」


 それを聞いてフチルンは頭を抱えた。魔法など簡単に教えられるものではない。自分でさえ、簡単な硬質化呪文キッボですら教えるのに一週間はかかる。それに個人差があり、教え子が全員覚えるのにひと月はかかるのだ。


「……人に簡単に教えられるワイトを他国が黙っているとは思えん。卒業後、いや今でもワイトを確保したい国はいるな。学園も大変だ」


「だからこそ!! こちらこそ!! こそこそする輩は、我々の手で、ソッコウ倒してやりますぜ!!」


 パチルンは両腕に力を込めると、全身のイボが針に変わった。さらに股間のケースがハブに変化する。


「はい。ワイト様たちのお母さまであるバガニル様は、私の部族を救ってくれた恩人です。その子供たちを守るのは私の使命なのです」


 フナタリは腰をくねくねさせていた。


「ちなみにパルホ様は割った石で木を伐採しておりました。とても人には真似できません」


 そうフナタリは締めくくると、フチルンは天を見上げた。問題児たちを見守ることは大変だが、同時にやりがいがあると思った。

 元々レッドモヒカンチームはフチルンとケデッカ以外考えてませんでした。

 他の五人は後付けですね。フチルンが実はアカデミーの教授とかは一見蛮族に見えて、インテリという意外性を持たせたかったのです。

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― 新着の感想 ―
[一言] 双子の規格外ぶりが次々と出てきますね。
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