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第五十九話 サバイバルの基本は 石を割ることから始まる

「どうですか。ここはダイザフ家が所有する森ですよ」


 ワイトが生徒たちに説明した。森の中はとても深く暗い闇が広がっている。

 学園の敷地内にある森だが、素人が入ればあっという間に迷ってしまい、命を落とすことがある。ベテランの狩人やきこりがいてなんとかなるのだ。


 ワイトとパルホは普段着だ。生徒たちも制服のままである。その後ろにレッドモヒカンチームが控えていた。全員赤髪のモヒカンで、股間を隠すケース以外身に付けていない。

 女だけ乳首と恥部を隠しているだけだ。


「今からここでサバイバル訓練を始めます。まず最初に石を割りましょう」


「石ですって?」


 ワイトに質問したのはキョワナだ。


「そうです。割った石を使って木の幹の皮を剥がします。そして縄を作り、木の鍋を作るのです」


「木の鍋ですって? そんなものを作って何になるのですか?」


「水を入れて煮沸するのです。生水は寄生虫やばい菌が入っており危険です。木の鍋で一度煮沸する必要があるのです。断っておきますが木の鍋は水分を含んでいるので燃えません。そこのところは安心してください」


 そう言ってパルホが近くにある石を見つけて、割った。その割った石を使って木の皮を剥がす。


「石が割れなければ硬質化呪文キッボを使うのでござる。まず手に魔力を集中させ、手を鉈か何かのように想像するでござる」


 パルホは右手に魔力を集中させる。するとうっすらと彼女の右手に薄紫色の煙が出てきた。魔力の証だ。

 それを木の幹に叩きつけ、ごりごりと木の皮を剥がす。右手は傷一つついていない。


「いますぐ使う必要はないでござる。まずは石を割って木の皮を剥がすでござる。その後、硬質化呪文を使ってもらうでござるよ」


 ワイトとパルホの説明に、他の生徒達は難色を示していた。しかし二人が強いのは事実だし、身分も自分たちより上だ。渋々生徒たちは石を手に取り、石にぶつけて割っていく。それをレッドモヒカンたちが補佐していた。


「……なんで僕たちが未開地の蛮族たちに教えを請わなくてはならないのですか」


 キョワナはぶつぶつ文句を言っていた。それをワイトが聞きとがめる。


「フチルン様に失礼ですよ。それにフチルン様はカハワギ王国の王立アカデミーの教授なのです。他のメンバーはその教え子なのですよ」


「王立アカデミーですって!! 世界中の知識人が集まり、世界中の貴重な書物を納めているという!?」


「そうです。フチルン様は精霊魔法の研究をしており、そのために世界各国を冒険しているのですよ。教え子さんは一年ごとに二人変わります。フナタリ様とパチルン様は初めて会いましたね」


 なんとフチルンはアカデミーの教授だったのだ。カハワギ王国はキャコタ王国より広大な土地を持ち、資源は豊富だ。しかし文明はろくに発達しておらず、数百年前に魔王化によって滅んだことがあった。

 そこで復興したカハワギ王国は世界各国の知識人と書物を集め、様々な研究を進めてきた。

 キャコタ王国にもアカデミーはあるが、カハワギのアカデミーもそれなりの権威があった。


「ですが、なんであの人たちは裸なんですか!! おかしいじゃありませんか!!」


 キョワナが怒った。彼の出身国であるカモネチ王国も王族貴族以外は裸でいることが多いのに、他国の文化にはケチをつけている。ワイトはキョワナが井の中の蛙と思っていた。そこにフチルンが声をかける。他のメンバーより岩山のような威圧感があった。


「私の研究は、どんな環境でも適応できるようにすることだ。世界は広い。炎のように焼けつく砂漠に、涙も凍る極寒の雪山、虫がまとわりつく蒸し暑い密林に、人間をあっさり飲み込む大海などどこでも暮らせる技術を開発しているのだ。この身体に彫り込まれた刺青はその地に住む精霊たちと同化するための呪式だ。今も我々はこの地に住む精霊たちと協力してもらっている。股間の蛇は成人の儀式に刻まれたものなのだ」


 フチルンの身体にはうっすらと何かが浮かんで見えた。それはこの地に住む精霊たちであろう。大地や樹木の精霊たちがレッドモヒカンチームに溶け込んでいる。


「待ってください!! あなたたちが精霊を宿しているなら、なぜこの暴挙を認めるのですか!! ワイトさんの行為を大切な自然を破壊している行為ではないですか!!」


 キョワナが抗議した。だがフチルンは首を振る。


「関係ない。そもそも精霊たちは土をいじろうと木を切ろうとも何とも思わない。なぜなら人間が肌の垢をこすり、産毛を剃るのと同じだからだ。精霊をこの身に宿して思ったことだが、彼等の懐は大きい。寧ろ彼等は変化を望んでいる。木の皮を剥がしたところでどうということはない」


 フチルンに言われてキョワナは黙り込んだ。


「馬鹿な、馬鹿な……。精霊が自然破壊を認めるなんて……。自然は大切にしなくちゃいけないんだ、自然を壊してはいけないんだ……。ドボチョン・ロックブマータだってそうするに決まっている。なんでワイトさんはロックブマータのように行動しないんだ……」


 その様子を見てワイトは何とも言えない顔になった。キョワナは自分をロックブマータと思い込んでいる。だからこそロックブマータと同じ行動をしろというのだろう。迷惑な話だ。

 だがロックブマータの登場人物になり切るのではなく、役柄を強要させたのは初めてだ。キョワナがどんな行動を起こすか見守ることにした。

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― 新着の感想 ―
[一言] 残念ながら自分がその理想に生きるばかりでなく、他人に役割をあてがう人間は現実にもいます。
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