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第五十八話 レッドモヒカンと サバイバル訓練

「え~、むにゃむにゃ。今日からワイト・サマドゾがウッド組の新しい担任教師だ。ちなみにこの私スゴイチ・ビデブは副担当になります」


「初めましてワイト・サマドゾです。今日から皆さんの担当になります。よろしくお願いしますね」


 こじんまりした禿げ頭に樽のような腹の男が答えた。木組の担当であるスゴイチ・ビデブである。

 12歳のワイトより頭一つ背が低かった。どこか眠そうな目をしている。

 ワイトは教壇の上に立ち、挨拶をする。

 教室内には木組の生徒が20人ほど座っていた。本来は25人入学したが、5人ほどワイトに喧嘩を売って停学、もしくは退学になったのである。


 一部の生徒を除き、ほとんどの生徒がワイトに対して嫌悪の目を向けていた。それはそうだろう。自分の国より歴史が浅く、同年代の男女に教えを乞うのだ。無駄に高いプライドを刺激されているだろう。例外は初日にワイトへ喧嘩を売ったキウノン・バデカスと、ソヘタク・ズゥコくらいだ。二人はワイトに対して憎悪どころか敬意を表している。元の人格が死んだためだ。


 ここにはキョワナ・カモネチもいる。相変わらず黒い愛らしいハムスターのような容姿だが、中身はどす黒いものを宿していた。よく爆発しないものだとワイトは感心している。


「はい! 先生、よろしいでしょうか!!」


 キョワナが手を挙げた。ビデブはそれを見て許可する。


「ワイトさんは僕たちと同年代です。そんな人が年上のビデブ先生を差し置いて担任教師になったことに、先生は何も感じないのですか?」


「むにゃむにゃ、一般常識からみればそうでしょうね。ですがワイト先生はそんなちっぽけなプライドなどどうでもよくなるほどの実力者なのですよ。そもそも私が副担になったのは自重しないワイト先生を止めるためにいるのです」


「ビデブ先生、私はあまり我を通すのは好きではないのですが……」


 ビデブが答えると、ワイトは反論した。まるで心外だと言わんばかりだ。

 その様子を見てビデブは額に右手を当てた。デッパード教頭の忠告通りだと独白した。


「基本的にはワイト先生の好きにさせます。私はワイト先生の後始末をする役割ですね。皆さんも私の実力は存じていると思いますが」


 そう言ってビデブの眼は鋭くなった。一瞬、教室内では温度が一気に下がった気分になる。見た目は冴えないハゲチビデブだが、魔法の達人であった。初日でビデブを見下していた生徒たちも、ビデブの実力を目の前にして委縮したくらいだ。


「ではさっそく外に出て森に行きましょう。あ、制服のままで構いませんからね。今日の授業はサバイバル訓練です」


「サバイバル……、ですか?」


 キョワナが訊ねた。


「そうです。冒険者にとって必須なスキルですが、それ以上に貴族王族でも必要になります。なぜならあなたたちの立場は薄氷を履むが如しです。いつ民衆が暴動を起こし、家臣が反乱を起こすかわかりません。もちろんそうならないために気を使うことも大切ですが、自身が着の身着のままで脱出することもありえます。その時サバイバル知識があれば森の中で生き延びることが出来るのです」


 ワイトが説明すると他の生徒達が反発した。


「ふざけるな!! 平民共が偉大な貴族に歯向かうなどありえん!!」


「そうよそうよ!! 大体なんで王族のわたくしがそんなことをしなければならないの!!」


「小国の王子の癖に偉そうに命令するな!!」


 生徒達は完璧にワイトを見下していた。キョワナは声を上げないが助けもしない。複雑な表情を浮かべていた。


「お黙りなさい」


 ワイトが一言そう告げた。ビデブとは違った冷たさを感じる。心につららを突き刺されたような気持になった。


「私の地位は騎士です。あなたたちは貴族王族の子息子女ですが、立場では私の方が上です。あなた方に暴力を振るえば私は罰せられますが、あなたたちもそれ相応の罰を与えることを私は許されているのです。世界には私のような子供でも親の爵位を継いだり、国王に即位したりしています。その時、年下だからと言って見下したり侮辱すれば不敬罪になりますよ。自分が処罰されるだけではなく、下手すればお家御取潰しになります。このような苦痛に耐えるのもこの学園で学べる重要な時間なのですよ」


 ワイトがきっぱりと説明すると、生徒たちは黙り込んだ。それを見てビデブはにっこりと笑った。

 キョワナはまだ複雑そうな表情を浮かべている。


「さてサバイバル訓練では裸一貫で行動します。そこで魔法を多用することになりますね。私が必要な魔法を教えるのできっちり覚えてください。あと特別に冒険者の方を講師として呼んでおりますので、安心してください」

 

 すると教室内に7人の男女が入ってきた。

 全員赤い肌にも赤毛のモヒカン頭であった。身に付けているのは股間を隠す角のようなケースだけだ。肌には黒い太陽のような刺青を肩や胸に施されている。


「俺の名はフチルン。レッドモヒカンチームを率いる冒険者だ」


 フチルンはチームの中でも筋肉がムキムキの40代の男だ。岩のような筋肉にハヤブサのように鋭い目つきと鼻が特徴的である。


「俺、デマカラ」

 

 風船のような身体の男が自己紹介した。ガマガエルのように目が丸く、唇が分厚い。


「初めまして、私ナガンチです」


 細長い背の高い男がぺこりと頭を下げる。まるで全身が鋭い槍であった。


「オイラ、ソンチ。よろしく」


 こじんまりしたリスを連想する男であった。しかし身にまとう雰囲気はただものではない。


「あたいはケデッカ」


 唯一の女だが毛は生えておらず丸刈りだ。筋肉もりもりで乳首を隠す装飾品と、股間を隠す前タレしかない。


「ふっ、フナタリです……。どうぞよろしく……」


 こちらは中肉中背の美少年だ。他のメンバーと違い、胸を隠している。どこか体格も女性らしさがあった。


「最後にパチルンだ。よろしくな」


 こちらは全身にイボイボが浮き出ている男だ。これら全員がレッドモヒカンチーム。

 キャコタ王国より遥か東にある大陸、カハワギ王国から来た冒険者であった。

 一人だけでもただならぬ雰囲気があるのに、7人も揃うと圧倒的である。幼児なら恐怖で泣きだすか、漏らしてしまうだろう。

 教室内でも生徒たちは彼等に圧迫されかけている。


「本日はレッドモヒカンチームの皆さんと共に授業を行います。皆さん外に出ましょう」


 ワイトはにっこりと笑ってそう言った。

 レッドモヒカンチームは下ネタファンタジーにも登場しています。

 全員のフルネームを出したのは今回が初めてです。

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― 新着の感想 ―
[一言] スパルタ授業になるでしょうか。
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