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第五十七話 ワイト初出勤

「ふむ。よし!!」


 ワイト・サマドゾは鏡の前で身だしなみを整えていた。白いブラウスに黒いタイトスカートにパンストを履いていた。

 腰まで伸びた白く波打つ髪には赤いルビーの髪飾りをつけている。耳にはルビーのイヤリングをつけていた。唇には桜色の口紅が塗られており、艶やかである。

 教師用の衣服である。胸はないが、それ以外は美女と呼ぶにふさわしい。これで男だから恐れ入る。


「お似合いですよ、ワイト様。とても12歳の子供には見えません」


 褒めたのはワイトのメイドで、犬耳少女のナイメヌだ。ここは教師のために用意された一戸建てである。学生をやめたから学生寮を出て、こちらに引っ越したのだ。今ドレッサールールで着替えをしていたのである。


「おお、ワイト。似合っているでござるな!!」


 声をかけたのは一人の美少年だ。短い黒髪に日焼けした肌が健康的で、舞台俳優のような眩しい笑顔を浮かべている。

 すらりとした中肉中背で、道行く乙女たちを虜にしてしまうだろう。

 黒いスーツに黒いネクタイを締めている。こう見えても女だ。パルホ・サマドゾ。ワイトの双子の妹である。

 胸がふっくらしているが、大胸筋が発達しているように見えた。


「うふふ、パルホも似合っていますよ。それにしてもこれから教師生活が始まるのですか。楽しみですね」


「そうでござるな!! 正直言ってこの学園の授業は退屈でござる!! そもそも先生たちのやる気がなさすぎるでござるよ!!」


 ワイトの言葉にパルホは過激に反応した。確かにこの学園は難しい技術を教えていない。むしろ世間の厳しさを教えることを重要視している。

 しかし真面目に授業を行う教師は少ない。あからさまに強国出身の生徒にはこびへつらい、弱小国出身の生徒を露骨に見下していた。

 それ以外に特定の生徒に無理難題を押し付けて失敗する様をあざ笑う教師もいた。ワイトたちも狙われたがすぐ対処した。

 デッパード教頭に注意されても屈辱で顔をゆがめるだけで、授業中に生徒へ八つ当たりする教師も少なくなかった。


「ここ近年は王立学園の教師になれれば、食べるに困りませんからね。一代限りの貴族とはいえ、それを守りたがる人の気持ちもわからなくはありません」


「へっ、甘ったれだぜ!! ここまで腑抜けた教師がいるとは思わなかったぜ!!」


 悪態をつくのは犬耳少年の執事、ケダンだ。ナイメヌの双子の弟でもある。


「ケダン。教師になる人がみんな高潔なこころざしを持っているわけではないのです。カハワギ王国やスキスノ聖国出身の人はそれほどではありませんが、発展途上国出身の先生は今の地位を守りたいのですよ。そして自分を貧乏と馬鹿にした人間に復讐したいのです」


 嘆かわしいことだとワイトは首を振った。


 ちなみにワイトとパルホは二人で暮らしている。教師たちの家には一人キャコタ王国出身のメイドが住み込みで働いていた。教師は外国出身の者が多く、メイドに手を出して子供を作った人が多い。

 所謂既成事実を作らせ、教師たちをキャコタに縛り付ける政策である。大抵は国に帰っても仕方がないので、残る人間がほとんどであった。


「ワイト様にパルホ様。デッパード様によればお二人にはある程度の権限がございます。生徒に対してこびへつらう必要はありませんし、先輩の教師に対して理不尽な要求に従うこともありません。困ったことがあればすぐ自分に知らせるように言われております」


 ナイメヌはメイドモードだ。例え他人が見ていなくてもきっちりするのもナイメヌである。


「だがいちいち教頭先生に頼るのはどうかと思うでござるぞ!!」


「いいえ。お二人を放置することが一番危険だと判断されたようです。お二人、特にワイト様は自重せずやらかす確率が高いので、面倒臭がらずに報告しろとのことです」


 パルホの問いにナイメヌが答えた。ワイトはやれやれとため息をつく。


「……そんなに私の信頼はないのかしら?」


「人格と品性に関しては問題なしです。ですがワイト様はバガニル王妃のつもりで魔法を捜索する癖がございます。ご自身が世界で唯一無二の存在であることをご自覚ください」


「はぁ? お前は何言ってるんだよ。ワイトが自由に振る舞えるようにするのが俺たちの役目じゃないか!!」


 そこにケダンが口を挟んだ。普段は冒険者として危険な森や海、凶暴な魔獣やモンスター娘を相手にしてきたが、ワイトと関わると頭が悪くなるのだ。


「自由には限度があります。なんでも好き勝手にやっていいわけではありません。自由にこだわりすぎると犯罪も自由だと言い出すようになりますよ。そうなれば法の力でがんじがらめになるでしょう」


 ナイメヌがきっぱりとケダンに説明する。ケダンはしょんぼりした。


「うふふ、ナイメヌは心配性さんですね。私は教師になりましたが、サマドゾ王国を、ひいては王妃バガニルの名を背負っているのですよ。私がお母様の顔に泥を塗るなんてありえません」


「……ワイト様は自分自身を客観的に見ることをお勧めします。今世界はあなたの挙動を注目しているのですよ」


 無邪気なワイトに対して、ナイメヌは頭が痛いと言わんばかりだ。

 

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― 新着の感想 ―
[一言] ワイトのそばにはナイメヌのような従者が必要かも知れません。
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