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第五十五話 ワイトは やらかしてしまいました

「アガァ、ウガァァァ!!」


 魔人と化したキモチワは頭を抱えて苦しみだした。二日酔いより痛そうである。

 そもそも人間が別の物に変化するのは見たことがない。教師たちはおろか学園長ですら動けない始末であった。


 そんな中、赤いバニースーツを着た男の娘が歩み寄る。ワイトだ。

 

「放置すればあなたの肉体は粉々に砕け散るでしょう。そして魂すら残さない。ですがそのままあなたを死なせては反省する機会を失ってしまう……」


 ワイトは口笛を吹いた。次にキモチワから一本体毛を抜き取った。

 

肉体復元呪文ニモクリ


 ワイトが呪文を唱えると、遠くから魔獣の声がした。それは猪の魔獣だ。学園内にも魔獣はいるが、警備員が定期的に排除している。

 猪の魔獣はワイトに襲い掛かろうとした。しかしワイトは慌てず、キモチワの体毛を突き刺す。

 すると魔獣は苦しみだす。やがてまばゆい光があふれると、猪はキモチワの身体に変化していた。素っ裸で腹が出ておりだらしない体型だ。


 さらにワイトは魔人のキモチワの胸に右手を当てる。次に素っ裸のキモチワの胸に左手を当てた。


精神交換呪文イカレワ


 すると魔人は苦しみだし、煙のように消えてしまった。だが素っ裸のキモチワは目を覚ました。


「なっ、何が起きた? 俺は死んだはず……」


「死んでいませんよ。私はあなたの身体を魔獣の身体を使って復元しました。そして消えゆく魂を入れ替えたのです。あなたは教頭先生が尋問するでしょう。これだけの事をしでかしたのですから、死んで楽になるとは思わないことですね」


 ワイトが冷たく見下ろしていた。とても12歳の子供とは思えない。まるで五十代のベテランのような貫禄がある。


 キモチワはがっくりとうなだれるしかなかった。


「おお、さすがでござるなワイト! そんな呪文見たことがないでござるぞ!!」


 パルホが歓喜の声を上げた。兄の活躍を素直に褒めている。


「当然です。私が今考えたのですから。お母様ならあの状況でああすると思ったからです」


「なるほど!! 確かに母上なら悪人を殺すより、生かして苦しめて反省させるでござるな!!」


 パルホは無邪気に笑っていた。


 ☆


「厄介なことになったな……」


 その様子をスワガラ・ダイザフ学園長は見ていた。そしてワイトの一連のやり取りを見てため息をつく。

 その横にははげネズミのハゲティル・デッパード教頭もいた。


「まったくですね。ルイナ先生が魔人化したのは調査するにしても、ワイトの行動はとてもではありませんが、容認できません」


 デッパードは顔をしかめていた。ワイトはキモチワを無力化したのに、なぜ二人は暗い顔になるのか。


「お二人の気持ちはわかりますわ。だってワイトが使った魔法はバガニル義姉さんですら使ったことがないのですから」


 そこに屈強なオカマが現れた。サマドゾ王国の大使サリョドである。ワイトの叔父でもあった。


「やはりか……。彼は即興で魔法を作り上げたというわけだな」


「本人は義姉さんならこうすると考えたのでしょうね。実際はそんな呪文はついさっきまで存在しなかったのですから」


「魔女は魔法を多く使うから魔女ではない。その場に応じて魔法を生み出すから魔女なのですね」


 デッパードの問いに、サリョドは無言で頷いた。

 なぜ世界で魔女が嫌われるのか。それは常識が通用しないためである。火や水、雷を生み出すならちょっとした魔法使いならできる。世界では威力の高い攻撃魔法が使えれば偉いという風潮があった。

 そもそも人間は魔力を細かく調整できないのだ。あふれ出す魔力を攻撃に回すしか能がなかったのである。

 魔女は生活の為に浄水や、素手で薪を割り、木の皮を剥がすための硬質化など魔法を生み出した。

 それが一般人には奇異に映り、恐怖へと変わったのだ。


 スキスノ聖国は魔女の魔法を魔道具という形で残した。キャコタ王国では一般の家庭でも浄水呪文ベションがかかった魔道具を利用しているし、包丁や斧、金づちを使う時も硬質化呪文キッボで補助しているのだ。


「それよりもルイナ先生はなぜあんな暴挙に出たのか。確かに仕事熱心ではないし、生徒達にも気割られていたが……」


 学園長は首をひねった。


「……恐らく、今の状況を作り出すのが狙いだと思います。あちらをごらんください」


 デッパードが掌を向けると、生徒たちは遠巻きでワイトたちを見ていた。その目は恐怖を宿している者もいれば、尊敬のまなざしで見ている者もいる。


「なんだよあれ……。ワイトの奴変な呪文を使ったぞ……」「キャコタで発行された魔法全書にもさっきの魔法なんか存在しない。あいつが作ったのか……」「魔法を自在に作り出すなんて気持ち悪い……。早くあいつを捕縛して火あぶりにしてほしいよ」


「なんてすごい人なんだろう。あんな呪文は見たことがない!!」「キャコタで発行された魔法全書でも見たことないし、即興で作ったんだな」「魔法を自在に作り出すなんてすごいな。あの人が教師になれば僕らもすごい魔法使いになれそうだ」


 生徒たちの意見は真っ二つに割れていた。だがワイトの実力を十分に見せつけたと言えよう。相手の狙いはわからないがワイトが目立ったことに変わりはない。


「狙い通りなのか、それとも意図せぬ展開なのか……。これはますます目が離せなくなるわね……」


 サリョドは甥の頼もしさを感心すると同時に、ワイトが騒動に巻き込まれることを危惧していた。


「マジッサ王国でもきな臭くなったというし、世界はどうなることやら……」


 ちなみにケダンはナイメヌとアルジサマに取り押さえられていた。本当はワイトを助けに行きたかったが、ワイトが念話で止めたためだ。ケダンはそれを無視しようとしたが、ナイメヌにしっぽを握られたため、身動きが取れなくなったのである。

 マジッサ王国の話を挟むつもりでしたが、テンポが悪くなるので止めました。

 マジッサ王国は次回にします。

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― 新着の感想 ―
[一言] 教師にしたことでの悪影響は無視しかねますが、ここまで力が隔絶してますとやむを得ないですね。
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