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第五十話 職員会議は踊る

「もう限界です!! ワイト・サマドゾとパルホ・サマドゾを即刻退学にするべきです!!」


 午後の昼下がり、キャコタ王国王立学園の会議室で、学園長を始めとした教師たちが集まっていた。

 声を荒げているのは、50代の禿げ頭の男だ。丸眼鏡にちょび髭を生やした出っ歯だ。

 着ているのはピンクと青色の縦じまの背広である。この学園の教頭であるハゲティル・デッパードであった。キャコタ王国より海を越えて北にあるゴスミテ王国出身である。2年前はゴマウン帝国の領土の一部であった。


「ここ一か月、あの二人を中心に騒ぎが起きています!! 停学になった生徒は約10数名!! こんな不祥事は学園創立以来初めてです!!」


 上座には金髪で獅子のような大男が座っている。この学園の学園長であるスワガラ・ダザイフであった。さらに侯爵でもある。

 他にも教師たちがテーブルの前に座っていた。老若男女集まっている。どれも渋い顔になっていた。全員サマドゾ兄妹に対して頭を痛めていたのだ。


 もっとも双子が悪さをしたわけではない。双子に決闘を申し込む人間がやたらと多いのだ。

 同級生はもちろんだが、上級生たちも双子に絡んでくる。

 野外で授業中でもおかまいなし。昼休み時間に食堂で騒ぎ立てるのもあった。

 毎日毎日、双子がらみの問題が起きる。この数は異常すぎた。


 もっともワイトとパルホは相手にしない。すると相手は逆上し武器を持ち出したり、魔法を使ったりしてきたのだ。

 それらを腹痛呪文ゲバリラ転倒呪文ツルンで一蹴し続けた。

 双子は正当防衛と認められた。他の生徒たちは校内での武器の持ち出しと、攻撃魔法を使用したため停学となった。なぜか謹慎中はすっきりとした顔になっている。

 教師たちが質問するとなぜか双子に喧嘩を売らねば気が済まなくなっていたそうだ。


「うん! お前さんの言いたいことはよーくわかった!! だが二人は何にも悪くない!! 悪いのは喧嘩を売ってきた連中であろう!! それなのに双子を退学にするなど筋が通らんではないかな!!」


 スワガラは雷の如く声を上げた。生徒の前では行儀良くしているが、実際は豪快な性格であった。


「ですがあの二人を学園から出さねば二人の身が危険です」


 デッパードは引き下がらない。獅子のようないでたちの学園長に対して、真っすぐ意見を言えるのは教頭だけである。


「まず理由は三つあります。サマドゾ兄妹に喧嘩を売ったのは全員ドボチョン・ロックブマータの本に影響された生徒たちです」


「うん。確か入学前はバデカス王国の王子も絡んできたと言っていたな。さらに入学式にもズゥコのソヘタク嬢が絡んできたとか」


「はい。なぜ彼等が本の影響を受けたかはわかりません。しかし偶然と言うには数が多すぎます。行内には一年生から三年生にかけて本の影響を受けています。いつ兄妹に牙を剥くかわかりません」


 これは教師たちも頭を抱えていた。ドボチョン・ロックブマータとコブラツイスターズ。特に面白い内容とは思えない。なんで世界各国の貴族や王族の子息子女たちがはまっているのかさっぱりだ。


「そして二つ目の理由です。全員が揃いも揃ってサマドゾ兄妹、特にワイト・サマドゾに嫌悪、いえ憎悪を向けているのです。どれも彼が魔女の子孫という理由で」


 二人は世界を混とんに陥れる魔女の子孫だ。世界中で忌み嫌われていた存在だが、それは複数の魔法を使うためである。ここ百年はキャコタ王国による魔導力による魔導自動車や魔導発電所、さらに冷蔵庫や掃除機、洗濯機などの家庭用魔道具を始め、蓄音機や魔導動画など娯楽も充実している。

 さらに冒険者ギルドでは賢者の水晶によって世界中に繋がっている。様々な生活魔法を教えており、魔女の存在などおとぎ話の住人として扱われるようになったのだ。

 なので今更魔女の子孫に敵意を剥き出しにする人間は減っている。もちろん嫌悪をしている国はいるが大抵はかかわりを持たないようにしていた。


「そして最後の理由です。これが一番重要です。あの二人は伝承に伝わる魔女の子供です。魔法にしろ体術にしろ天才すぎます」


 そうワイトとパルホは天才であった。魔女が生み出した魔法は三千種類は軽いと言われている。それを使いこなせるのは魔女の子孫だけだ。ワイトはそれらをさらっと扱っていた。

 パルホは魔法が得意ではないそうだが、それでも三百近い魔法を扱える。剣術や体術など身体を使う武術を得意としていた。

 武神として名高いマヨゾリ・サマドゾと、最後の魔女と呼ばれるバガニルの英才教育を受けたのだ。さらにバガニルの縁で世界各国のフラワー級とペドルびら級の冒険者たちの手ほどきを受けている。それも一人や二人ではない、百人近い冒険者と交流しているのだ。


 二人は学園において習うことがないのである。むしろ教師側が教えてもらう立場にあった。

 二人は真面目に授業を受けているが、魔法にしろ実技にしろ教師たちより上では示しがつかない。


「天才なら、ドゴラン君もおるだろう? 二人だけを危険物扱いするのはボクどうかと思うわけよ」


「彼の場合は確かに天才です。しかし世間をよく知らない。彼も問題はありますが、サマドゾ兄妹ほどではありませんな」


「それで二人を退学にしてどうするつもりかね? それで面倒事はさっぱり解決すると信じているのかな?」


 スワガラの問いにデッパードは首を横に振った。


「まさか。二人は学校をやめてもらい、この学園の教師として雇い入れるのです」


 デッパードがにやりと笑うと、スワガラたちは目を丸くした。

 一見よくある嫌味な教頭ですが、有能な人にしました。名前も露骨なものにしてます。

 キャラとのギャップを楽しんでいただければ幸いです。

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― 新着の感想 ―
[一言] これは意外な展開です。
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