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第四話 桔尾円出と炉守都京

「まろは使熊荷しぐまに王国出身の陰陽師の桔尾円出けつお まるだしでおじゃる」


「同じく拙者は侍の炉守都京ろしゅ つきょうでござる!!」


 ワイトとパルホの前に二人の男が立っていた。円出は二十代後半で黒い狩衣かりぎぬという衣装に黒い烏帽子をかぶっていた。だが後ろに回ると尻を丸出しにしている。狐のような顔つきだ。おしろいを塗り口紅をつけていた。


 都京は二十代後半だが、全身裸で白いふんどしと草鞋以外身に付けていない。頭は剥げており、てっぺんにはヤシの木のようなちょんまげが生えていた。肌は日に焼けており、岩が動いているように見えた。そのくせ目は丸く狸顔であり愛嬌がある。

 二人は遥か東方にある島国から来た冒険者である。


 彼等の前にはワイトとパルホ、バガニルが控えていた。二人はサマドゾ王国の食客として招かれていたのである。

 ワイトとパルホは黒い稽古着を着ており、バガニルは黒いバニースーツを着ていた。


「……この人たちは変態でしょうか?」


 ワイトは白い目で言った。確かに一目見れば変態と思われても不思議ではない。パルホも同じ気持ちだが、バガニルは腕を組んで平然としていた。


「ほっほっほ、初対面の方ならそう思われてもおかしくありませぬ。まろたちは冒険者、フラワー級のでおじゃります」


「こう見えてもキャコタ王国の革命騒ぎに参加したでござるよ!!」


 そう言って二人とも手の甲を見せた。うっすらと花の模様が光っている。

 ワイトたちは驚いた。冒険者ギルドでは以下の階級がある。


 初心者はシード級。

 その上がスプラウト級。

 一般的なのがバド級。大半はこの階級で一生を終えることが多い。

 上級者が花級で、さらにその上にぺドルびら級が存在するのである。


冒険者ギルドは数十万人ほど登録されている。すべての記録は冒険者ギルドが所持する賢者の水晶により記録されていた。その中でもずば抜けた活動と功績を上げたものが花級や花びら級の称号を与えられるのである。

 

「ええっ、キャコタ王国の革命騒動に!! ぜひ話を聞きたいです!!」


「あたしも!!」


「ほっほっほ。今回はまろたちだけでおじゃるが、力士の王名鵬柳おうな ほうりゅう様と忍者の田土歪夫だつち わいふもいたでおじゃるよ。まろたち4人の活躍をぜひ聞いてもらいたいでおじゃるな」


 ワイトとパルホは興奮していた。キャコタ王国は自分たちの祖母ハァクイの生まれ故郷だ。革命騒ぎは現キャコタ国王を恨んでいる海軍司令が起こしたものである。革命を止めるために百人近い冒険者が参加したのだ。


「今はその話は後にしなさい。お二人とも、貴殿たちの技で見られても仔細ないものをお願いするわ」


 それをバガニルが止める。二人は彼女をちらりと見るが特に何も感じないようだ。


「ほっほっほ、話は後からでもできるでおじゃるしな。それに神の使いであるバガニル殿のご子息ご息女の力になれるなど誉れでおじゃる」


「今日は拙者らの技の一部を見せるでござるよ!!」


 円出は懐から扇子を取り出した。そして紙切れを取り出す。それは蝶々の形であった。

 ぱたぱたと扇子を仰ぐと、蝶々たちは宙を舞う。やがて赤や青など色とりどりの蝶々に変化すると、そのまま空へ飛んでいった。


「ほっほっほ。簡易式神でおじゃるよ。魔力を込めた風で特殊な紙に魔力を注ぐのでおじゃる」


「つまり魔力さえ送れたらその紙に命を与えることができるのですね?」


 ワイトはすぐそれを理解した。円出はそれを見て笑みを浮かべながら頷く。


「今度は拙者の番でござるな。バガニル殿、お相手してもらおう!!」


「承知しました」


 都京とバガニルは木刀を構えた。そして都京はバガニルに打ち込む。するとバガニルの動きが一瞬早くなった。だが都京はゆったりとした動きで木刀を受け止める。

 ワイトは何が起きたのかわからない。しかしパルホは理解できた。


「あっ、今都京さんは遅速ネトッリ呪文と加速ソロー呪文を使ったわね!!」


「え? 都京さんより、お母様の動きが速かったけど?」


 ワイトが反論した。都京が加速呪文を使えば、都京の方が早いに決まっているからだ。


「違うわ。逆よ。都京さんが自身に遅速呪文を使ったのよ!!」


「は? なんでそんなことをするのさ?」


 意味が分からない。ワイトには理解不能だった。


「遅速呪文は相手の動きを鈍くするけど思考はそのままなの。逆に私に加速呪文をかけることで自分のリズムを狂わされてしまったわ。恐ろしい組み合わせね」


 バガニルが説明してくれた。普通なら自身に加速呪文をかけてから、相手に遅速呪文をかけるだろう。

 だが都京はあえて逆の事をした。戦場において相手のリズムを狂わせることは致命傷になる。

 

「これで見られても仔細ないのですか。お二人はとんでもないですね」


「普通の人とは発想が違うわけね。だから二人は最強なのか」


 ワイトとパルホは感心した。


「ほっほっほ、この猪武者はまろがいないと早死にするでおじゃる。なので保護してやっているのでおじゃるよ」


「ふん!! この虎の威を借る狐は拙者がいないと世間知らずゆえに騙されて殺されてしまうでござる!! だから保護してやっているでござるよ!!」


「誰が狐でおじゃるか!! この狸顔が!!」


「そちらこそ狐顔でござろうが!!」


 すると二人はいがみ合う。なぜか喧嘩を始めたのだ。ワイトはおろおろしている。

 そこにパルホが声をかけた。


「そんなに嫌いなら別れればいいのに」


「だめでおじゃる!!」「絶対にありえん!!」


 二人は仲良く声を合わせた。


「こやつを一人にすれば何をしでかすかわからんでおじゃる」


「左様!! 我が祖国の恥をさらさぬため、互いを監視しているのでござるよ!!」


 仲がいいのか悪いのか、ワイトとパルホは呆気にとられた。バガニルだけは微笑ましく見ていた。


「二人は仲がいいのか悪いのかわかりませんね」


「喧嘩するほど仲がいいということかしら」


 喧嘩を続ける二人を見て、姉弟はそう思うのだった。

 下ネタファンタジーには登場してませんが、彼等もキャコタ王国の革命騒ぎで参加していた冒険者です。

 ひどい名前ですが、下ネタファンタジーの世界なので普通だと思います。

 呪文もさらっと下ネタを入れておりますね。


 本日はここまで。明日からは毎日一遍ずつ投稿します。

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― 新着の感想 ―
[一言] お疲れ様です。 漢字で書くとかっこいいですね。
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