第四十五話 キョワナ・カモネチ
「ふぅ、疲れましたね。お昼の食事がおいしくなります」
昼休み、学園内の食堂でワイトとパルホは同じテーブルで食事を取っていた。授業が終わり、制服に着替えている。
ここの食堂は一度に300人は入れる広さがある。さらに厨房では世界各国の料理人が集まっており、様々な料理を楽しめた。宗教によって食べられないものもあり、生徒たちは自国の味を堪能できるのだ。
「まったくでござるな。特にこのカレーライスは最高でござる!!」
パルホは香高い野菜と肉を煮込んだ汁に白米をかけたものを食べていた。これはカレーライスと言う食べ物だ。
カモネチ王国で採れる香辛料を使ったスープを、キャコタが独自に改良したのだ。
本来はナンと呼ばれるパンと一緒に食べるのだが、シグマニ王国から輸入した米を炊いた白米にかけている。
本場のカレーは野菜のみだが、キャコタは魔獣の肉を入れている。もちろん肉なしでナンを添えた料理もある。
とても辛い食べ物だが、心地よい味わいであった。鼻が付く香辛料だがすっきりとした香りで、一度食べると止まらなくなる魅力がある。
「本当ね。サマドゾ王国では香辛料は高いから、このような料理は無理です」
「しかもここにはカレーを使ったかれーうどんに、豚カツを乗せたカツカレーに、新鮮な海の幸を入れたシーフードカレーなど種類が豊富でござる!! さすがはキャコタでござるな!!」
「しかもレトルト食品と言って、お湯で温めるだけで食べられるそうだから、キャコタの技術力は世界一と言っても過言ではないですね」
ワイトもカレーを食べながら感心していた。サマドゾ王国では固いパンに魔獣の肉、野菜スープに癖のあるチーズなどが主であった。あとは南方にあるタコイメの町から干し魚などがある。魔法で凍らせた新鮮な魚は月に一度しか食べられなかった。
サマドゾ王国は東にあるカホンワ王国以外通行できない。空飛ぶ城を使えばキャコタから様々な食べ物を運ぶことが出来るが、飛行の許可は滅多に下りないとゆう。
「まったくその通りだ。この国には学ぶことが山ほどあるぞ」
後ろから声がした。ワイトが振り向くとそこにはカラスの羽根のように美しい黒い長髪の美少年が立っていた。同じクラスメイトのドゴランである。
両手にはトレーを持っていた。皿に上には米料理が乗っている。香ばしい匂いがした。
「こいつはチャーハンというモコロシ王国の料理だ。俺の故郷に合わせて魚介類が多く甘く作られているな。他にも香辛料を多く使うサゴンク料理や、味が濃く塩辛いスコイデ料理もある。現地の料理人を雇っているし、さすがといったところだ」
ドゴランはワイトの左側に座る。別に許可していないのに、勝手に座った。特にワイトは気にしていない。
だが距離が近い。それをパルホがじっと見ていた。
「ドゴラン殿、男のワイトより、拙者の隣はいかがでござるか?」
「俺はワイトの隣がいいんだ」
ドゴランはバッサリと切り捨てた。パクパクとチャーハンを食べ始める。
ちなみに従者のケダンとナイメヌはいない。従者は食堂に入れない規則なのだ。生徒の中には従者の作る食事以外受け付けないものもいる。そちらは従者の作った弁当を持参していた。
「ワイト、俺の正室になればサマドゾ王国の料理人も呼んでいいぞ。むしろ使用人は何人いても構わん。彼等が一生過ごせるよう、家と結婚相手も用意する」
「私はまだ正室になるとは言ってません」
ワイトも負けずにきっぱりと言った。
「確かドゴラン殿はキャコタ王国のカシラ男爵の娘と婚姻していると聞いたでござる。そちらを無視してよいのでござるかな?」
「その人とは側室になることが決まっている。カシラ卿も正室を狙っておらん」
貴族にとって側室になることは珍しくない。というか義務である。貴族や王族は血族を残すことが重要視されるのだ。もちろん後継者争いが起きる可能性も高いが、それを制してこそ当主の素質が問われるのである。
「むぅ、拙者を側室にする気はないでござるか?」
「パルホ・サマドゾにはトナコツ王国の王子と婚約が決まっている。横槍を入れるわけにはいかんよ」
「それを言うならワイトもガベリン殿と婚約をしているでござるよ。そちらは大丈夫でござるか?」
「構わん。俺はガベリンも一緒に側室にする。すでに根回しも終えているしな」
「根回しってなんでござるか!! 一体いつからワイトの尻を狙っていたでござる!!」
パルホは急いでカレーを食べ終えると、ばんと立ち上がった。ワイトはパルホの発言に真っ赤になる。
「2年前だな。最初はワイトを俺の配下にする予定だった。だがワイトがこんなに美しくなったので正室にすることにしたのだ」
「じゃあ、私が男のままでもスカウトしていたことになりますね」
「当然だ。お前がサマドゾ王家の後継者から外れていたことは調べが付いている。魔女が初めて産んだ男は、才能の塊りだ。俺の直属の配下に相応しい」
ワイトは顔が青くなる。この男は自分のことを細かく知っていた。叔父でサマドゾ王国大使のサリョドから聞いたが、許嫁のガベリンの故郷であるヤソクウ王国では転移門を手土産に、ドゴランの国に嫁ぐことを約束させたらしい。
ドゴランの行動力はけた外れだ。とはいえ嫌味な感じはしない。王者としての風格と器を兼ね備えている。この男と一緒なら安心できるだろう。
ワイトがそう思っていると、背後から声をかけられた。
振り向くとそこにはこじんまりした背の低い少年が立っている。短い黒髪に肌が黒い。黒いハムスターのような愛らしい印象を受けた。
どこか木の弱そうな感じがする。
「初めまして。僕の名前はキョワナ・カモネチ。カモネチ王国第三王子で同学年です」
キョワナがぺこりと頭を下げるのだった。
モコロシ料理は上海料理がモデルです。上海ガニや八宝菜が有名です。
サゴンクは四川料理がモデルで、麻婆豆腐など香辛料を使います。
スコイデは山東料理で北京ダックやジャージャー麺、水餃子などがあります。
主に日本の四台中華料理がモデルですね。
最後は広東料理でふかひれスープやシューマイにチャーシュー、ワンタンがあります。
カモネチ王国はあまり意識してなかったのですが、インドをモデルにしました。基本的にドラクエ3のような大雑把な世界地図を意識しています。




