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第四十三話 キャコタの食糧事情

「ふわぁ、いい天気……」


 真っ白なベッドの上で、白髪の少女が起き上がった。花柄のパジャマに、髪の毛をまとめている。

 部屋の中は広く、洋服ダンスや机、テーブルや椅子、鏡台などが揃っていた。

 ちなみに少女ではなく、少年だ。女の子に見える男の娘である。


「もう一週間も過ぎたのね。早いものです」


 この部屋の主、ワイトは目をこすりながら起き上がった。まずは洗面所に行き、歯磨きをした後、洗顔をしなくてはならない。男だが肌のケアはするよう命じられているのだ。

 髪の毛もしっかりと梳く。手入れはきっちりとしなくてはならない。


 さてリビングダイニングでは侍女のナイメヌが朝食の用意をしていた。キッチンではガスレンジで調理をしているようだ。とてもいい匂いがする。

 テーブルの上には野菜サラダに、こんがり焼かれたパンが皿に乗っていた。これはナイメヌが買ってきた食パンというものらしい。

 ガラスのコップには牛乳が入っていた。

 やがてナイメヌが料理を持ってきた。こんがり焼いたベーコンに、目玉焼きを乗せたベーコンエッグである。キャコタ王国では一般家庭でよく食べるそうだ。

 焼いたパンはトースターという箱で焼いている。すべて魔導力で生まれた魔道具のおかげであった。


 ワイトは席に着き、食事を始める。ナイメヌも一緒だ。侍女だが食事は一緒に取るようにしている。


「……一週間過ぎたけど、ここの料理はすごいですね。これだけで一食300マイドにならないのでしょう?」


「100マイドを銅貨に直せば、3枚分ですね。食パンは6枚入りで100マイド、卵は10個で200マイド、ベーコンは200マイド、野菜サラダも200マイドですね。それも新鮮なものばかりです。他国なら王族以外は無理ですね。平民なら固いパンに塩漬けのキャベツ、味の薄い野菜スープしか口にできません」


「ここでの生活を味わうと自国へ戻ることは難しいでしょうね」


 ワイトはここでの食事を堪能していた。そもそも新鮮な野菜はもちろんだが、肉や魚も新鮮で安い。パンも毎日焼く必要はなく、日持ちするのだ。食べ物を冷凍保存する冷蔵庫に数多い保存食がある。世界各国の料理がレトルト食品や冷凍食品として安く提供できるそうだ。


「冒険者ギルドでは即席スープに缶詰など売ってますよ。まあキャコタを嫌う国だとそれすら輸入させないらしいですが、冒険者ギルドは無視してますね。ここの卒業生はここでの食事を自国で再現できなければ帰国しないと言い切るほどです。まあ、無理はないですね」


 ナイメヌは食事を続ける。ガスレンジは薪を必要とせず、火を発生できるものだ。火を調整して焼いたりできる。調理器具などがあり砂時計などで焼く時間を測ったりできた。職人がいなくても美味しい料理を作れるのである。


「ですがここ最近ワイト様とパルホ様は大変ですね。やたらと難癖をつける生徒のなんと多いことか」


 ナイメヌはため息をついた。入学式から一週間、ワイトとパルホは学校生活を送っていたが、ひどいものであった。

 毎日、ワイトたちに絡んでくるのだ。同級生たちはワイトが魔女の子孫だと言って勝負を挑んでくるのである。

 さらに2年生や3年生もワイトたちに喧嘩を売りまくっていた。それもドボチョン・ロックブマータとコブラツイスターズを引き合いに出していた。

 学園内は荒れていた。ワイトとパルホは難なくあしらい、同じクラスのドゴランも手伝ってくれた。中にはドゴランを憎んでいる者もおり、停学になった生徒は10人以上にも及んだ。


「魔女の子孫が嫌われていることはわかっていましたが、どこか異常ですね。沸点が異様なまでに低いです」


「私もサリョドお父様たちと冒険をしております。数多くの貴族や王族と出会いましたが、魔女に対してはあまり嫌悪感を抱いてませんでしたね。そもそも魔法を使うから魔女なんですよ。それに素人でも扱える魔道具が増えてます。魔女を蛇蝎に嫌う国は年々少なくなっていますね」


「親というか、国の教えでもないでしょうね。止めに入った大使様たちも真っ青になり、後日謝罪に来てましたもの」


 ワイトが口に手を当てて考え込む。問題を起こす生徒たちは全員頭がおかしくなったようにワイトたちに殴り掛かるのが多い。そしてワイトかパルホが気絶させると、その夜に大使が謝罪に来るのだ。

 ピロッキ王国やサゴンク王国、カモネチ王国やナーロッパ諸国の王国が多い。使熊荷シグマニ王国や遥か西方にあるカハワギ王国の生徒はまったく落ち着いたものである。


「ところでパルホは大丈夫でしょうか。ケダンが相手だと家事がめちゃくちゃという印象があります」


「安心してくださいワイト様。弟は冒険者として料理もできるし、家事もできます。そうでないと暮らしていけませんからね。ワイト様が関わらなければあいつは有能なのですよ」


「……その、ケダンは男の人が、好きなのでしょうか?」


 ナイメヌは首を思いっきり横に振った。


「あいつが好きなのはワイト様であって、男ではありませんよ。お父様たちとは違いますね」


 そうはっきり言いきった。さすがのワイトもケダンの好意には気づいている。しかしワイトは見かけは美少女でも心は男だ。ケダンの情熱は心地よいものがある。だからといって身も心もゆだねるのは躊躇しかねた。

 父親のサリョドは身体は男だが心は女である。ケダンたちにとってサリョドは母親なのだ。

 普通とは違う家庭で過ごしたため、ケダンは少し歪んだ性の認識がある。ただしナイメヌは健全だ。女の子は同年代の男子より精神が大人びている。

 

「まあ、すぐ答えを出す必要はないですよ。ここでの生活で自分の想いが熱病だと勘違いしてたことに気づけばいいんです」


 ナイメヌは斬って捨てる。さすがは双子の姉であった。

 ワイトもそうだよねと、無理やり自分を納得させて食事を続ける。

食事は重要だと思います。豊富な食生活こそが国の発展につながると思いますね。

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― 新着の感想 ―
[一言] 食事は重要ですよね。
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