第三十六話 クラスで自己紹介
「えー、私が一年・人組の担当であるキリョイ・カウゲスと申します。一年間どうぞよろしく」
教室の檀上で一人の男が挨拶した。すらりと背が高く、水色のつららのような長髪に氷のように真っ白な肌。黒ぶち眼鏡をかけており、白い上着と黒のズボンを履いていた。幽霊のように目を凝らさないと消えてしまいそうな印象がある。
教室には机が25脚並べられていた。縦と横に5脚ずつ並べられている。生徒たちは全員座っている。全員緑色のブレザーに赤いネクタイ、ライム色のズボンとスカートを履いていた。
ワイトは一番後ろで右端にいる。その横にパルホが座っていた。ドゴランは一番前の席で教師のキリョイと真正面の位置にいる。
「では自己紹介をしてもらいましょう。名前と出身国だけ言ってください」
キリョイの声はか細いが、なぜか耳の中に響く不思議な力があった。一番前の右の席から自己紹介を始めていく。
4人が挨拶すると、ワイトの番になった。ワイトは立ち上がると、白く腰まで波打った髪をかき上げると、凛とした声であいさつする。
「私はワイト・サマドゾと申します。サマドゾ王国から来ました。よろしくお願いいたします」
自己紹介が終わるとワイトはぺこりと頭を下げて座った。周囲の生徒たちはワイトの声に驚いている。ワイトが男であることは周知の事実だが、あらかじめ情報を得ていないと男とは気づかないほどだ。
4人ほど紹介が済むと今度はパルホの番である。パルホは短く切り揃えた髪に日焼けした肌が特徴的だ。きりっと立ち上がると、はきはきした声であいさつした。
「拙者の名はパルホ・サマドゾでござる!! サマドゾ王国出身で隣にいるワイトの双子の妹でござる。一年間よろしくお願いいたすで候!!」
ばっと勢い良く頭を下げると、椅子に座る。パルホは女性だが美少年に近い。クラスメイトの女子生徒たちは早くもパルホに魅了されている者も多かった。
次にドゴランの番である。カラスの羽根のように艶のある長髪に、美しくも冷たい印象のある美形だ。
「ドゴランだ。モコロシ王国から来た。凡人共に用はない、あるのは俺に相応しい嫁だけだ」
そう言ってドゴランは席に座る。なんとも傍若無人な態度であった。それでいて嫌味に聴こえない。全身に自信が満ち溢れており、ただものではない雰囲気を纏っている。あまりの迫力にドゴランを小馬鹿にする声は上がらなかった。
そうこうするうちに挨拶は終わる。そして再びキリョイが話し始めた。
「えー、講堂で学園長がおっしゃったように君たちはここで世の中の不条理を勉強してもらう。難しい技術などは後回しだ。ここに集まった君たちは君たちの母国において問題のある生徒たちを集めている。冒険者の階級で言えば中堅の蕾級だろう。だが実力が高い故に努力する気力が起きないかもしれない。だからこそ君たちには努力するための方法を学んでもらう。努力が報われるとは限らないが、大事なのは結果ではなく過程なのだよ。失敗を学び次に生かすことが大切なのです」
「ふん。王に失敗など許されない。努力など弱者の言い訳だ。真の王は才能を民の為に生かさなければ意味がない」
キリョイの言葉を否定したのはドゴランだ。冷たい刃物のような視線でキリョイを睨んでいる。普通の子供ならにらまれた途端小便をもらしてしまうかもしれない。
キリョイは枯れ木のように頼りなさげに見えるが、ドゴランの言葉を柳に風の如く流した。
「そんな王様は大抵自分の代で潰していくのだ。キャコタ王国は商業ギルドを通じてそんな国を見てきた。失敗を認めず、成功のみを追求し完璧以外を否定する。その結果国民は疲弊し逃げていくという。君の国はまさにそれかね? 君以外に国を動かせず、君が死ねば国は崩壊する。王として無責任ではないのかな?」
「だからこそ、有能な人材を発掘するのも王の仕事だ。俺の国にはすでに軍事や商業、行政を任せられる者たちがいる。俺がいなくても国は動くのだ」
ドゴランも負けてはいない。しかしドゴランの口調はどこか変だ。彼はモコロシ王国の王子だが、王ではない。それにキリョイの言い分ではドゴランは王であると示している。これはどういうことだろうか。
(……やはりドゴランさんは、王様なのですね)
(12歳で王様とはすごいでござるな)
ワイトとパルホはこっそりと話していた。念話のような物で前の席の生徒には聴こえていない。
二人が事前に聞いた話ではドゴランは一国の王だという。モコロシ王国とサゴンク王国、そしてスコイデ王国の中心部に国を作ったそうだ。本来は何もない不毛の地らしいが、五歳の時にドゴランのありふれる魔力で緑と水が豊かな国になったという。さらに銅や鉄、銀や黄金などの鉱石に恵まれているそうだ。
しかも国民はモコロシ、サゴンク、スコイデの人間が力を合わせているという。最初は山賊として敵対していたが、ドゴランが調略して部下にしたそうだ。各国の大物商人たちもドゴランの国と交易しているという。
(ドゴランさんを嫌っている人も中にはいるでしょうね)
ワイトがつぶやいた。このクラスにはモコロシ王国の貴族の他に、サゴンクやスコイデの貴族の子息もいる。彼等はドゴランに対して殺意の視線を向けていた。自分たちより有能な人間が気に喰わないのだ。そして資源が豊富なドゴランの国を乗っ取り、潰したいとも願っている。
彼等は隙を突いてドゴランの醜態を探し出すか、事故死に見せかけて暗殺するかを狙っているという。これは大使であり叔父であるサリョドから聞いた話だ。
(拙者たちも大概でござるが、ドゴラン殿も大変でござるな)
(もっとも本人はどこ吹く風みたいですけどね)
自信満々に腕を組むドゴランは自身に溢れていた。津波が起きてもどっしりと構えて物ともしない雰囲気がある。
ドゴランのモデルは、なろうにおけるチート王様ですね。五歳で国を作る作品があってもおかしくないです。
声は関智一さんを意識してもらえればいいと思います。
キリョイの方は子安武人さんがいいかもしれない。




