第三十一話 本国では偉いかもしれないけど 他国ではモブキャラだよね
「まったくこれだから田舎者は嫌いですわ。無知蒙昧で品がありませんもの!!」
ソヘタク・ズゥコはますます調子に乗っている。ワイトとパルホを気持ちよく罵って楽しんでいた。
取り巻きのデブとのっぽは囃し立てている。だが当のドゴランはソヘタクを無視していた。
「うるさいな。どこか静かなところで話さないか?」
「それはよろしいですが、もうじきクラス分けの発表があるはずです」
「ここを出るわけにはいかぬでござるよ」
三人はソヘタクを無視して話を進めた。ソヘタクの言葉などそよ風のように扱っている。
ソヘタクの顔は真っ赤になり醜く歪んだ。
「ちょっとお前たち!! なんでわたくしの玉音を無視するのですか!! お前たちがドゴラン様と口を交わすなど許されることではありません!! さっさと消えなさい!!」
「消えるのはお前だ」
ドゴランが口を開いた。短い言葉だが心臓に刃物を突き刺されたような錯覚になる。ソヘタクはひっと怯えて後ろに下がった。
「お前に用はない。消えろ」
ドゴランはぎろりとにらみつける。まるで蛇ににらまれたカエルのようだ。ソヘタクはへなへなと腰を抜かし、口をお玉杓子のようにパクパクさせていた。
「さぁみなしゃん。クラス分けを発表するでしゅよ。今壁に髪を張りましゅので、みんな確認してくだしゃい」
小太りの教師ネトブリが大声で生徒たちに言った。
ワイトたちはさっそく確認しに行った。
講堂の壁には様々な絵画の他に掲示板が張られており、そこに生徒の名前が書かれてあった。
クラスは木組、虫組、鳥組、人組に分かれている。
ワイトとパルホ、ドゴランは人組であった。ソヘタクは木組である。取り巻きは虫組になっていた。
これは食物連鎖を意識している。木は虫に食われ、虫は鳥に喰われ、鳥は人に喰われる。そして人が死ねば土に埋められ木の栄養となるのだ。人組だから一番偉いというわけではないのである。
「あらら、私もパルホと一緒ですか。なかなか離れることが出来ませんね」
「無理に離れる必要はないでござろう。時が来れば拙者たちは離れ離れになるでござるからな」
二人は表示された紙を見て話をしていた。だがソヘタクが癇癪を起している。
「きぃぃぃぃぃぃ!! なんでわたくしが一番最低な組なのですの!! しかもわたくしのしもべは別のクラスですし、ドゴラン様と離れるなんてありえませんわ!! 一体どんなインチキを使ったんですの!!」
「別に私はドゴランさんと一緒になりたいとは思ってません」
「というかクラス分けは学校が決めたことでござるから、学校に文句を言えばいいでござる」
ワイトとパルホはどこ吹く風だ。敵意剥き出しでも恐れることなく、きっぱりと言う。その態度に生徒の中には双子に対して好印象を抱いた。
逆にソヘタクは取り乱している。発情期の猫のように叫びまくっていた。とてもお姫様とは思えない態度に彼女の印象は悪化するばかりだ。もっとも彼女は周囲の目など一切無視しているが。
「きぇぇぇぇ!! 田舎者の猿の癖にわたくしに意見するなど許せませんわ!! そこのあなた!!
この目障りなくずどもをすぐここから叩きだしなさい!!」
ソヘタクは近くにいたネトブリに命令した。ズゥコ王国は先進国で、芸術の国だ。キャコタ王国は小さな島国の猿どもの集まりとソヘタクは思い込んでいた。自分の命令ならすぐ聞くと信じて疑わなかった。サマドゾ王国という2年しか歴史のない国など奴隷以下だと決めつけている。
「え? やるわけないでしゅよ。何馬鹿なことを言ってるんでしゅか?」
ネトブリは冷ややかな目で返した。
「そもそもこの学園において格差はありましぇん。相手がどんな国から来ても関係ないでしゅ。というか君のように差別意識の強い生徒はきっちり教育する必要がありましゅね」
「なっ、わたくしはズゥコ王国の王女ですわよ!! キャコタのような猿山の島国の蛮族は黙って言うことを聞きなさい!!」
ソヘタクの口からは罵詈雑言だけが飛び出ている。もう後先など考えていない。この学園に入学した生徒たちは各国の代表で来ているのだ。その証拠にズゥコ王国の大使らしい中年男性は焦っていた。
「やれやれでしゅね……。どうせなら君とパルホ・サマドゾしゃんと決闘をしてもらうでしゅ。それで白黒をつけるべきだと思いましゅね」
ネトブリは遠くにいるスワガラ学園長に目配せをする。獅子のような金髪を持つ巨体はどこにいても目立つ。学園長は首を縦に振って肯定した。
「というわけでしゅ。パルホしゃんにソヘタクしゃんは審判の女神像の元で決闘を行ってもらいましゅ。よろしいでしゅね?」
ネトブリはさっさと進行していく。
「構わんでござるよ」
「決闘で決められるなら大歓迎ですわ!! ただし決闘の方法はわたくしが決めます!! あなたたち例の物を持ってきなさい!!」
ソヘタクはデブとのっぽに命じると、二人は行動を出ていく。
「なんでパルホを名指しにしたのかな?」
「それはパルホは女だからな」
ワイトの疑問にドゴランが答えた。学園に来る前にキウノン・バデカスと決闘をしたが、男のワイトが応じている。
「でも大丈夫かな? 決闘方法を相手が選ぶなんて」
「双子の妹を心配しているのか?」
「いいえ、パルホを心配してません。相手の方が哀れだと思っただけです」
ワイトは凛とした口調で言い切った。長年一緒に過ごした双子の妹の勝利を微塵も疑っていない。
ドゴランはそれを見て、唇で薄く笑うのだった。




