表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/113

第二十九話 魔力測定は学園物ではよくあることですね

「初めまして皆さん。私はキャコタ王立学園学園長、スワガラ・ダイザフです」


 キャコタ王国王立学園の敷地内にある講堂で、ワイトたちは集まっていた。講堂と言っても入り口や柱などには見事な彫刻が施されている。さらに建築も無骨な作りではなく、花が咲いているような作りになっていた。なんでも芸術の国、ズゥコ王国の彫刻家であり冒険者であるワマレドの作品だという。

  講堂内は傾斜に段状で五段ほど椅子が並んでいる。そして正面にはステージがあり、一人の中年男性が立っていた。


 獅子のような金髪にがっしりした岩山のような体形であった。黒い服を身に付けているがはちきれんばかりであった。目つきは鋭く、鼻は大きく、口はへの字に曲がっていた。

 纏う雰囲気はまるで獣である。

 背後には学園長の絵画が飾られていた。本物以上に迫力があり、鋭い目を見続けていると、魂を鷲掴みされるきぶんになるだろう。この絵はズゥコ王国の冒険者にして画家のラガクキの作品だという。


 白く波のかかった髪を持つ男の娘ワイトと、日焼けした肌に美少年に見える少女パルホは学園長を見ていた。


「……遠くから見ても迫力がすごいですね」


「そうでござるな。剣を持っても勝てる気がしないでござるよ」


「それにしてもラガクキさんの絵もすごいですね」


「まったくでござるな。本物以上の迫力があるでござる」


 二人は小声で話していた。ちなみに使用人は背後に控えている。各国の大使も同じだ。

 

「この学園では世の中の厳しさをたっぷり教える場所です。あなたたちは母国では花よ蝶よと崇められ、周囲の人々は首を垂れていたでしょう。

 ですがここでは通用しません。時にはあなたたちのプライドを大きく傷つける出来事もあるでしょう。

 でも拳を振るうわけにはいきません、怒りを爆発させたら誘爆して周囲に迷惑をかけるかもしれません。

 だからこそこの学園があるのです。嫌なことや理不尽なことをやり過ごすことの大切さとやり方を学んでもらいます」


 そう言って学園長が頭を下げると、話は終わった。次に一人の男子生徒が上がってきた。

 青い髪を切り揃え、四角い眼鏡をかけている。なんとなく嫌味そうな感じだが、端正な顔立ちですらりとした長身を持つ。所謂ハンサムと言う奴だ。女の子にもてそうである。


「私は3年生で生徒会長のガベリン・ヤソクウだ。生徒会とは学園の代理として仕事を手伝う集団です。所謂社会の仕組みに一番近い場所ですね。

 ちなみに我が祖国のヤソクウ王国はゴスミテ王国の東にある小国です。周囲は山に囲まれ珍しい薬草がたくさんある以外まったく特産はありません。

 ですが成績は良いし事務処理能力を買われて生徒会長になりました。歴史が長いとか、国土が広いとか関係ありません。

 それと生徒会長は任期終了時に私が決めます。2年生から選ぶかもしれないし、1年生にするかもしれない。私の期待を応えてくれることを祈っているよ」


 そう言って頭を下げると、ガベリンは立ち去った。女子生徒が黄色い声を上げる一方で、男子生徒は嫉妬の目を向けている。それにヤソクウ王国が小国なのをいいことに見下している生徒もいた。

 実際は鉱石も豊富なのだが、あえてガベリンはそのことに触れなかったようだ。


「あの人が……」


「あれがワイトの許嫁でござるか。なかなかの男前でござるな」


 ワイトとパルホは小声で話した。他の人には一切聴こえない。二人だけの会話だ。


 そして教師の一人が出てきた。天然パーマの愛嬌がある丸く太った男だ。


「えー、みなしゃん。これからあなたたちは魔力測定をしてもらいましゅ。おっと、わたしゅの名前はネトブリでございましゅ。1年生の徒手格闘を担当してましゅ」


 そう言ってネトブリは職員たちに箱を運ばせた。そして中から薄汚れた球を取り出す。


「これが魔力測定器でしゅ。これを右手で数秒持つと赤く光るのでしゅ。その際に数字も浮かび上がる優れモノなのでしゅ」


 そう言ってネトブリは右手で球を持つ。すると球は赤く光り112と浮かび上がった。


「これがわたしゅの魔力数値でしゅ。みなしゃんは100人いましゅから、5列に並んでもらうでしゅ。測り終わったら後ろに下がってもらいましゅ」


 こうして生徒たちは5列に並ぶ。一人ずつ右手に球を持ち、数値が浮かび上がると、職員が用紙に記入した。大抵は120か100くらいの数値で収まっている。

 ドゴランの番になると、彼は右手に球を乗せる。するとばきっと音を立てて球が割れた。


「ドゴラン!! 測定不能!!」


 職員が叫ぶ。周囲の生徒たちも驚いた。だがネトブリは驚かない。


「長い教師生活で、測定不能の生徒などいくらでもいるでしゅ。そういう子は豊富な魔力に振り回されることが多いからじっくり学んでもらうでしゅ」


 さすがは王立学園の教師と言ったところか。次にパルホが測定すると、こちらも球が砕け散った。

 ドゴランより勢いがあった。けが人は幸いにも出ていない。


「おお、拙者も砕いてしまったでござるよ!!」


「ふむ。パルホ・サマドゾ。あなたは今力を込めたでしゅね? 必要以上の魔力を流すのはやめてほしいでしゅ」


「むぅ、ばれてしまったでござるか。申し訳ない!!」


 ネトブリに注意されパルホは素直に謝った。

 次にワイトの番だ。こちらは右手に球を乗せてもうんともすんとも言わない。


「こっこれは魔力ゼロか!!」


 職員が驚いた。周囲の生徒たちも魔力ゼロに驚いているが、すぐに侮蔑の声が上がった。


「けっ、魔力ゼロだとよ。とんだ落ちこぼれだな!!」「そんな出来損ないはこの学園から出てけよ!!」「そうだそうだ!! お前みたいなクズがいるとクズがうつっちまうよ!!」


 揶揄する声が上がってもワイトは平然としていた。だがネトブリはぎろりとにらみつける。すると生徒たちは猫ににらまれたネズミのように縮まった。


「人の悪口を言うのは感心しないでしゅよ?」


 愛嬌のある顔立ちだが、にらみつける目は氷のように冷たい。心臓を鷲掴みにされた気分になる。


「さてワイト・サマドゾ。君は魔力を遮断したでしゅね? 魔力ゼロなどこの世にありえないのでしゅ。人間や動物はもちろんのこと、木や草、石などあらゆるものに魔力は宿るのでしゅ。魔力ゼロは意図的に遮断しない限りありえないのでしゅよ。恐らく自分が魔女の息子だから魔力ゼロになれば落ちこぼれ扱いされると思ったのでしゅか? 残念でしゅが前例がいましゅ。あなたの母親バガニル・サマドゾ、そして祖母のハァクイ・ゴマウンでしゅ」


 なんとワイトは母と祖母と同じことをしていたのか。ワイトはなぜか嬉しくなった。

ネトブリは一見にぶそうにみえて、実は鋭いという設定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 一筋縄ではいかない一族ですが、先生も先刻承知でしたね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ