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第二十八話 変わり果てたキウノン

「ボク、キウノン・バデカスです。どうぞよろしく」


 キウノンは気絶した後、記憶を失っていた。正確には以前の人格から大きくかけ離れていたのだ。目を覚ますとすっかりおとなしい性格になっていた。これにはバデカス王国の大使も驚いていた。


「あなたはワイト・サマドゾをご存じですか?」


「はい、知っています。ボクは決闘に負けました」


 教諭のキリョイがワイトの事を尋ねると、キウノンはよどみなく答えた。落ち着いた言動である。ワイトに対する憎しみは一切感じられなかった。


「彼には迷惑をかけました。謝罪したいですがもう無理ですね」


「確かにそうですが、あなたの気持ちはワイト・サマドゾに伝えておきますので安心してください」


 キウノンがしょんぼりしているとキリョイが慰める。

 それを遠目でワイトたちが見ていた。ケダンは怪訝そうな顔でキウノンを見ている。


「なんだよあいつ、一体どうしちまったんだ?」


「恐らく魂に刻まれた盟約を強引に破ろうとしたのだ。それ故に元ある人格が壊されてしまったのだろう。今のあ奴はおとなしい性格の人格に入れ替わったのだろうな。記憶は共有しているようだ」


 ドゴランが答えた。


「うむ。哀れでござるな。しかし先ほどのような人に迷惑をかけるよりましでござるよ」


「……」


 パルホが言うと、ワイトは黙っていた。何やら考え込んでいるようだ。


「なんだよワイト。お前何を考えているんだ?」


「……、あのキウノンさん。似ているなと思ったの」


 ケダンが訊ねるとワイトが答えた。一体何に似ているんだと尋ねようとしたらドゴランが答えた。


「お前はこう言いたいのだろう。あの男の言動はミドノリに似ていると」


「ミドノリ? 誰だよそいつは?」


「ドボチョン・ロックブマータとコブラツイスターズに出てくる登場人物の一人ですよ。植物を自在に操り、植物を鎧にして戦う大男のことです」


 ワイトが代わりに応えた。ミドノリとはロックブマータの仲間の一人だ。大男で怪力の持ち主だが、植物を自在に操る力を持っている。

 ところがこの男は自己中心的で自分の思い通りにならないと気が済まない性格だった。少しでも自分のことを悪く言われると腹を立て決闘を申し込む。その癖自分がまけたら相手を非難し、自分が勝つまで決闘を繰り返す卑劣漢であった。

 

「あらら。キウノンさんはミドノリに似てますねぇ。植物は操ってないけど」


 ナイメヌが笑いながら答えた。相手を皮肉っているのだろう。


「恐らく彼はロックブマータの読書ですね。先ほども引き合いに出してましたから。余程好きなんでしょうね」


「いくら好きと言ってもほどがあります。一体彼の国ではどういう教育を受けているのでしょうか?」


 ワイトが言った。自分も読書は好きだ。サマドゾ王国でも子供向ジュヴナイルけの本はある。戦士の少年が魔族の少女と仲良くなる話だ。だが二人は異なる種族故に結ばれない。結局二人は別れ別れになったが、自分たちの世界を守ると誓い合ったのだ。


 それと比べるとドボチョン・ロックブマータは子供向けとは思えない。主人公は確かに悩むことは多いが、やたらと切れやすく自分の思い通りにならないと癇癪を起してばかりだ。


「俺もバデカス王国の事は知らないな。だが閉鎖的な国風と聞いている。外国の本を積極的に読むとは思えないがな。そもそもキウノンをここに入学させたのは息子が問題を起こして退学になり、王位継承権から外すつもりだと聞いているがね」


 ドゴランが教えてくれた。一体誰から聞いたのか謎である。しかしバデカス王家は息子が問題を起こすと理解して学園に入学させたのか。あまりにもひどい話である。もっともキャコタと同盟を結びたくても、家臣たちが認めない場合が多い。そのため自分の子供を罠に嵌めて陥れることがあるのだ。


「さぁ、皆さん。色々ありましたがバスに乗ってください」


 キリョイはみんなを呼びかける。キウノンはおとなしくバスに乗った。

 ワイトたちもバスに乗る。森の中を走ると、門が見えた。周囲は鉄格子で覆われている。

 門番は茶色い制服を着ており制帽をかぶっていた。バスの運転手から許可書の提示を求める。

 そして複数の門番たちがバスを調べ始めた。やがて調べが終わると門が開いた。


 数分走ると校舎が見えた。青い三角屋根に白い壁。ガラス窓がずらりと並んでいた。下手な城よりも大きい。


「あれは100年前にダイザフ侯爵が建てたものです。修繕は繰り返してますが今でも通用しますよ」


 キリョイが説明する。ワイトとケダンはその様子を窓の外で見ていた。


「すごいですね。サマドゾ王国でもここまで立派ではありませんよ」


「ああ、俺も初めて見たがすごいもんだぜ」


「うむ、3年間あの校舎で拙者たちは学ぶのでござるな。楽しみでござるよ」


「うふふ。メイドと執事の私たちは一緒に学べませんが、別の意味で知識を得る機会がありますね」


 パルホとナイメヌも感心して見ていた。

 その様子を後ろの席でドゴランが見つめている。



「さすがデスネ。数年前にも会いましたが、二人は成長してマス」


「ええ、二人はマヨゾリ兄さまとバガニル義姉さんに鍛えられましたからね。そこら辺のバド級やスプラウト級の冒険者では敵わないわ」


 大使たちの乗るバスで、一番後ろの席でエスロギとサリョドが話をしていた。エスロギの隣には三頭のパンダ、サリョドの隣には犬耳青年となった黒スーツを着たアルジサマが座っていた。


「でも、ワイト速攻で目に付けられた。やっぱり魔女の子は騒動の元だな」


「それでもあのバデカス王国の王子はどこか馬鹿すぎる。まるで操られたみたいだ」


「しかもドボロクの登場人物になり切ってた。あの本がそんなに面白いとは思えない」


 なんとパンダたちはしゃべっていた。普段は無口だが重要人物のいる場所では平気でしゃべっている。バスの中には各国の大使たちもいるが、彼等はパンダたちの秘密を知っているので問題はない。


「……国によっては今でも魔女を蛇蝎の如く嫌っています。魔女の子孫を受け入れるキャコタ王国に戦争を仕掛けたいと思っている国もありますね。我々がワイト様とパルホ様を守らないといけません」


 アルジサマも眼鏡をかけなおして、気を引き締める。


「マア、それはよいのデス。ですがうちの弟がワイトに目をかけたようですネ」


 エスロギがため息をついた。


「確かドゴランさんは……」


「……アイツもアイツで問題が山積みなのデス。はっきり言って傲慢の塊りですカラ、双子たちより学園をひっかきまわすデス。今から胃がキリキリ痛み出しマス」


 そう言ってエスロギはお腹をさすった。それを見てサリョドはご愁傷様と声をかけるだけであった。

 今更ですが空飛ぶ城のモデルはスーパーファミコンのゲーム、mother2のスカイウォーカーですね。

 

 mother2は発売日に買ってプレイしました。音楽がとてもいいのですよ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 悩みは尽きないようですね。
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