第二十二話 キャコタ王国とは何か
「まずはキャコタ王国の成り立ちについて教えましょう」
空飛ぶ城にある居間で執事服を着たアルジサマが、ワイトとパルホに説明していた。
部屋の中はソファーが二脚、長テーブルを挟んでいる。ワイトとパルホは二人で座っており、対面にはアルジサマと大使であるサリョドが座っていた。アルジサマは細身だが、サリョドは筋肉隆々でソファーが狭く感じられた。
「1000年前に滅んだアマゾオ王国の王子キャコタが最初に作りました。当時は大地が繋がっておりましたが、海の大魔王シオフ=イテルによって大地は海に沈み、孤島と化したのです」
シオフ=イテルはキャコタの血筋と盟約を交わしていた。ところがキャコタの子孫が周辺に悪さをし始めたので怒り狂って周辺の大地を海に沈めてしまったそうである。
その間は同族同士で食料や女を奪い合い、殺伐とした時代が続いたそうだ。まともになったのは今から500年前だという。
「ですがキャコタの血族は諦めたりしませんでした。足りない資源は他国の技術を取り入れて、自国の糧にしたのです。その結果でキャコタは世界一の技術大国へ成長したのですよ」
アルジサマは眼鏡をかけており、くいっと眼鏡を直す。ワイトとパルホは一年前に彼と会っている。以前は少年に見えたが今は立派な青年に見える。たった一年で見違えるほど変化したことに驚いていた。
「現在のキャコタの国王はキョヤス一世様です。弱冠28歳ですが一年前に王位に即位したのですよ」
「確か一年前にキャコタ王国で革命を起こしたと聞きます」
「それはキョヤス陛下の仕業ではありません。陛下を忌み嫌う愚かな貴族が、陛下を陥れるために行ったのです。元々前国王ゴキョイン殿下はキョヤス陛下に王位を譲るつもりでした。これ以上放置してキョヤス陛下に危害が加えられる前に、王位を譲ったのです」
ワイトの質問にアルジサマが答えた。国の未来に憂いるならともかく個人的感情を優先したのだ。貴族の面汚しである。
「お二人の通う学校はキャコタ王立学園です。スワガラ・ダイザフ侯爵が管理しております。スワガラ卿は学園長を務めております」
「侯爵が学園長でござるか。魔法使いとかではないのでござるな」
「ダザイフ侯爵の名を使って魔法使いから元政治家を雇っております。それに王立学園には世界各国の子息子女が通っているので、侯爵ほどの実力者でなければならないのですよ」
パルホが質問するとアルジサマが返す。確かに貴族や王族の子供を預かるのだ。王族に近い侯爵家でなければ務まらないだろう。
「俺たちはキャコタによく行くがあそこは冒険者が住むにはきつすぎるぜ」
壁に背を向けているケダンが言った。
「あそこは快適すぎる。奇麗な水がじゃ口をひねれば出るし、火も簡単につく。夜は昼間のような光に見ているんだ。それに飯もうまいし安い。冒険者にとっては毒まみれの国だぜ」
「大げさじゃないよ。ケダンの言葉は本当だよ。下手すればキャコタから出られなくなっちゃうから」
ケダンの双子の姉であるナイメヌが答えた。二人は冒険者として活躍している。森や砂漠など過酷な環境を何日も過ごしていたことがあった。
さらに危険な魔獣にも命を狙われたことは一度や二度ではない。そんな二人にとってキャコタ王国の生活は下手をすれば中毒になってしまうという。
ワイトとパルホは興味津々だが、逆にキャコタ王国に対して恐れを抱いていた。
「オホホホホ。二人とも気を張らなくていいわよ。技術を見せつけるのではなく、使い方を学ぶところなんだからね」
サリョドが笑いながら答えた。
「キャコタ王国は魔導力を使った技術が多いけど、それを使わないやり方もあるのよ。水車や風力を利用すれば空気冷媒熱交換器というものが作れるわ。これがあれば冷蔵庫というものが出来て食べ物の保存が可能なのよ。技術と言うのは魔導力があればいいわけではないわ。その国、その場にあう技術を使い分けるのが大事なのよ」
「確かうちの城にある水車小屋はそういう意味があったのですね」
「腐りやすい肉が何日も持つのは素晴らしいでござるな!!」
説明を聞いたワイトとパルホは興奮していた。魔導力発電所が建設されればさらに生活は便利になるだろう。もちろん便利なだけではだめだ。あくまで生活の手伝いをするのが、技術なのである。
ワイトとパルホはサマドゾ王国には帰らない。しかし学んだ知識は生かせると思った。
「気を付けるのは他国の生徒ね。誰もが真面目に勉学を励む子ばかりじゃないの。キャコタ王国だけでなく他国を見下すのが大好きな子も多いのよ」
「特にお二人は狙われやすいですね。サマドゾ王国は建国されて2年しか経ってませんから」
サリョドとアルジサマはため息をついた。サマドゾ王国は今は亡きゴマウン帝国から領地を任され100年くらいは経っている。世の中には年月を重ねれば偉いと思い込む馬鹿は多いらしい。
「問題ありません。そんな人たちなど気にしませんから」
「大事なのは年月ではなく、中身でござるよ!!」
ワイトとパルホは決意を固めるのであった。
「ワイトを傷つけるやつは俺が片っ端からかみ殺してやるぜ!!」
「こらこら、かみ殺したら国際問題になるわよ。それにあなたが守るのはパルホ、間違えちゃだめよ」
ケダンは拳を握りしめて誓うが、ナイメヌが突っ込みを入れた。
「ケダンは拙者が嫌いでござるか?」
「嫌いじゃないよ。お前は友達だと思っているさ。けどワイトがいじめられるなんて我慢ならねぇよ」
「いや拙者もいじめられる可能性が高いと思うでござるよ。」
パルホが窘めるがケダンの頭の中はワイトでいっぱいだ。
それを見てサリョドとアルジサマはため息をついた。だがワイトはそれを微笑ましく見ている。




