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第二十一話 旅立ちの日

「ワイト様~、パルホ様~♪ いってらっしゃ~~い!!」


 昼間のサマドゾ王国の領都では大いににぎわっていた。銀色の球体の城にキャコタ王立学園の制服を着たワイトとパルホが立っている。

 ワイトはスカートを、パルホはズボンを履いていた。ワイトは足がすらりと長く、腰回りも細い。

 パルホはがっしりとした体格で、美少女よりも美少年に近かった。


 国民にとって二人はアイドルみたいなものだ。偉大なる国王マヨゾリと、賢明なバガニルの間に生まれた子供。無能であるはずがないし、何より愛らしい双子を白い二粒の真珠と呼ばれていた。

 

 その様子を犬耳執事の少年ケダンが後ろで見守っていた。腕を組み、ワイトを睨んでいる。

 いや、騒ぎ立てる民衆に対してだ。

 男たちはワイトのスカートの中身を見ようと、がぶりついていた。スカートは短く、下手をすれば下着が見えてしまう。

 ワイトは意識しているのか、いないのか。スカートを押さえるつもりがないようだ。


 ケダンはそれを見ているとイライラしてくる。男たちの助平そうな顔を見ると殺意が湧いてきた。すぐに獣人化して八つ裂きにしたくなる気分になる。


「ケダン、だめだよ」


 ケダンの右腹を突かれる。犬耳メイドで双子の姉であるナイメヌだ。

 彼女は精神的に大人である。心を乱される弟に対して注意をしていた。


「ワイトは男なんだからね。彼等は面白半分で下着をのぞき、股間が膨らんでいるか確かめたいだけさ」


「……それが気に喰わないんだよ」


 ケダンは目を血走らせている。額には血管が浮き出ていた。

 彼は冒険者時代から狂犬として恐れられている。父親の一人であるアルジサマよりは弱いが、どんな強い相手にも立ち向かうことで有名であった。


 家族以外に心を許したことはなく、家族に手を出した者は容赦なく牙を剥いた。

 そんな彼が心を許したのはワイトだけである。パルホはワイトの妹だが少ししか認めていない。あとは自分より強い冒険者は認めていた。


「くそっ!! ワイトの奴なんで生足を剥き出しにしているんだよ!! スカートも短いし、あいつの白い下着が丸見えになるじゃないか!! ああ、イライラする。俺以外の男がワイトを見るなんてむかつくぜ!!」


 それを聞いたナイメヌはほほ笑んだ。


「まったくあなたは素直じゃないわね。思い切ってワイトに告白したらどうなのさ?」


「ばっ、馬鹿野郎!! ワイトは男だぞ!! それにいとこ同士じゃないか!!」


「いとこ同士でもいいじゃないのよさ。特にワイトは見た目も中身もいい女だよ。あれは男だと知っても愛を囁かれる性質と見たね」


 ナイメヌはにししと口元に右手を当てて笑っている。弟をからかっているのだ。

 しかし本人は頭に血が上っているので気づいていない。


「ふむ、あれほどの美貌なら権力を持ったエロ親父の餌食になりそうだね。裸にされて首輪を繋がれて、毎晩ベッドの上でハッスルハッスル……」


 ワイトが裸にされる。一糸まとわぬ裸体をヒヒ親父の舐めるような視線を浴びる。

 そして首輪をつけられ、ひもを引っ張られる。

 男根のように太い指がワイトの身体を揉みしだく。ヒルのような舌がワイトを舐め尽くす。


 うがぁぁぁぁぁぁぁ!!


 ケダンが吠えた。

 想像して頭に血が上ったのだ。

 あまりにも大きな声なのでみんなケダンの方を見た。ワイトとパルホも驚いている。


「こらケダン。静かにしなさい」


 こつんとケダンの頭を叩かれた。相手は父親の一人であるサリョドだ。山のような大男だが、母親の如く慈愛に満ちた心を持っている。


「ワイト様、パルホ様。愚息の方が、ご迷惑をかけましたが、お気になさらずに」


 サリョドはウインクした。


「……ケダン、無理してはだめよ」


「緊張するのはわかるが、しっかり休むがいいでござるよ!!」


 二人はケダンをねぎらった。それを聞くとケダンはなんともいたたまれない気持ちになる。


 さてマヨゾリとバガニルも子供たちに別れの挨拶を済ませる。赤ちゃんのムスコスも手を振っていた。

 城の中に入ろうとすると、突如大声がした。男たちが数人斧や棍棒などの武器を持って走ってきたのだ。モヒカン頭に筋肉ムキムキで傷だらけだった。


「ワイト様とパルホ様を城にいれるなぁぁぁぁぁ!!」


「二人はもうサマドゾ王国に帰ってこないんだよぉぉぉぉぉぉ!!」


「二粒の真珠を外国に捨てるなんてとんでもないぞぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」


 どうやら二人が永遠に帰ってこないことを知っているようだ。

 彼等は二人を神格視していた。領内での暴力行為や略奪行為を二人のためと正当化していた。

 要は二人の名を借りて悪事を楽しみたいだけである。しかも自分たちは正しいと信じ切っている。

 狂信者と恐れられ、蛇蝎の如く嫌われていた。


 ケダンがワイトたちを守ろうと前に出ようとするが、ナイメヌが前に出た。

 そして唾を吐く。その唾は男たちの額を打ち抜いた。


「うげっ!!」「うがっ!!」「ぎがっちょ!!」


 唾呪文ペッペといい、唾を吐くことで相手を打ち抜く威力を持っていた。

 唾事態に魔力を込めることで、鉛のような硬さが生じる。


 男たちは白目を剥き、舌をべろべろ出した後倒れた。全員額から血が流れているが、気絶しているだけだ。


「大丈夫でしょうか?」


「さすがはナイメヌでござるな。見事な唾呪文でござった!!」


 ワイトとパルホは感心しているが、ナイメヌは何でもない様子である。


「さぁ入りましょう」


 ナイメヌはそう言ってワイトたちを城の中へ入れたのであった。

 騒ぎを起こした男たちはすぐさま牢屋に入れられた。彼等はワイトとパルホのためだと無実を主張したが聞き入れられず、全員ハボラテで奴隷として一生働かされるはめになったという。彼等はひと月も経たずに自殺したそうだ。怠けることもできず、弱い者いじめもできない環境で、彼等は狂ったのである。


 男たちの最後はサマドゾ王国で宣伝される。それ以来ワイトたちをダシにして悪事をするものは少なくなり、容赦なく罰則を与えられるようになった。

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― 新着の感想 ―
[一言] ナイメヌはしっかりしてますね。 意地悪なところもありますが。
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