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第二十話 マジッサ王国 裸の王様

 マジッサ王国では兵士をかき集められていた。魔女を褒める国を片っ端から滅ぼすためだ。

 マジッサ王国の国王キガチィ40世は狂人であった。彼はマジッサ王国が世界一と思い込んでおり、すべてはクズと見下していた。

 2年前に光の神ヒルカと闇の女神ヤルミがこの世界から去った。マジッサ王国の英雄神ロックブマータの両親だ。神を追い出したのは魔女の一族と決めつけている。理由は自分が決めたのだから間違いないという自分勝手なものだ。


 まったく理由になっていないが、狂人に常識を求めるのは間違いだ。


 とある寒村の広場に兵士たちが数人集まっている。そして大声で兵士たちを募集していた。

 周囲は麦畑が広がっていた。すでに麦刈りは終わっている。


「マジッサ王国は近々カモネチ王国を攻める!! そこからすべての女を犯し、金品を強奪し、王族たちを踏みにじるのだ!! その快感をお前たちにも味合わせてやる!! 男たちは全員兵士になれ!! でないと村を焼き払うぞ!!」


 募集ではなく脅迫であった。村人たちは難色を示していた。当たり前だろう、誰でも戦争などしたくない。貴族は戦争に参加しても領地の運営に問題はないが、平民は仕事ができず無収入だ。褒美などはない、逆に略奪などが収入になる。だが小さな村ならともかく国を相手にするのは難しい。


「なんだ行きたくないのか!! ならいいぞ!!」


 兵士たちは村人の言葉など聞かずあっさりと帰っていった。村人たちまったく気にも留めていない。兵士を集めていたのに、あっさり諦めたのはなぜか?


「村長、あれはいったいなんですか?」


 十代後半の男性が、年配の老人に声をかけた。彼はこの村の村長で背筋をピンとしている。目つきは鋭く顔つきは険しい。


「あれは振りだよ。彼等は王国軍だが、我々を無理やり連れていくつもりはない。王様には王都で槍を持たせた平民を立たせるだけだな」


「王都では嫌なうわさしか聞きませんが、実際この国は何なのでしょうか?」


 村人は不安になる。彼等は国はおろか村を出ることは少ない。生活は厳しいが普通に暮らせている。50年ごとに王家がごっそり入れ替わるくらいで平和なものだと、村の老人たちから聞いたことがあった。

 病気や災害などはその土地を治める領主の仕事である。そもそも国と言ってもすべてが王家の土地ではない。各地に収める領主がいる。領主は国に税金を納め、有事が起きたら兵を出すのが義務だ。


「この国は2000年続いていると言われているが、実際は50年も持たない国なのさ。気に喰わない王様の一族を皆殺しにするの繰り返しだよ。連中は儂らの生活などどうでもいいと思っている。王都の生活以外まったく興味がないのだよ。王様がいくら入れ替わろうと、儂らのような農民を皆殺しには出来ん。労働力を潰すのは馬鹿しかおらんよ。そんな馬鹿が領主になったらこちらが逃げればいいからな」


 村長は涼しい顔をしている。村人は学はないがしたたかだ。代官が年貢を徴収しようとしても馬鹿正直にすべてを出さない。便所や馬小屋に隠すなど朝飯前だ。

 それに盗賊が来ても村人が一致団結すれば鍬を使ってリンチにする。農民が無力なのは物語だけだ。案外しぶとくもずるいのである。


「それよりも今年のコブラツイスターズ祭りはどうしようか。戦争を起こすから」


 村人は不安そうだ。コブラツイスターズとは毒蛇をひねり殺す勇者たちのことをいう。

 マジッサ王国では毒蛇が多い。その毒蛇をただ鉈で首を刎ねるのではなく、素手でひねり殺すことは勇者の証であった。

 祭りでは毒蛇をどれだけひねり殺すかを決める。年に一度の毒蛇退治という意味合いがあった。


「構わんさ。兵士様は特に祭りを禁止にしろとは言っていないからな。はっはっは!!」


 村長は笑っていた。村人も釣られて笑う。


 ☆


「うけけけけけ!! ヒアルドンよ、兵隊の集まり具合はどうじゃ!!」


 キガチィ40世は王座に座りながら酒をがぶ飲みしながら、げらげら笑っている。枯れ木のような老人が狂ったように不気味な笑顔を浮かべて、足をバタバタさせていた。

 その横には宰相ヒアルドンが立っている。禿げ上がった冴えない中年男性だ。立派な赤い貴族の服が似合っていない。服に着せられているようだ。


「はい。兵士たちは順調に集まっております。逆らう者は村ごと焼き、女は奴隷として連れてきております。カモネチ王国襲撃には十分な兵力は集まっておりまする」


 そう言ってヒアルドンはバルコニーに案内する。下は何万人の兵士たちが雄たけびを上げていた。

 声の大渦でぴりぴりと震えてくる。

 それを見たキガチィはにっこりと笑う。


「でかしたぞヒアルドン!! これだけの兵力があればカモネチ王国は余にひれ伏すに違いない!! じゃが、もっとじゃ!! もっとありったけの兵士を集めるのじゃ!!」


 キガチィはさらに浴びるように酒を飲む。彼は国民の生活などどうでもいいのだ。自分の生活が大事で他の事には全く興味がない。国王になってはならない人種である。そしてそれを止めない家臣たちも猛毒であった。


 そしてバルコニーから奥に戻ると兵士たちは叫ぶのをやめる。


「ふぅ、終わった終った」「手間賃をもらえるのはいいけど叫ぶのは疲れるな」「帰って寝るかね」


 兵士たちに扮した王都の民はあっさりとしたものだ。国王の敬意などまったくない。

 キガチィは裸の王様であった。世界は自分を中心に回っていると思い込んでいる愚者なのだ。

 マジッサ王国を真に支配しているのは宰相ヒアルドンである。

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― 新着の感想 ―
[一言] 今の世の中でも似たようなことがありそうです。
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