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第十五話 制服のお披露目

「これが王立学園の制服ですか」


 サマドゾ王国の城にあるドレッサールームで、ワイトは王立学園の制服を着ていた。緑色のブレザーに赤いネクタイ、ライム色のスカートを履いている。

 胸はぶかぶかだが、それ以外は似合っている。白く長い波を打つような髪をなびかせており、体つきは女性と見間違いそうだ。


「スカートがスースーしますね。男なのにスカートを着るなんて他の人は気持ち悪がるでしょうに……」


 ワイトは頬を染め、怪訝な顔になる。傍には母親のバガニルと、キャコタ王国の大使モッニも控えていた。


「……我が息子ながら、女子の制服がここまで似合うとは思いませんでした」


「せやろ? それにパルホはんも見なはれ」


 モッニが言うと、パルホの方も緑色のブレザーに赤いネクタイ、ライム色のズボンを履いている。

 短く切り揃えた黒髪にがっしりとした体格で堂々としていた。不敵な笑みは女性の心をつかむだろう。まさに美少年であった。


「ふぅ、動きやすくていいでござるな!! 大使殿に感謝でござるぞ!!」


 パルホは男子の制服にご満悦であった。今の彼女は年下の女性にもてるであろう。


「……パルホはおてんばというより、男装の麗人に見えますわね。いえ、元々女の子にしてはやんちゃが過ぎましたが……」


 やんちゃと言ってもパルホは貴婦人の修行を怠ってはいなかった。そもそもパルホは女性として政略結婚も辞さない覚悟も持っている。

 これはワイトも同じだ。女性に見えるが、女性になり切っているわけではない。しかし女性らしいふるまいをするように命じれば素直に従う。その姿はまったく不自然には見えない。生まれ落ちた時から深窓の令嬢であったと言われても疑う人間はいないだろう。


「……なんといいますか、ワイトはんは3年生の頃のバガニル王妃そっくりでんな。逆にパルホはんは3年生のマヨゾリ陛下そっくりや」


 モッニは若い頃の二人を知っている。もっとも3年限定なのは、理由がある。バガニルは入学当時はおてんばで名を馳せていた。学園ではいつも問題を起こしていた。弱い者いじめを楽しむ三年生たちを殴り倒したり、意地悪な同級生の女子に対して、裸にして剥くなど悪行の数々を行っていたという。

 祖母でありブカッタ教の最高指導者であり、祖母であるキッタモマの行儀見習いで今に至るそうだ。その時のことはバガニルにとって、サーカスの猛獣みたいに躾けられたと暗い顔になる。


「こりゃあ、お二人は異性になりたいゆうより、バガニル陛下とマヨゾリ陛下になりたいと思っておりまんな。普通は親と比べられたら不機嫌になるもんやけど、二人はむしろそいつを誇りと思っていまっせ」


 そうワイトはバガニルに似て魔法を使いこなす。逆にパルホは父親のマヨゾリと同じで武芸に秀でていた。


「……ワイトはヤソクウ王国の王女と婚約しております。こちらは問題ないですね」


「ああ、あの国の王女はんでっか。納得ですわ」


 なぜかバガニルはワイトの婚約者に対して問題視はしていなかった。モッニも納得している。


「ところで私たちはいつキャコタへ向かうのでしょうか?」


「城ではそんな様子が見えないでござるよ」


 双子は疑問を呈した。この手の王族が他国へ旅立つときはそれなりに準備が必要になる。従者も百人では効かない。荷物の数もさながら、従者たちの荷物も必要だ。

 それなのに城内ではその様子が一切なかった。あるのは銀色の球体みたいな家を作っているだけである。


「あなたたちはあの球体でキャコタ王国へ向かうのよ」


 野太い男の声だがどこかしなを作った感じがする。ワイトたちが振り向くとそこには大男が立っていた。筋肉隆々で岩のような肌に黒いジャケットに赤い襷のような刺繍が施されている。他にも金の細工が施されていた。


 それと子牛ほど大きい銀色の狼を連れていた。さらに右には12歳の男の子、左には同じく12歳の女の子が立っていた。男の子は執事服、女の子はメイド服を着ている。銀髪で頭から犬の耳、お尻には尻尾が生えていた。


「「サリョド叔父様!!」」


 双子は一斉に声を上げた。大男の正体はサリョド・サマドゾ。マヨゾリ・サマドゾの弟である。サリョドは屈強な身体付きだがオカマであった。黒髪をリーゼントで決めており、頬はうっすらと化粧をしており、唇は口紅をつけていた。


「それにケダンとナイメヌ!! 二人ともひさしぶりでござるな!!」


「ご無沙汰しておりますパルホ様」「今回はお二人の従者としてついていくことになりました」


 ケダンとナイメヌがぺこりと頭を下げる。二人はサリョドの双子の子供であった。銀色の狼アルジサマとの間で子を成したのである。アルジサマは黄金獣という魔獣よりも上位の存在だ。オスだがサリョドが子供を産んでいる。


「叔父様、二人が私たちの従者になるということは、叔父様が大使になるのですか?」


「その通りよ。兄さんと義姉さんに頼まれたら嫌とは言えないからね。もっとも可愛いあなたたちを他の誰かに任せるつもりはないわ」


 サリョドは冒険者である。アルジサマに、ケダンとナイメヌで世界中を冒険していた。階級はサリョドがペドルびら級で、ケダンたちはフラワー級である。


「叔父上たちが拙者たちのために冒険者をやめるなどありえんでござる!!」


 パルホは憤慨していた。彼女は冒険者の叔父を尊敬している。冒険をやめて大使になるなど見過ごせなかった。


「これはあたしたちが望んだことよ。というかパルホはますます男ぶりが上がったわね」


 ナイメヌが笑った。だがケダンは不機嫌そうだ。


「……ワイト。お前はいつから女装が趣味になった? そんなに男を相手にしたいのか?」


「え、別にそんなつもりはないけど……。ああ、やっぱり私の女装が気持ち悪いのね」


「別にそんなこと言ってないだろ!!」


 ワイトが謝るとケダンはますます不機嫌になる。そしてぷいっと背を向けた。

 なんで不機嫌なのだろうか。ワイトは頭の中に疑問符が湧く。


「気にしないで。あの年頃は難しい物なのよ」


「そうでござるな!! ケダンはまだまだ青いでござるよ!!」


 そう言って優しくサリョドはワイトの右肩に手を乗せるのだった。なぜかパルホも威張っている。

 ケダンはバツが悪そうな顔になった。心配そうに顔を覗くワイトだが、ケダンは嫌そうにしている。

 その様子をバガニルとモッニは温かく見守っていた。

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― 新着の感想 ―
[一言] 思春期の子は難しいですから、大人が見守りませんと。
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