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エピソード4 死んだらどうなるかではなく 死んだ後に何が起こったが大事

「ふふふ、これが私の赤ちゃんですか」


 腰まで伸びた豊かな白髪に、美少女に見える美少年、ワイトが言った。

 ここはキャコタ王国の王立学園内にあるワイトの自宅にある寝室だ。

 部屋には大きなベッドがあり、一人の女性がベッドに腰を掛けている。

 銀髪のショートカットに褐色肌の美女だ。耳はとんがっており胸はメロン並みに大きく、腰は括れている。

 

 ウッドエルフのブッラだ。彼女は赤ん坊を二人抱いている。どれも褐色肌に耳がとんがっていた。

 この子たちはワイトとキョワナの子供だ。二人とも女の子である。

 ウッドエルフとはドライアドのような樹木のモンスター娘が進化したものだ。フラワーエルフは金髪碧眼で花のモンスター娘アルラウネから進化した者もいる。


 ワイトはつんつんと赤ん坊をつついた。赤ん坊はすやすや眠っている。二人はワイトとキョワナに似ていた。


「えへへ。赤ちゃんを産んだのは初めてだけど、いざ生まれると可愛いもんだね」


「はい、ブッラ様ありがとうございます」


「えへへ、お礼はいいよワイトお兄ちゃん」


 ワイトが頭を下げると、ブッラは笑った。

 ちなみにブッラは成人女性に見えるが実年齢は6歳だ。ウッドエルフは常人の四倍の速度で成長する。

 12歳のワイトたちは兄と思っているのだ。


「くっ、ワイトがキョワナの子供を作るなんて……。むかついてしょうがないぜ」


 悪態をつくのは黒髪の犬耳少年ケダンだ。彼はワイトの双子の妹パルホの執事として働いているが、ワイトの方が気になっている。


「あまりキョワナの名を出さない方がいいですよ。なにせ世界を破壊した張本人ですからね」


 声をかけたのはウッドエルフだ。ブッラと違いふわふわな銀髪が腰まで伸びており、知的な雰囲気があった。身に着けているのはピンク色のドレスだ。

 ブッラの双子の妹、クパールだ。カホンワ王国の王太子ゲディスと家臣のガムチチの子供である。

 ウッドエルフのクロケットが代理出産したのだ。


「そうでござるな。いくら人生を操られたとはいえ、一度は世界を破壊したのだ。人々の恨みは強いでござるよ」


 短く刈り上げた黒髪で日焼けした美少年が口を挟んだ。実はワイトの双子の妹パルホだ。

 

 世間ではキョワナ・カモネチは世界の破壊者として忌み嫌われていた。キョワナが世界を破壊したところを世界中の人間がマジッサ王国宰相ヒアルドンが用意した映像で目撃したからだ。

 おかげでキョワナの故郷であるカモネチ王国は避難の的となった。キャコタ王国内でもカモネチ王国を差別しろと声が上がっているが、キャコタ国王はそれを押さえていた。

 御用商人であるモーカリー商会が、カモネチ王国から輸出している鉱石竜ミネラルドラゴンの素材を相場の半分で取引することが決められた。もっともその分カモネチ王国から貴族の子息をキャコタ王立学園に入学させることが決まった。

 人質にするためである。もっともカモネチ王国では技術者が全くいない状態なので、この件を幸いにして、反発する貴族たちを黙らせた。


「でも生まれた命に罪はありません。この子たちは私が責任を取って育てます。母乳は出ませんが」


「えへへ、その点は僕に任せてよ。この子たちの面倒は僕が見るからさ」


「私もおりますよ。ワイト兄さまたちはお仕事に専念してくださいね」


 ワイトの言葉にブッラとクーパルが言った。


「それはいいが、あの噂を聞いているか? 世界中の独裁者や暗愚な王が消えたのはワイトたちのせいにされていることを」


 ケダンはイライラしながら言った。世間の無責任な噂にイラついているのだ。


「ところでワイト兄さまたちに聞きたいことがあります。お二人は世界が破壊されたとき、他の皆様が身体を失い魂だけの状態になったのを目撃したそうですね?」


 クーパルが訊ねると、ワイトとパルホは首を縦にした。


「ええ、確かに見ました。その内二つの魂が天高く飛んでいきましたね」


「キョワナの魂はワイトのお腹に飛んでいくのを見たでござるよ」


 それを聞くとクーパルは考え込んだ。


「恐らくその二つはキガチィ王とヒアルドンでしょう。もしかしたら別の肉体に憑依したのかもしれません」


「別の肉体、ですか?」


 ワイトが訊ねると、パルホが突然叫ぶ。


「もしかしてドイラプたちと同じでござるか!! あいつらは別の場所で殺され、キャコタ国内に作られたホムンクルスの身体に乗り移ったように!!」


 クーパルが首を縦に振る。


「実はイターリ様から報告がありました。消えた王侯貴族にはマジッサ王国出身、正確にはヒアルドンの血族の女性が側室になっていたそうです。こっそりと印をつけて髪の毛と爪を回収し、ホムンクルスを作るのも可能だとありました」


「するってぇと、ヒアルドンはそいつらを集めて戦争でも引き起こそうっていうのか!!」


 ケダンが叫ぶと、ブッラが首を横に振って否定する。


「それはありえないね。我の強い人が集まってもまとまりがないから無理だよ。ゲディスパパと一緒に行った世界で、初代魔女様から習ったもの」


「ブッラの言う通りですね。はっきり言えばそいつらが何人集まっても意味はないです。ただ彼等は邪悪な魂の持ち主、そう言った人種を何百人も集めることで何かが起きると、イターリ様はおっしゃいましたね」


 クーパルが説明すると、ワイトたちの顔が暗くなった。


「……私たちにできることはあるでしょうか?」


「拙者たちにできることは仕事と育児でござるよ。難しい話はイターリ殿たちに任せればいいでござる」


 そう言ってパルホはワイトを慰めた。それもそうだとワイトは気を取り直した。


 それを見たブッラとクーパルは互いを見てにっこりと笑う。ブッラの腕の中で眠る赤ん坊たちも心なしかほほ笑んでいるように見えた。

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― 新着の感想 ―
[一言] 未来はわからないですね。
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