第百三話 エロガスキー 降臨して 大量虐殺
「まずいぞ、非常にまずい!! もうじきここに大魔王エロガスキーがやってくる!!」
ドゴランは興奮していた。普段は冷静沈着で感情をあらわにすることがないのに、ここまで取り乱すのは初めてであった。
「落ち着いてドゴラン。なんでエロガスキーがここに来るわけ?」
パルホは訊ねた。なぜサマドゾ王国に住む大魔王エロガスキーが出てくるのか理解不能だからだ。
「パルホは何も知らないのか!! サマドゾ家はエロガスキーの盟友だろうが!!」
「盟友であることは知っていますよ。それがどうかしたのですか?」
パルホは冷静なままだ。自分の実家であるサマドゾ王国では、大魔王エロガスキーと盟友であることは知っている。だが盟友の意味はよくわかっていなかった。
ただ両親は自分たちは強くなくてはならないと、自分の子供に説いていた。
そして外交を重要視しており、サマドゾ王国の敵を作らないことを重要視していたのは覚えている。
「そうか、お前はまだ教わってないのだな。大魔王と盟友の関係を」
「あなたは知っているのですね。ならば教えてください。なぜエロガスキーがここに来るかを、そして何をするかについて」
「……大虐殺だ。エロガスキーは間もなくここにきて、マジッサ王国の人間をすべて皆殺しにする。盟友の子、ワイトの復讐のためだ」
ドゴランから出た言葉は意外であった。なぜエロガスキーがワイトの復讐をするのか。
「そもそも盟友とは大魔王の契約みたいなものだ。盟友は大魔王の生活を守り、大魔王は盟友の危機を助ける。魔女が生み出したシステムだ」
大魔王の生活を守る。これはどういう意味だろうか。エロガスキーの住むサマドゾ王国は人外魔境だ。普通の軍隊ではまったく太刀打ちできない深い森と岩山に囲まれている。
大魔王と言えども生き物だ。あんまり好奇な目で見られるのは嫌なのだろう。
サマドゾ王国ではエロガスキーが住むハボラテの都の立ち入りを禁止していた。特別な人間以外は許可しないことにしている。
かつてキャコタ王国の西方にあるトナコツ王国には、アマゾオという広大な密林がある。大昔アマゾオには巨大な国があった。広大な土地に豊かな鉱山と農園に恵まれていたという。そこには大魔王ドスケベデスという霧の魔物が住んでいた。アマゾオ王国と盟友を結んでいたという。
だが王位を狙う王弟によって国王夫妻は殺害された。怒り狂ったドスケベデスは王城を地下深く沈めた。さらにアマゾオ王国を密林で覆ってしまったのだ。
生き残ったのは国王夫妻の味方だけだという。無事なのは東部のトナコツ伯爵の領地だけで、それが現在のトナコツ王国である。
「なぜドゴランさんはそれを知っているのでしょうか?」
パルホが質問した。もっともな意見である。それに対してドゴランは吐き出すように言った。
「聞いたからだ。俺の国、カウゲス一族はかつて大魔王アクメイクの盟友だったからだ」
これには隣にいたケダンやナイメヌも驚いた。二人ともアクメイクの事は知っている。モコロシ王国では魂を抜く悪神と恐れられていたが、大魔王だったとは知らなかったのだ。
「アクメイク自身はすでに滅んでいるがな。かつてモコロシ王国がひとつだった頃、当時の王はカウゲス族だった。そして東方の海岸部にダホロンという国があったそうだ。その国は志熊荷王国を憎んでいた。彼等は当時のカウゲスの姫を暗殺した。志熊荷王国の人間を洗脳して暗殺させたのだ。そうすることでアクメイクが志熊荷王国の仕業と思い込み、国を亡ぼすと信じていたらしい」
結果は大失敗だったという。アクメイクは殺された姫の魂を読み取ったという。そして相手は志熊荷の人間を洗脳したダホロンの人間と判明したそうだ。
アクメイクはただちにダホロン王国に飛んだ。そして王家だけでなく、国民全員の魂を抜き取ったという。魂を抜かれたら人間は生きていけない。ただちに肉体は死んでしまった。
アクメイクはダホロン王国の魂をひとつの宝玉に変えた。それはカウゲス族へ渡したのである。それはダホロンの宝玉として現在でも秘宝として扱われているそうだ。
以後、モコロシ王国は魔王化により一旦滅んだ。そしてモコロシ、サゴンク、スコイデに分裂し、カウゲス族だけは隠里に住んだという。以後の一族はアクメイクの行為を口伝で受け継いだそうだ。
「つまり盟友を殺されると、大魔王がそいつに復讐に来るわけか。別にいいんじゃねぇの? ワイトを傷つけた奴らなんか死ねばいいんだよ」
ケダンが吐き捨てるように言った。ワイトを殺しかけたマジッサ王国の人間など知ったことではないからだ。口には出さないがパルホも同じ気持ちである。
しかしドゴランの表情は暗い。
「俺もマジッサなどどうでもいい。だがそこにいるキョワナはどうなる? もしマジッサ王国の人間が皆殺しになったとしたら、奴は怒り狂うと思わないか?」
ドゴランの言葉にその場にいた全員が青くなった。この場合マジッサ王国の人間が殺されてしまうことより、そのことでキョワナがどうなるかわからないからだ。
キョワナはウシワカ達の行為にイラついている。ここでマジッサ王国の人間が虐殺されたら感情を爆発させてもおかしくない。
「でっ、でもエスロギさんならワイトを救ってくれるんだろ!! ワイトの魂は肉体から離れちゃいないんだ、まだ死んでないんだ!!」
ケダンが吠えると、ナイメヌは首を振った。
「だめですね。今エスロギ様の隔離結界のせいでワイト様の魂は感知できません。恐らくヒアルドンの狙いはそれでしょう。エ蘇生の為に隔離結界を使わせるために」
そうこうしているうちに空に巨大な影が見えた。それは巨大なクジラのように見えたが人の姿をしていた。
幼女がそのまま巨大化したような存在であった。金髪で山羊の角が生えた巨大な幼女である。マイクロビキニで乳首と恥部のみ隠していた。
こいつが大魔王エロガスキーである。
「ここじゃな。よくもワイトを殺しよったな、絶対に許さんぞ!!」
愛嬌のある顔が怒りで歪んでいた。その足元から邪気が渦巻いている。パルホは不機嫌になるエロガスキーを見ても、ここまで激高したのは初めてだった。
実はこの展開は最初考えていませんでした。大魔王が盟友を殺されたら復讐する設定は考えてましたね。
最終回は近づいています。ご期待ください。




