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風呂と事件

まりんが胡桃沢の圧力に負け、要らぬ誤解を与えたまま逃走して行ってしまった。

今追いかけて誤解を解きに行くのもいいが、正直めんどくさい。

どうせ同じように問い詰められるなら、いつでも変わらんだろう。

問題は先送りにするタイプなのだ。


「早く中に入りましょ」


俺がすっかり暗くなった夜道を走る妹の背中を見守っていると、胡桃沢は既に玄関の扉の前に立っていた。

また、急かすように開かない扉をガチャガチャと動かしている。


「分かったからそれやめてくれよ」

「ごめんなさい、つい。でも早く入らないと今度は別の人に見つかるかもよ」


そうなれば亮くんも困るでしょ、と急いでいる理由を説明してきた。

まあ、またあんな状況になればめんどくさいのは確か。


「はいはい、さっさと開けるからどいてくれ」

「分かればいいの」


そう言うと素直に扉の前からどいていく。

鍵を開けて家の中に入り、廊下を抜けてリビングに直行してソファーにダイブする。

今日は疲れたからテレビでも見てゆっくりしよう。

そう思ってリモコンに手を伸ばしたら――目の前に胡桃沢が立ち塞がって俺を見下ろしてきた。

ので、そのまま胡桃沢の足の間からリモコンを取りにいく。


「ちょっと!? 何してんの!」

「いやリモコン取ろうと思って」

「はあ……私の足の間から取るのはやめなさい」

「へーい」


自分から目の前に来たくせに、何を言っているんだ。

ちょうど股のところにあったのだから、仕方ない不可抗力というものだ。


「ていうかどいてくれよ、テレビ見たいんだけど」

「テレビなら後で見なさい。その前にお話があります」


腰に手を置いてなにやら怒っている様子。

照明からの逆光により胡桃沢の顔が暗くなっていて、迫力が増していた。

俺は起き上がることもなく、寝ころんだまま話を促した。


「話って何?――ぐふっ!」


俺の態度にむかついたのか、俺の背中に座って話し出す。

ちょっと重いけど言うと絶対怒るだろうし、このお尻の感触は味わっていたかったので問題はなし。


「亮くん……私に内緒で勝手に下着買ってたでしょ」

「勝手に買ってって、駄洒落かよ」


ばしっと尻を叩かれる俺。不思議と嫌じゃな……いかん俺はMではない、決して。


「ふざけないで、本当にまりんちゃんに買ったの?」

「いやそれは胡桃沢にプレゼントしようと」

「なんで?」

「お前が買った下着色気がないんだよー、だから俺好みのやつ買ってあげようと思って……」

「はあ……余計なお世話よ」


頭を抱えて溜息をつく胡桃沢は、呆れている様子だ。

本当はサプライズの予定だったけど、この反応も悪くはないかな。


「とりあえず貰っといてくれ。高かったんだ」

「買わなきゃいいのに……」


ごもっともな意見だが衝動に駆られて仕方がなかったんだ。

胡桃沢はもう話すことはないのか俺の背中から立ち上がり、自分が買ったものと俺の買った下着を持つ。


「どこ行くんだ?」

「お風呂、どこにある?」

「リビングでて左にあるよ。一番奥の右側」

「ありがと、先使わせてもらうわ」

「おう、俺が買った下着使ってもいいよ」


冗談のつもりだったのだが、服の入った紙袋を投げつけてきて顔面にクリーンヒット。

意外と痛かった。

さすがに知り合ったばかりの女子にセクハラはまずかったな。反省しよう。

つい調子に乗りすぎてしまうのが、悪い癖だな。


お詫びのしるしにデザートでも、用意してやるかとコンビニにダッシュした。

近くにあるコンビニでケーキやらプリンを取って、レジに運んでいく。


「いらっしゃいませ。って亮じゃん」

「よう、きちゃった」


俺がいつも通っているコンビニには友達の智也(ともや)がバイトしているため、たまに出会うときがある。


「あれ、お前ケーキとか好きだっけ」

「いやこれ俺のじゃないよ」

「え? あー妹さんのやつ?」

「いやそれも違う」

「え?」

「ん?」


あ、しまった。妹に上げるやつだと言っておけばよかった。

取り返しのつかないことをしたらしく、智也には疑いの目がかけられている。


「もしかして……彼女か?」

「なわけ」

「じゃあこっち向けよ」


これ以上話しているともっとボロが出そうなので、札の野口様を智也に投げると会計が終わった商品を以って飛び出した。

おい待てって、と智也の呼びかけを無視して家まで走って帰った。


「ただいまー」

「あ、ちょっと待って!!」


なんか言っていたが無視して家に入ると――下着姿のままの胡桃沢がそこに立っていた。


「あ? なんで下着? ていうかそれ俺の買った下――」


今日二度目の紙袋投てきが行われ、またしても顔面にクリーンヒットする。

これに関しては割と理不尽だと思う。


「あなたに服を投げたせいでなかったのよ! それに家にいなかったし!」

「なるほどなー、でも買って正解だった。よく似合ってるぜ」


サムズアップしながら顔に被さっていた紙袋を取ると、胡桃沢は顔が真っ赤になっていた。


「馬鹿っ!!」


今日はいろいろあった一日だったな。

本作を最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

ご指摘等ございましたら、どんどん言ってもらえれば嬉しいです!

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