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愛する人と婚約したいと王太子殿下に毎日言われたので婚約破棄してもいいですよと言いましたが、その愛する相手が昔から私と仲が悪いと評判のあの性格が悪い従妹のエミリなんて信じられませんわ!

作者: ありす

「……どうしてよりにもよってエミリ!」


「まあまあエレンや」


「私、私、真実の愛とか、愛する相手と婚約したいとか、あのロマンチックお花畑の殿下があまり言うので、婚約破棄を受け入れましたが、どうしてエミリなのですか!」


 私は父に向って怒りの雄たけびを上げていました。

 父に言っても仕方ないのですが……。

 事の始まりは、私の婚約者の王太子殿下がどうしても愛する人と婚約したいと言い出し、毎日毎日、しつこく手紙まで送ってきて言うので、お受けしたのです。


 私、政略結婚であることは承知してましたが、殿下のそういうところがかわいいなんて思ってたのに。

 毎日言われると、破棄をしないと強情を張る自分が嫌な女に思えてきてお受けしたのです。

 お前を愛していないと、言われるのも気がめいりましたわ。


「エミリは、あの子はいつも私のことを鼻が低いとか、背が高くて男の方みたいとか顔を見れば嫌味を言う私の従妹なのですわよ。私たちが仲が悪いのは殿下もさすがに知っているはずですわ!」


「……」


「そんなのが真実の相手ですってえええ!」


「もう婚約破棄が成立したのだ、諦めろエレンや」


 相手がだれかと何度聞いても答えないはずですわあの人! 私は怒りがあふれてもうどうにもなりませんでした。


「気が強いお前と、気が弱い殿下ならうまくいくと思ったのだがな……優しいエミリを選ぶとは」


「優しい、優しいですって! どこかですかあ、私の悪口を言うばかりか、あの子、人の彼氏をとる趣味までありますのよ!」


「……」


「……絶対にこのままではおきませんわ」


 気が強い公爵令嬢といわれて十七年、好きで気が強くなったのではありませんわ。

 私が小さいころ母が死に、まだ小さい弟を支えていかないと駄目なお父様はお母さまの死にしょげかえり、泣き暮らす毎日。

 なら私がしっかりしないとってこんな性格になりましたのよ!


「お姉さま、僕も手を貸します!」


「ローレンス、ありがとう!」


「あまり家に迷惑をかけない方法でしてくれよ。後お前たちのおじにもな」


 部屋に入ってきたローレンスをひしっと抱きしめる私、ため息をつくお父様。

 私はエミリと殿下に復讐するべく、魔法の天才といわれる弟ともに作戦を練ることにしたのですわ。



「ローレンス、どうしたらいいと思う?」


「まず、あれは性格が悪いからそれを知らせたら」


「あのぶりっ子は簡単に本性は見せませんわ、男にならすべて媚びますわ」


「なら、彼氏をとられたっていう女性たちに……」


 ローレンスは淡々と計画を練っていきます。そういえばローレンスは記憶魔法とか記録魔法などがメインで今研究してましたわね。

 私はエミリの記憶などもわかりますの? と聞いてみました。


「うんわかるよ、だからあれの記録をだしたら、男漁りは立証できると思う」


「男漁りって……」


「女性たちはたぶん恥だから絶対に証言しないってあれは思っていると思うけど、男を取られた女性ってのは恥以上に、憎しみが勝つ人もいるからそういう人から事情を聞いて、記憶を再現させれば」


「ああ、彼氏をとられた証拠にもなると……」


「そういうこと」


 この魔法の天才の弟は末恐ろしい神童でしたわ。しかし、エミリのことは蛇蝎のごとく嫌ってましたわ。

 男には絶対に媚びますのにあの子。


「どうしてあの子が嫌いです?」


「お姉さまのことを悪く言ったからです!」


「ああ、いい子やっぱりローレンスはいい子だわ!」


 ぎゅうっとローレンスを私は抱きしめました。いつもいつもそういえばエミリのことをあれといって嫌ってましたわね。

 私たちは婚約式に向けて動き出したのです。




「私はここにエミリ・ファーガソンと婚約を!」


「異議ありです!」


「異議あり!」


 私と弟は手を挙げて宣誓します。そして驚いた顔の皆を後目にローレンスが水晶玉を取り出します。


「これに異議ありの記録があります! あと証言者の皆さん!」


「私も異議ありです!」


 彼氏をとられた令嬢たちがぞろぞろと出てきます。

 証言をしてもいいという3人に出てきてもらいましたが、もっといましたわよ。


「私、エミリさんに婚約者のレイン様をとられました。婚約者の私がいたのに、愛しているとレイン様に言われたそうです。でもそのあと、そんなことなんて言ってないと……」


「私も同じです。婚約者のリックをエミリにとられました。取られたお前が悪いんだって言われましたわよ! 女としての魅力がないって!」


「……私もです。う、ううう……」


 ああ、証言ができない人もいますわ泣いてしまったご令嬢の一人を私は慰めます。 

そして再現魔法で、この時のエミリとその婚約者たちの様子を出しました。


『女性としての魅力がないから、愛せないってリックさんが言われてましたわよ。うふふ』


『取られるって、あなたに魅力がないからでしょう』


『人に言ったらあなたが恥をかくだけですわ!』


 エミリが顔を青くしてこちらを見ています。そして私はふうとため息を一つついて、自分の記憶を出しました。


『おばさまが死んだのは、あなたの弟のせいじゃなくて? あんな薄気味悪い子供を産んだからおば様は早死にしたのよ!』


 ああ、これはだめ、私がちらっとローレンスを見ると、頷いています。

 私はここだけは削除したのに。


『あの化け物、あなたの弟って、信じられない、私のことを性格悪い女とか言うし! あんな化け物を産んだからおば様は! あなたもひょろひょろと背が高くて本当に女なの?』


 私はエミリがへたりと座り込むのを見ました。

 周りが騒ぎ、陛下が婚約式は中止にすると一喝し、私たちは陛下に呼び出されることになったのです。




 エミリは私と弟に対する暴言、人の婚約者を何人もとった罪により辺境送りになりました。

 実はローレンスが陛下に私たちの計画を話していたらしいのです。

 陛下は殿下のことも廃嫡、私たちにはおとがめなしになりました。


「ローレンスが宮廷魔法使いになることが条件だったなんて……それにあの記憶」


「ごめんね、あれ僕が削除したのを元に戻したの、あいつの性格悪いのがすごくよくわかる所だったからうん、でも僕、将来宮廷魔法使いになるつもりだったしそれが早くなっただけだから気にしないで」


「ごめんなさいね」


「今度はもっといい人を婚約者にしてくれるって陛下は言ったよ」


 陛下がローレンスを宮廷魔法使いにすることを条件にうちの家におとがめなしにしてくれるってことになってました。さすがに騒ぎを起こすのはまずいとローレンスが言ってくれたそうで……。

 


「大好きだよ、だからもっと幸せにしてくれる人を婚約者にしてね。お姉さまが跡をつぐことになったけど」


「わかったわ、ローレンス、休みには帰ってくるのよ」


 元気よく頷くローレンス、城に向かう馬車に乗った弟にありがとうと私は手を握りしめました。

 私が婿をとることになったのです。ローレンスがにこっと笑うと、私もいい人を見つけますわと笑いかけ、うんと元気よく返事をしたローレンスと私は笑いあったのでした。

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― 新着の感想 ―
[一言] 証拠を見せられたお花畑殿下の反応が知りたかったです。 全く書かれていないのは、ちょっとスッキリしない。 コイツに対しての「女を見る目ないでやんのざまぁ」でもあるはずなのに。
[一言] 父親へのヘイトも軽く解消して欲しかったなぁって
[気になる点] 別に婚約を「意義あり」と言って止める必要ないのでは? 婚約させた後で暴露したほうがダメージ大きくできると思った。演出上の都合かな。
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