第八話 弟
こちらの更新も大変遅くなって申し訳ありません。
悪いのは全てホラーです。
嘘ですごめんなさい。
さて前回までスラック家の温かさに触れたシビーラ。
このまま嫁入りで良いような気もするのですが、シビーラにはそうできない理由があるようで……。
インセンス家の事情、ご覧ください。
「ただいま」
「お帰りなさいませ、お嬢様」
お嬢様、ときたもんだ。
たかが十二の小娘に、親どころか祖父と言っても通る年の執事が恭しく頭を下げる。
地位の力、そしてそれを買った金の力に、皮肉な笑みが浮かぶ。
「グレイブは?」
「先程目を覚まされました。今はご機嫌でいらっしゃいます」
「そう」
手を洗い、弟の部屋の扉を開ける。
「あ、お嬢様、お帰りなさいませ。グレイブ様、お姉様がお見えになりましたよ」
「あぶぅ」
あああ可愛い!
ちっちゃい手を私に伸ばして!
……いけないいけない。
使用人の前で、屋敷の主の娘が顔を崩す訳にはいかない。
「元気ねグレイブ」
「あーうー」
「いい子ねグレイブ」
「きゃーう」
「ちゃんとウェトナスの言う事を聞くのよ」
「うーあー」
撫でて抱き上げてほっぺたを押し付けたい!
でも貴族の令嬢はそんな事はしない。
だからせめて私はグレイブのために、この家をよりいい形で残すんだ。
グレイブが生まれた事で、私はこの家を継ぐ責務から解放された。
それは同時に、こんな可愛い弟に、インセンス家の商売と貴族の立場の全てがのしかかるという事……。
「……グレイブ……」
「あー」
お姉ちゃん、頑張るからね。
親父の意向に沿うのは癪だけど、もっとこの家を大きく、盤石なものにして、グレイブの苦労を少しでも減らすから。
そのためなら、ルースを上手い事騙して……。
「……う……」
「お嬢様?」
「……大丈夫。何でもないわ」
今の胸の痛みは何だろう……。
……あぁ、そうか。
あのルースの無警戒な顔が、グレイブと重なるからだ。
弟を陥れるような錯覚に陥っているだけだ。
「ウェトナス。グレイブの事をよろしく」
「はい、お嬢様」
部屋を出る。
動悸はまだ治らない。
ルースの笑顔が頭の中を回る。
駄目だ。あれを求めちゃいけない。
失ってでも弟の笑顔を守るんだ。
失ってでも……!
「……う……」
もらった飴玉が私を責めるようにがさりと音を立てる。
部屋に戻った私は、飴の袋を鍵付きの引き出しにしまった。
無くさないように。
見ないで済むように。
読了ありがとうございます。
幼い弟のために、頑張るお姉ちゃん。
さーてどうやって幸せにしてやろうかなぁ(ゲス顔)。
少し執筆の間が空いたため、シビーラの名前が予測変換に出てこなくなりました。
まぁそれはいいんですが、なぜ『しびー』まで打つと『タッカビーシャ』が候補に出てくるのか。
予測変換の闇は深い。
闇成分を補給させたままほっとくのもあれなので、なるべく早く更新いたします。
よろしくお願いいたします。