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第三十三話 決戦

スラック家の暖かさに触れ、これまでであれば隠し誤魔化してきたであろう欠席の理由を正直に告げられたシビーラ。

とうとう父にスラック家を害さないよう交渉をしかけるが……?


どうぞお楽しみください。

「お父様」

「何だ」

「スラック家の事でお話があります」

「聞こう」


 扉を開くと、いつものように目線を上げず、書類と格闘、いや制圧している親父の姿があった。

 ルースと接している時とは違う動悸が胸をさいなむ。

 ……恐れるな。

 ルースのためなら家すら捨てる覚悟を決めたじゃないか。

 しかも今はスラック侯爵が結婚に先んじて家に迎えても良いとまで言ってくれている。

 ……それでも親父に対する恐怖は依然として振り払えない。

 親で、商人の師で、商会の長である親父。

 いざとなると喉が狭まる……!


「どうした」

「……その」


 駄目だ! 戦えシビーラ・インテンス!

 ルースと共に生きると決めた以上、それを阻む親父は敵だ!

 どんな手を使ってでもルースは守ってみせる!


「スラック家への手出しは止めていただきたいのです」

「……理由は」


 ルースを心から愛しているから。

 だがそんな事を言ったら大事になるだろう。

 昨日練りに練った策の通り、トレランス公爵の後ろ盾を強調して平和的な関係のメリットを話して……。


「スラック侯爵家に出入りするようになってわかった事があります。それは……」


 ……違う。

 その小手先の誤魔化しがどれだけ自分を追い詰めたか。

 ただでさえ交渉の技巧については遥かに格上なんだ。

 勝負を避けて利だけを拾おうなんて、考えが浅かった。

 誠心誠意! 真っ向勝負!

 私はルースの隣に立つのに恥じない女になるんだ!


「『それは……』、何だ」

「……っ。わ、私は! ルース・スラックを心から愛しているという事です!」

「……何だと」


 言った! 言ってやった!

 誇らしい気持ちで浮かれそうになるが、すぐに頭を交渉用に戻す。

 これでもう引っ込みはつかない。

 次は何を言ってくる?

 叱責か? 罵倒か? 拒絶か?

 頭を回せ!

 どんな手を使ってでも、ルースと共に歩む人生を勝ち取るために!


「……理由は」

「は?」

「理由は何だ」


 ……てっきり問答無用で怒りをぶつけてくるかと思ったのに……。

 理由、と言われても……。


「ルースの暖かで優しい人柄に惹かれたからです」

「そんな抽象的な説明で私が納得すると思うか」

「……いえ……」

「お前は私が商人として鍛えた。一時の情に流されるような甘さはないはずだ」


 ……確かに親父の言う通りだ。

 実際必要とあれば、一つの家を滅ぼす事さえできる自信がある。

 もっとも恨まれるリスクを考えたらやりはしないが。


「ルース・スラックに何かされたか」

「!」


 このクソ親父!

 ルースやスラック侯爵達が、私に無理に言わせているとでも思っているのか!

 スラック家の人達は常に暖かく優しく迎え入れてくれた!

 いいだろう! どれ程スラック家が素晴らしいか、じっくりと語ってやる!


「……そうですね。色々していただきました」

「例えば」

「まず婚約が決まった際に、この花飾りのついた髪留めをいただきました」

「ふむ」

「街に菓子を買いに行った時は、手を繋いで案内してくれました」

「そうか」

「菓子の試食を手ずから食べさせてもらったり」

「……」

「私の選んだ菓子を、茶会で出すものに選んでくださったりもしました」

「それで」

「私がうっかり会計の間違いを指摘してしまった時も、むしろ褒めてくださり飴まで頂戴しました」

「うむ」

「夫人も侯爵も暖かく迎え入れてくださって、その上ルースの勉強を見る機会を与えてくださって、その上……!」


 何としてでもルースやスラック家の価値を親父に認めさせてやる!

 私はルースとスラック家との思い出を、思いつくままに語り続けた……。

読了ありがとうございます。


説明という名ののろけを延々聞かされる親父の気分や如何に。


前話は予約投稿の日付を間違えて、一日二回投稿になってしまいました。

まるで成長していない……。

書く事は決まっていたのですが、慌てて書いたので誤字脱字ありましたらお知らせくださいませ。


次話もよろしくお願いいたします。

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