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第三十一話 怒り

ルースの誕生日会に来て、改めてその存在の大きさを自覚するシビーラ。

しかしスラック侯爵が怒っていたとの話を聞いて……?


どうぞお楽しみください。

「お父様〜。シビーラちゃん来たよ〜」

「そうか」

「こんにちは、スラック侯爵様」

「あぁ」


 相変わらず表情が読めない。

 しかし手紙を受け取った時に怒っていたと、ルースが言っていたのが気になる。

 今朝には戻ったと言ってはいたが、私の都合で一人息子ルースの誕生日会を変更する事になったのだ。

 ……怒るのも当然だ。


「……あの、昨日は」

「もう体調は良いのか」

「え、あ、は、はい。その、ルース様のお見舞いのお陰で元気になりました」

「えへへ〜。うれしいな〜」

「あの果物を選んだのは私だ」

「あ、ありがとうございます!」


 そうか、そうだよな。

 ルースにしては気が利いてると思っていた。


「とても美味しかったです」

「そうか」

「はい。一口食べるごとに元気を取り戻せるようでした」


 昨日のあの葡萄は、間違いなく今までで一番美味しい葡萄だったと言える。

 何にも頼らず、己の才覚だけで生きようとしていた私。

 それが弱く脆く、悲しいものだと教えてくれた味。

 生涯忘れる事はないだろう。


「無理をしていたのか」

「っ」


 息が、止まる。

 見抜かれていた……?

 貴族や商人の仮面を被って生きてきた事が……?


「インテンス準男爵から聞いている。商人の仕事をかなり手広く手伝っていると」

「あ、はい」

「シビーラちゃんすご〜い」


 そっちか。あぁ驚いた。

 今回のはそのせいじゃないのだけれど。


「もし次同じ事が起きるなら、私はインテンス家との関係を考え直さなければならない」


 ちょっと待って!

 誕生日会に行けないほど仕事をさせるなら、婚約解消という事か!?

 それは困る!

 もうルースがいない人生は考えられない!

 何とか仕事のせいじゃないと理解してもらわないと……!


「……あの、スラック侯爵様……」

「何だ」


 ……それには昨日私が仮病を使った事を話さないといけない……。

 そっちの方が余程怒らせそうだけど……。

 でも同じ怒られるなら、本当の事を言って怒られた方がいい。

 それで謝っても怒りが収まらないようなら、私の貯蓄でも人脈でも全てを捧げて、何としても許しを乞おう。


「……昨日は私、仕事の疲れで誕生日会に行けなかったのではないのです」

「……何」

「ルース様に贈ろうとしたプレゼントが、当日になって気に入っていただけないのではと不安になり、その恐怖に耐えきれず仮病を使いました……」

「え〜? これとってもステキだよ〜」


 うん、今は大丈夫だけどな。


「私の心の弱さが招いた失態でございます。本当に申し訳ありませんでした。どうかお叱りをお与えください」

「……」


 沈黙が怖い……。


「……いつも、そうだな。家のためや私達のために行動する」

「……え?」

「自分のしたい事やしたくない事を出さず、一人で抱え込む」

「あ、あの……」

「今だってそうだろう。家をかばうために自分だけのせいにしようとする」

「いえ、それは……」


 スラック侯爵が小刻みに震える。

 怒りを抑えているようにも、涙を堪えているようにも見える。

 私の事で、どうしてそんなに……? 

読了ありがとうございます。


シビーラがまた的外れな不安を感じてるけど、ルースといるとポンコツになるからね。仕方ないね。


次話もよろしくお願いいたします。

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