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第二十七話 贈り物

自分の感情に気付いたようで、惜しいところで外したシビーラ。

ともあれされるがままではなく、積極的にいこうと考えていたシビーラに一つの転機が……?


どうぞお楽しみください。

「うーん……」


 私は膨大な商品リストの前で、つい唸り声を漏らした。

 曲がりなりにもうちの商会の商品については、親父に引けを取らないくらいに知ってる自信がある。

 商品の強み、補うべき点、価格と利益率、現在の在庫、類似品との比較。

 だからこれまで商品選びで迷ったことなどほとんどなかった。

 しかし今回は全く決められる気がしない。


「誕生日、か……」


 今日の勉強の後、ルースの誕生日が三日後と聞かされた。

 身内で静かにやるから気兼ねなく来てねと夫人に言われ、とりあえずは頷きはしたが。

 気兼ねなくなんてできるか。

 衣装については、前に伯爵家令嬢のノイシーに聞いて多少華やかなものを仕立ててある。

 問題は贈り物だ。

 ここで前回やり損ねたルースの希望を叶えて、気持ちの安定と主導権を取り戻したいのだが……。


「……どれが良いんだ……?」


 ……貴族の令息に贈るべきものがわからない。

 服か? 装飾品か? 食べ物か? 玩具か? 日用品か?

 何を贈っても貴族のお眼鏡に適う気がしない!

 ……まぁルースなら何を贈っても喜ぶ気はするんだけど……。

 かと言って適当なものを贈るわけにもいかない。

 インテンス家の品位が疑われる。

 ……スラック家の人達は気にしなさそうだけど……。

 とにかく、さして値段は張らず、それでいて見栄えが良く、喜ばれるものを贈りたい。

 ルースが喜ぶようなものを……。


『そしたらね〜、ぎゅ〜ってしてほしいな〜』


 ぴぎゅ。

 違う! それは喜ぶかもしれないけど違う!

 贈り物は私ですってどんな自意識過剰女だ!

 すごく喜んではいたけど!

 ちゃんと考えよう!

 ルースが受け取って喜ぶところを想像して……!


『シビーラちゃん、ありがと〜! とっても嬉しい〜。大好き〜』


 あぎゃ。

 何でこんなに克明に想像できちゃうんだ私!

 いや、しかしこの想像力は贈り物選びの助けになるかもしれない!

 まずは服を贈ったとして……。


『ありがと〜。大事に着るね〜』


 つ、次に装飾品を贈った場合……。


『ありがと〜。大切にするね〜』


 ……次は食べ物……。


『ありがと〜。おいしそう〜』


 ……玩具……。


『ありがと〜。いっぱい遊ぶね〜』


 ……日用品……。


『ありがと〜。すぐに使うね〜』


 どれも一緒だ!

 私の想像力が貧困なのか!?

 それとも何でも喜びそうなルースが悪いのか!?


「……」


 ふと髪飾りに手をやる。

 顔合わせの時に贈られた髪留め。

 ……そうだ。同じデザインでタイピンとかどうだろうか。

 色はルースの性格に合わせて、柔らかい色が良いな。

 うん、うん! 何だか良さそうな気がしてきたぞ!


『おそろいだね〜。嬉しい〜』


 これだ!

 そうと決まれば、うちの商会の装飾品を取り扱う店に行こう!

 赤字にならないギリギリまで値引きさせよう!

 私は自分の財布を掴むと、ハドワークに行き先を告げて家を飛び出した。

読了ありがとうございます。


プレゼント選びのワクワク感は異常。

でも渡す直前まで「これで良かったのかなぁ……」と悩み続けるのもお約束。


ちなみに「プレゼントはわ・た・し♡」って言えるメンタル鋼な人って、世界にどれくらいいるのでしょうか?


次話もお楽しみください。

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