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第二十三話 立場

言い寄ろうとした令嬢達が、ルースの無邪気さに打ち砕かれ、少し胸のすく思いを味わったシビーラ。

スラック侯爵が到着し、肩の荷も降りるかと思ったが……?


どうぞお楽しみください。

 社交会も半ばに差し掛かろうかという時間、


「済まない、遅くなった」

「あ、お父様〜」

「お疲れ様でございますスラック侯爵様」

「あぁ」


 スラック侯爵が到着した。

 ようやくルースのお守りから解放される。

 目を離すと何をするかわからないから、一人で見るのはなかなかしんどいからな。

 ……嫌ではないけど。


「ブロードに挨拶に行く。二人も付いて来てくれ」

「は〜い」

「かしこまりました」


 ブロードとは、トレランス公爵のファーストネームだ。

 従兄弟同士に当たるとはいえ、公爵をファーストネーム呼びとは、本当に仲が良いようだ。


「ブロード」

「おぉ、テンダー! 遅かったじゃないか!」

「領地からの陳情に対応していた」

「相変わらず真面目だな。明日に回す事もできように、部下や領民を不安にさせないように即対応する姿勢、素晴らしいと思うぞ!」

「あぁ」


 トレランス公爵の前でも、スラック侯爵の態度は変わらない。

 無表情でそっけない言葉。

 だがお互いの信頼感が私にも何となく感じられる。


「そうだ! さっきシビーラ嬢が、ルースをたしなめていたぞ! 頼もしいな!」


 あぁ! トレランス公爵、余計な事を!


「そうか。何をしたルース」

「あのね、おじ様が他の人と話してるのに気がつかなくて、挨拶しちゃったの」

「そうか」


 表情が変わらないのが怖い!

 どう受け止められたんだ!?

 マナー違反をしたルースを叱るのか!?

 立場を弁えない私を叱るのか!?


「感謝する」

「え?」

「ルースの誤りを正してくれてありがとう」

「も、勿体ないお言葉にございます……」

「今後も教えてやってほしい」

「身に余るご期待、恐縮です」


 いやほんと身に余る。

 まぁルースは素直だから、無理とは思わないけど……。


「それとな! 伯爵家の令嬢達がルースにちょっかいをかけようと、シビーラ嬢を除け者にして自分の父親達に紹介しようとしていたが、ルースがシビーラ嬢の手を取って挨拶に回ってな!」

「何?」

「いやー、シビーラ嬢を世話役と馬鹿にしていた令嬢達が、目を点にしていたな! 傑作だったぞあれは!」

「誰だ」

「ん?」

「どこの家の娘だ」


 ……あれ? 表情も声色も喋り方も変わらないけど、スラック侯爵、怒ってる……?

 いや、まさか、そんな……。


「フー伯爵と、ノウ伯爵、それとアノウン伯爵の娘だったな」

「話をしてくる」


 トレランス公爵の軽い言葉に、スラック侯爵が早足で歩き出す。

 何? 何を話す気だ?

 私の事で抗議する気か?

 平民出身なのは事実だし、別段損害を受けた訳ではないから気にしてないのに!

 それにスラック侯爵からすれば格下かもしれないが、うちにははるか格上の貴族。

 揉め事なんか起こさないでくれ!


「失礼」

「お、これはこれはスラック侯爵。ご無沙汰をしております」

「この度はルース様のご婚約、おめでとうございます」

「いやはや、インテンス家が実に羨ましい」

「貴殿らの娘が私の息子に声をかけて来たそうだが」


 あぁそっちか。

 考えてみれば当たり前だ。

 婚約者持ちの息子に粉かけられたら、父としては文句の一つも言いたくなるだろう。 


「その際婚約者であるシビーラ・インテンスを冷遇したそうだが何か申し開きはあるか」

「え……?」

「あ、いや、それは……」

「こ、子どもの言った事でして……」


 私の事だった!

 やめて侯爵様落ち着いて!


「そうだな。子どもの言葉だ。だがそれは貴族である以上、家の教育から生まれた言葉だ。その責は家にある。違うか」

「あの、いえ……」

「仰る通りです……」

「申し訳ありません……」


 あぁ小さくなる伯爵達!

 後ろに控える娘達の顔は真っ青だ!

 もうその辺で!


「身分や年齢など不安に思う事もあるだろう。しかし私は息子の妻になるのは彼女以外に考えられない。つまり私の娘も同然だ」


 !

 私の、娘……。


「今後彼女に対する無礼は、スラック家に対する敵対行動と見なす」

「そ、そんなつもりは……!」

「わかりました! 今後無礼な振る舞いはしないと誓います!」

「どうかお怒りをお納めください!」


 冷や汗をかく伯爵達。

 周りが固唾を呑んで、スラック侯爵の次の言葉を待つ。


「理解してくれたなら良い」


 そう言うと、スラック侯爵は私達の元に戻って来た。


「済まなかった。私が遅れたために不快な思いをさせた」

「と、とんでもない事でございます! お心遣い、ありがとうございます!」


 今のでわずかにあった不満も全部吹き飛んだよ……。


「今後何か不快な事があれば、すぐ私に言うと良い」

「あ、なら私も力になろう。テンダーの娘なら私の親族だ。遠慮なく頼ると良い」

「頼もしいお言葉、ありがたく頂戴いたします」


 普段ならスラック侯爵に加えてトレランス公爵の後ろ盾まで得られたとあれば、どう商売に活かそうか私の頭は回っていたはずだ。

 しかしさっきのスラック侯爵の言葉がぐるぐる回り、私の頭の中は暖かくふわふわとしていた……。

読了ありがとうございます。


テンダー怒りの真顔詰問。

これは怖い。超怖い。


ちなみに三伯爵の名前は、

フー(Who) → 誰?

ノウ(No) → いや、

アノウン(Unknown) → よう知らん。

と言う適当ぶり。

今後出番はあるかなぁ……。


次話もよろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[一言] >伯爵家 「誰それ?」「外人?」「歌?」こんなもんだから スラック侯爵に話されると 「訳わからんことしてしまった」「侯爵様の怒りの坪どこ?」 ほらこんなもん
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