第一話 プレゼント
一話が千文字行かないくらいのショートストーリーの組み合わせで、ただ書きたいものを書いてみました。
やさぐれ女の子と天然男の子との恋人未満なお話、よろしければ読んでやってください。
「初めまして〜」
間の抜けた喋り方をする奴だ。
これが私の将来の伴侶?
同い年の十二歳とは思えない。
「僕はルース・スラック〜。よろしくね〜」
「シビーラ・インテンスでございます」
何が婚約者だ。
商人として大成し爵位まで買ったんだから、そこで満足しとけ阿呆親父。
さらに高位に上がりたいからって、年端のいかない娘を貴族に売るか普通?
「仲良くしてね~」
「勿論ですわ」
ま、所詮は苦労知らずのポンポンだ。
機嫌良くなるよう扱って、搾り取らせてもらうとするか。
うちの商会の中でも選りすぐりの高いもんをねだってやる。
最後はある事ない事振りまいて、婚約破棄して慰謝料までふんだくってやるのも悪くない。
「あ、これ、プレゼント〜」
「まぁ、ありがとうございます」
渡される小さな箱。
早速来たか。貴族のプレゼント攻勢。
宝石か、装飾品か。
相手を見ず選んだプレゼントなんざろくなもんじゃないだろうけどな。
「開けてよろしいですか?」
「もちろ〜ん」
ま、何でもいいか。
適当に喜んだフリして売っ払ってやれ。
「まぁ、素敵な髪留め」
「街で見つけたんだ〜」
……そこらの露店で売ってる安物だ。
これじゃ売っても二束三文だな。
「付けてみてよ〜」
「喜んで」
私は物心ついた時から商人として叩き上げられてきたんだ。
こんな子どもっぽい、ピンクの花の髪留めなんか似合うわけないだろ。
「わぁ〜! すっごく似合う〜! 可愛い〜!」
ふぎゅ。
……な、何だその満面の笑みは……!
無邪気すぎる!
美形なんざ社交界で吐くほど見てるけど、こんな純粋な笑顔は……!
「……大事にいたしますわ」
「うん! ありがとう〜」
……売っても二束三文だからな。
こいつにこれからもっと高いものを買わせるためだからな。
だから、まぁ、しばらくは付けといてやる……。