結
カッパのお姉さんは、近くの池で、カッパの仲間たちと暮らしているんだという。
でも近々、その池で大規模な護岸工事が行われることになった。『護岸工事』というと、池を綺麗にしてもらえるイメージかもしれないが、実際には、かなりの部分を埋め立てられてしまうらしい。
そうなると、もう、その池には住めない。お姉さんの集落は、みんなで別の池へ引っ越すことを決めたんだそうだ。
「だから、もう最後の機会だと思ってね。懐かしの小学校のプールに、泳ぎに来たってわけ」
お姉さんは緑色の姿のまま、そう言って笑っていたが……。
そんなお姉さんの境遇よりも衝撃的だったのが、「カッパの皿は変身アイテムだった!」という真実。そのインパクトが強くて、お姉さんの話も、あまり耳に入ってこないほどだった。
……あれから、長い年月が過ぎた。
今でも時々、小学校の近くを通ることがある。すっかり様変わりしてしまったけれど、あの思い出のプールは健在だ。かなり改修はされたものの、一応、同じ場所に残っている。
あのカッパのお姉さんとは、二度と顔をあわせる機会はなかったが……。
大人になった今でも僕は、あの日のことをしっかりと覚えている。
特に、こうして月を見ながらカッパのイメージが強い酒を飲んでいると、鮮明に思い出すのさ……。
(「あの日、僕が出会った妖怪は……」完)