田中(仮名)はコンビニへと車をひたすら走らせる
俺、田中(仮名)は小回りが利く自家用車(軽自動車)を走らせている。
俺の住んでる所は住宅街が立ち並ぶ所で、言うなれば、郊外にすんでいる、まぁそのぶん、都会の悶々とした騒音とかに悩まされずには住むんだけど、
「近くにコンビニがないのがちょっとなぁ」
そう、厄介な点と言えば、店というのが、歩いていけるものではないので、車で行くのが必須だ。
もちろん、バスとかは走っちゃいるが、便数としてはあまり、多くなく、つまるところ、学生専用とか、高齢者用の側面が強い傾向にある。
まぁ時々、近くの道の駅の食材を買うために利用することはあるんだが……
「それにしても、夜ってあんまし、走りたくないんだよなぁ」
夜の道はなんだか不気味っていうのは俺だけではないはずだ。
目に見える視界は遮られ、目の前の光を頼りに進んで行く、これがスポーツカーで、東京の湾岸線を走っていたら、なんか、ロマンチックで、俺的には興奮するんだが、あいにく、自分が乗ってるものは軽自動車、実用的かつ、便利で悪くはないものだが、それと比べれば、ショボい気がするが、自分の身の丈に合うものと言えば、今はこれくらい、そう、これくらいなのだ……
「ラジオつけるか、」
安全のため、俺はできる限りの邪魔は排除して、一点のことに集中する性格であるため、余計なもの、例えばそう、音楽とかはなるべく聞かないようにしてるものだが、夜はなぜか、不安の方が勝ってしまうため、それを和らげないと、思わぬ事故に遭遇もしくは自分がおこしてしまう恐れがあると考え、ラジオをつける。
なぜ、テレビにしなかったのかは、家で録画して見れるからで、オプションでテレビをつけると高くなってしまうし、俺にとっては無駄な機能だと思ったし、こういう車の時ぐらいはラジオでいいだろうと思っているタイプの人間だ。
すると、ラジオの音からは学生時代にも聞いたことのある、懐かしきラジオ番組のパーソナリティーの二人が今日も元気な声で、お題をテーマにリスナーに電話をかけたりしている。
『もしもし、聞こえる?教授の芹沢です、君の名前は』
『あっ、はい僕の名前はantです。』
『はい、ant君、こんばんはー』
『今晩大学ー!』
『いただきましたー!今晩大学ー!』
そして、お決まりの効果音が流れる
俺はその音を聴いて
懐かしいなぁと思った。
今でも、こうして、主に中高生のリスナーに電話をかけていると思うと、昔の一時期だが、このラジオ番組を聞いていた自分のあのときのことを思い出す。
そして、決まって、放送終了前にはお悩み相談があって、自分だけじゃないんだなぁーとか知って、実際救われたこともある、命の恩人的なラジオ番組であり、俺は思わず、怖いと思っていた夜道の不安が和らいだ気がした。