#001 暴食の罪
このペースで、毎エピソード5000字を目安に頑張っていこうと思っています!
宜しくお願いします・・・!
まだ彼等の冒険は始まったばかりです。
Episode1 ~暴食の罪~
目を覚ましたとき、俺はベッドの上にいた。起きてみると近くの机の上に手紙が置いてあった。
「お前外で倒れてたから、家のベッドに寝させておいた。感謝してくれよ。byテツオ」
テツオは俺の幼馴染であり、頼れる友人である。まぁ昔から色々大雑把なとこはあるけど憎めない奴だ。
ってそうじゃなくて・・・俺の体の中にいる奴が問題だ。ってか、早く喋れよ。
「お呼びかな・・・我が主?」
「お前の主になったつもりはないんだけどな、
それよりお前の名前は?あと『暴食の罪』ってやつはどうなったんだ?」
「僕の名前は『ベル・ゼブブ』気軽に『ベル』と呼んでくれ。
『暴食の罪』のことなら心配は要らないよ。もうキミは『暴食の罪人・ソウタ』となったんだからね。」
「ベル・・・俺言ったよな?こんなのいらないって。」
「大丈夫だ、我が主。この能力はキミを助けてくれるだろう。」
「本当か!?ってことは・・・!」
「まぁまぁ・・・とりあえず外に出て説明をしようかな。」
俺は素直に外に出た、まぁ俺を助けてくれる・・・正直困惑していたが役に立つ力なら欲しいものだ。
この短時間で色々なことが起こったがさっきのこいつの言葉でどうでもよくなった。
どんな能力だろうか、暴食っていうぐらいだし・・・
『作物が養分をたくさん採ってすぐに育つ』みたいな能力なのだろうか・・・
でも『罪』って何が『罪』なんだろうか・・・意味が分からない。
継承されたってことは俺は罪を背負ったということなのだろうか、
と考えてる間に俺の脳内でそいつの声が響いた、
「さぁ!準備はいいかな・・・?」
「いつでも大丈夫だ。」
「じゃあ!片手を前に出して!こう叫ぶんだ!!『暴食渦』!!」
妙にテンション高いな・・・まぁいいや、俺は言うとおりにした、
「暴食渦!!」
突如俺の手からブラックホールのようなものが現れた、おぞましい気を漂わせている。
「止めるときは手を引きながら閉じるんだ!」
言うとおりに勢いよく手を引きながら閉じると、ブラックホールは消えた。
「これが『暴食の罪』の力なのか?んでこれがどんな風に俺の農業に役立つんだよ?」
「我が主、何を言ってるんだ?この力は戦闘用だよ?」
「は・・・?戦闘・・・?なに言ってんだ、俺は農業で生きていくんだぞ?」
「また面白い冗談を!今からキミには『世界を変える』冒険をしてもらうんだよ?」
「世界を変える?何言ってんだ、俺には世界を変えれるほどの力も権力もないぞ。」
「あるじゃないか、キミには『暴食の罪』がね。」
その言葉にハッとさせられた、この能力は世界を変えれるほど強い力を持っているのかと、
「お前は本気なのか・・・?本気で俺に世界を変えれると思っているのか・・・?」
「思っているよ、元々のキミの力には期待していないけど、僕の能力を持っているわけだ。
可能性は物凄くあると思うけどね。」
若干俺を貶したようにも聞こえたが、それはスルーしよう。でもコイツが言ってることが本当なら・・・
俺はこの理不尽な世界を変えれるってことだ。それは夢にもない話しだ。
「そこまで言うなら・・・お前を信じてみる。でも俺は決して『冒険者』ではない。」
それだけはキッパリと言っておきたかった、俺は『冒険者』にはなりたくないからだ。
「そこに拘る理由は知らないが・・・信じてくれるのはありがたい!
さぁ始めよう!!これが革命への第一歩となるのだからね!!」
随分とオーバーだな・・・まぁいいか、とりあえず旅に出る準備をしよう。
俺は準備をしながら聞いた、
「世界を変えるためには何をすればいいんだよ?王を倒す、とかか・・・?
正直倒せる気がしないんだが・・・」
「いや、そんなものじゃないよ。キミに倒してほしいのはこの世界の神『ゼウス』さ。」
神を倒す・・・?コイツは何を言ってんだ、そんなもん実在するわけ・・・
いや、待てよ。こいつみたいな意味の分からない奴もこの世界にはいるわけだ、
神だっているかもしれない・・・本当に神を倒すってのか・・・?
「神を倒す、って意味がいまいち分からないんだけど・・・」
「そのまんまの意味さ、キミが神となるんだよ。新たな世界を創るんだ。」
俺が神になる、その言葉が本当なら少し面白そうだ。この腐った世界を終わらせることができるんだからな。意味のない『冒険者』なんていう役職をこの世から消せるんだ。地位も名誉も全部なくして、みんな平等に生きることが出来る世界を創ることが出来るんだ・・・最高じゃないか。
「まだちゃんとは分からないけど・・・その話しを聞いて何かやる気が湧いてきた、
やるよ俺・・・新時代の神になってみせる。」
「それでこそ『暴食の罪の継承者』のあるべき姿・・・!!」
俺は決心し、世話になった人たちに別れを告げ、このルマノ村を跡にした。
―――ここから『俺』と『僕』の世界を変える旅が始まる・・・
って格好つけて村から出たのは良いとしよう・・・ここからが問題だよな。
どこに行けば良いんだ、おい、少しは教えてくれても良いだろ?ベルさんよぉ。
「なんだい我が主、今日何をすればいいか分からないって言いたいんだろ?」
全くコイツは相変わらず陽気な喋り方だな・・・この状況を分かってんのか心配になる。
「大正解だ、教えてくれよ。お前にはそれくらいの責任があるはずだ。」
「しょうがないなぁ、教えてあげるよ。とりあえずあの洞穴に入るんだ。
そうすればキミの旅のチュートリアルが始まるはずだよ。」
あの洞穴に?見るからになんかいそうだけど・・・
でもコイツが言ったんだ、何かあったらコイツに責任を取らせよう。
そう誓いながら俺は恐る恐る、その洞穴の中に入った。
中は案の定真っ暗で何も見えない、こんなところで敵にあったら即終了だぞ。
俺の所持品には運よくライトがあったので・・・いや、これもコイツの計算だろうな。
どんだけ後先のこと考えてんだよ・・・
そんなことを考えてるときだった、
前に赤い光が二つ見えた、なんだあれ?鉱石?でもあんな丸くないよな・・・
じゃああれは・・・ジッと見ていた俺はその光の正体に気付きゾッとした。
おい、嘘だよな・・・な?ベルなんか喋れよ・・・?
戸惑いを隠しきれなかったのも当然だ、俺の前にいたのは俺よりも遥かに大きい化け物だったのだから。
赤い光の正体はその化け物の目だった、蜘蛛だが蜘蛛じゃない。分かるよな・・・?
大きさが普通じゃない、そんなとき脳内に声が響いた、ベルの声だ、
「これはチュートリアルが始まったね、面白くなりそうだ。」
「ふざけんな!こんな化け物倒せるかよ!!」
「まぁまぁ・・・そりゃ少しは僕も手助けするよ。
このモンスターの名前は『大きな蜘蛛』そのまんまだね。
基本的な攻撃パターンは・・・って説明してる暇は無さそうだね。」
その直後だった、その蜘蛛が俺向かって猛突進で走ってきた。
まずい、そう察した俺はすぐに避けた、なんだこりゃ無理ゲーだろ。
「今のが説明しようとしていた一つ目の基本攻撃『突進』
単純な攻撃だけどね、当たったら即死亡と思ってもらっていいよ。」
「即死亡と思ってもらっていいよ、じゃねえよ!!こんなの無理だろ!!」
俺の嘆きなんて無視して、ソイツはまた俺向かって突っ込んできた、また俺は横に避けた。
「くそっ、これじゃキリがない。どうすればいいんだよ。」
「さぁ!今こそ使うときじゃないか?あの能力を!」
「そうか、今こそ使う場面だよな!!」
俺はソイツ向かって右手を翳し、あの時と同じように叫んだ、
「暴食渦!!」
そう叫んだ瞬間、俺の手のひらからあの時と同じブラックホールのようなものが現れた、
蜘蛛も抵抗しようとしたのだろうか、こちらに向けて口から糸の弾丸のようなものを無数に放出した、
だが、その攻撃さえ渦は吸い取っていく、なんだこれ最強じゃねえか・・・
「よし!一旦それを閉じるんだ!そしてまた同じように右手を翳しこう叫べ!
網弾!!さぁ!やるんだ!!」
俺は言われたとおりに再度右手を翳し叫んだ、
「網弾!!」
その瞬間、俺の手のひらからあの蜘蛛が放ったものと同じような弾丸が出現した。
放った弾丸が容赦なく蜘蛛を襲う、気付くと蜘蛛は網で覆われていて、身動きが出来なくなっていた。
「さぁ!あとは吸い込むだけだ!!再度暗黒渦を出すんだ!!」
「お、おう!分かった!暗黒渦!!」
その渦は徐々に徐々に身動きできない蜘蛛を吸い込んでいく、これは残酷だな。
気付くともう蜘蛛はいなくなっていた、俺は静かに手のひらを閉じてベルに問いた、
「おい、ベル。この蜘蛛を吸い取ったことで俺の何が変わったんだ?」
「よくぞ聞いてくれた!今の蜘蛛から三つの能力を得ることが出来た!」
コイツはこういうことになるとテンション高いな・・・俺は呆れながら素直に聞いた、
「一つ目は『蜘蛛』!蜘蛛が出来ることは大抵出来るんだ!
二つ目は『万能糸』!普通の糸より万能な糸を出すことが出来るんだ!
三つ目は『静寂な足音』!足音を消すことが出来るんだ!
どうだ!凄いだろ?暴食の罪の力!!」
「はいはい、凄い凄い。」
正直一気に説明されて理解が追いついたのもあったが、
八割方コイツの高すぎるテンションに付いていけていなかった。
「この能力は今すぐにでも使えるのか?」
「使えるよ!使いこなせるかは別としてね!!」
そうか・・・こうやって色んな力を得ながら強くなるっていうことか。
これが暴食の力の活用方法なんだな、いや、ただのチートだな。
荷物を再度確認して、俺が洞穴を抜けようとした時だった、
風を切る音と同時に後ろから投げナイフのようなものが俺の右横をスレスレに飛んできたのだ。
なんだこりゃ、また化け物か、と思いゆっくり後ろを見てみるとそこには女性・・・いや女の子がいた。
まさかこの子が俺に対して・・・?混乱している俺を差し置いて、彼女は口を開いた、
「お前何者だ・・・?この洞穴で何してた?冒険者か?私は・・・」
その自己紹介を止めるように俺も口を開いた、
「俺は『冒険者』ではない。」
そう発した瞬間だった、彼女の眼つきが変わった。
そして彼女はこちらを睨むようにして言った、
「冒険者じゃないなら決まりだな、最近この辺を荒らしている盗賊だよな・・・?
私は絶対許さない、お前みたいな奴はここで殺してやる・・・!!」
そんな殺気を込めた言葉を放った瞬間、彼女は鞘から片手剣を出しこちらに向かって走ってきた、
「おい決め付けかよ・・・!死なないためだ!これは抵抗なんだ!!」
能力を使おうか悩んでいる俺の脳内に陽気な声が響いた、
「今こそ使うときじゃないのかな・・・?」
「分かってる!はぁぁぁ!網弾!!」
能力『万能糸』を活用して創った技、さっきの蜘蛛が使ってた技だ。
その弾丸は容赦なく彼女を襲う、だが彼女はそれを軽々と避けながらドンドン走ってくる、
「ふんっ!そんな技にやられるわけないだろ!!」
「くそっ・・・!この技をもっと活用すれば・・・!網弾・乱!!」
さっきと同じ弾丸が周囲に現れ、彼女を勢いよく襲う。
網弾とは比べ物にならないくらいの速度と量だ。
威力も上がっている、辺りは砂やホコリが舞って何も見えない、彼女がどうなっているかも分からない。
でも・・・これを無限に撃てる自分のチート能力にびっくりだ。
「さすが我が主!さっそく自己流に活用するとは!!」
「おい、ベル!あの子はこれで死んじゃうんじゃないのか・・・?」
「それはないと思うよ、心配せずに撃つと良い!!」
なぜそう言い切れるのか、確証は全然ないが俺はベルを信じた。
そんなときだった、砂ぼこりの中に影が見えた、影はどんどんこっちに向かってくる。
あの子だ・・・!まさかこの量の弾丸を避けているのか?どんな身体能力だよ・・・!
「こんなショボイ連射技じゃ私の身体を一ミリも削ることは出来ないよ!!」
―――そう、この時点で俺は気付くべきだった。確かに俺もチートだ。
だが、彼女は俺が持っている『チート能力』を上回った『チート能力所持者』だということを。
―ソウタが現在所持している能力―
・天候予言・・・未来の天気を知ることが可能
・農業の教え・・・農業全般が上手くなる、育てた作物が美味しくすることが可能
New・暴食の罪・・・暴食の魔人『ベル・ゼブブ』から受け継いだ力、『七つの大罪』の一つ
New・蜘蛛・・・蜘蛛が出来ることは大抵可能
New・万能糸・・・通常の糸より硬く、活用方法がたくさんある万能糸を出すことが可能
New・静寂な足音・・・歩いたり走ったりするときの足音を軽減することが可能
今回は『暴食の罪』が少し実践で使われましたが・・・
なかなかのチートっぷりに私も圧巻されています。
だが、それを上回る謎の少女・・・もう展開考えるのが楽しい!!
「手に入れた力をどう活用するか」を考えるのも書くのを続けられる糧になっています。
次回も頑張って内容が薄くならないように頑張ります!!