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第4話「異世界にて王女様に出会う」

 なにがなんだかわからないうちにオレは街の人たちに賞賛され、気づくとこの国の王女様と会っていた。


 そこは美しい白亜の城であり、昔テレビで見たどこかの大聖堂のような場所が広がっていた。

 そんなこの世のものとは思えない場所で、そんな作り物の美しさを遥かに上回るひとりの美しい少女が可憐なドレスを身にまとい、ゆっくりとこちらに向かってきているのが見えた。


「お初にお目にかかります。私がこの国の王女です。あなたのお話は街の民達から聞いております。なんでも獣人に襲われた女性から荷物を取り戻したと。他にもいくつか我が民への協力をしてくれたとも、感謝に耐えません」


「い、いえ、そんな当然のことをしたまでですよ」


 出会い頭、王女様を名乗る女性にそう丁寧な感謝をされ、思わず遠慮するように返事をするが、その途端、それまで優雅にスカートの裾を持ち上がていた王女様が不意にドレスの裾を踏んづけてしまい、そのまま地面に『ビターン!』と大きな音を立てて倒れる。

 それには周りの兵士達も思わずギョッとして慌てているようであった。


「あの、大丈夫ですか?」


「ら、らいじょうぶ……れす」


 いえ、でもなんかものすごい音してましたし、明らかに顔から倒れてましたけど本当に大丈夫ですか?

 心配になって思わず起き上がるのを手伝ってしまったが、見るとやはり顔が赤く腫れていて涙目になっていた。よく見ると鼻が少し擦り剥けている。


「あ、そうだ」


 と、そこでオレはポケットにあったある物を思い出した。

 ゴソゴソと取り出したそれは絆創膏であり、日頃から色々と体を動かしているオレにとって擦り傷は日常のことだったで常備していた。

 それを剥がし、王女様の鼻の上にぺたりと貼る。

 一瞬キョトンとした王女様だったが、その仕草が少し可愛く思えて思わず吹き出してしまう。


「オレの国に伝わる傷を塞ぐための布のようなものです。それでしばらくすれば良くなりますよ」


 そう言って安心させるように微笑み、ついでに「痛いの痛いの飛んでけー」とおまじないまでかけてしまい、後からこれ男が女にやるんじゃんなく、むしろ逆だったんじゃないかと気づいた。

 が、王女様の方は特に怒ったような仕草はなく、むしろなぜかさっきよりも顔が赤くなってるように見えたが少なくとも怒ってはいないようだった。


「あ、あ、あああ、あの、あ、ああ、ありが、とう、ごご、ございましゅ……」


 なぜかあまりのうろたえっぷりに後半口調が噛んでいたような気がするが、そこはあまり気にしないようにした。

 こほんっと咳払いをして、改めて王女様が自己紹介をする。


「改めまして私、ミーティア=ル=レステレーナと申します、この国の王女です。よろしければあなた様のお名前を聞かせていただいてもよろしいでしょうか?」


「オレですか? オレは風間かざま天士てんし


「てんし……様、ですか?」


 そのオレの自己紹介にキラキラとした目を向ける王女様。

 なんだろう。まさか本当の天使とかと勘違いされてないよね?


「天士様、見たところあなた様は人間のようですが、なぜそのような強靭な体や能力を持っておいでなのですか?」


「ああ、これですか。うーん、なんと言いますか、実はオレこの世界の人間じゃないっぽいんです」


「え?」


 誤魔化すのもあとあとよくないと思ったオレは思わず本当のことを話す。

 ここに来た経緯とオレのいた世界について。

 すると思いのほか王女様はあっさりと納得し、オレの言った言葉に素直に頷く。


「なるほど、つまり天士様は異なる世界から来た人間だと。その世界だと天士様の肉体や能力などはそれほど珍しくないということですね!」


「ええ、そうなりますが、あれ? 信じてくれるんですか?」


 我ながらかなり信ぴょう性が薄い話だと思ったのだが王女様はオレの瞳をまっすぐ見てニッコリと微笑む。


「ええ、もちろんです。天士様は嘘をおっしゃっていません。それに天士様の強靭な肉体もそれなら納得がいきます」


 と、オレのこの世界でのスペックの高さが逆にこの世界の人間ではないという証明になっていたようであっさりと信じてくれた。


「それで天士様、異世界から来たというあなた様にいきなりこのようなお話をするのも申し訳ないのですが、実は折り入って一つお願いがあるのですが……」


「お願い? なんでしょうか?」


 目の前で急に不安な表情になる王女様にどこか不安を感じ、その先を聞こうとした瞬間であった。


「ようよう、貧弱な人族様ー。今日も皆さん、弱い者同士出来もしない戦術のご相談中かな?」


 唐突にこの謁見の間の扉が開きその向こうから先ほど広場で見た者と同じ、狼やライオン、サイと言った獣の姿をした獣人達が我が物顔でこの場へと割り込んできたのだった。

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