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第11話「異世界にて奴隷救出」

「おいおい、人族。お前それ本気で言ってるのか?」


「ああ、本気だぜ。オレが負けた時はオレを奴隷にするなり好きにしていいぜ」


「ちょ、て、天士様!」


 目の前で明らかにオレを見下すような態度を取るオーガ達に、そうはっきりと宣言し、それを聞いたミーティアが慌てて止めようとするものの、それより早くオーガ達がその宣言を受け入れる。


「よーし、いいだろう。なら勝負は腕相撲。オレ達三人を負かせればお前の勝ちだ。だが、お前が負ければその時点でお前の身柄はオレ達の好きにさせてもらうぞ」


 そう言ってどこからか調達してきたテーブルを大通りの中心にどかりと置き、そこに向かって腕を出して腕相撲の構えを取るオーガ。

 それを見て周りの観客達は騒ぎ出す。


「おい! マジかよ、オーガ族相手に腕相撲だって……?!」


「い、いや、でも天士様ならなんとかしてくれるんじゃないのか?」


「だが相手が一人ならともかく三人だぞ?! いくら天士様でも無謀すぎる! 天士様、やめてください!」


 口々にそう言ってはオレを引き止めようとするが、オレは引き気はなく連中の提示したテーブルの方へと近づく。

 その際、服の袖を引っ張る感覚を覚え、後ろを振り向くと、あのエルフの少女が困惑した表情でこちらを見上げていた。


「あ……あ、あの……ど、どうして……?」


 それは、なぜ自分のためにここまでするのかという疑問の感情が浮かびあがっていた。

 確かにヘタをすればオレまで奴隷となってしまうかもしれない事態。

 普通に考えれば見ず知らずの人物のためにここまでする奴なんていないだろう。

 そんな彼女の考えにオレは自分が思っていることを素直に口にした。


「君みたいな子が奴隷として連中の勝手で売り買いされるのが見ていられなかった。そんなところだよ」


 オレのその答えにキョトンとした少女だが、オレはそこで続けてもうひとつの本音を口にする。


「まあ、本当のことを言うと君がオレの妹にそっくりでさ。だから放っておけなかった。それだけなんだ」


 そう言って笑うオレの顔を見た瞬間、少女はわずかに微笑んだ。


「――イノ」


「え?」


「私の……名前、です」


 そう言って静かに呟いた少女の名前をオレは口の中で静かに復唱した。


「わかった。それじゃあ、イノ。ちょっと行ってすぐに君を自由にしてくるから待っててくれ」


「……はい!」


「それからミーティアも心配しないでくださいね」


「天士様……わかりました。でも絶対、負けちゃ嫌ですよー!」


 そう言ってオレを応援してくれるミーティアを見て、ますます負けられないなと思いながらオレはオーガの元へと近づく。

 連中は美味しい餌にかかった獲物でも見るかのように勝ち誇った笑みを浮かべていた。


「へへ、お前もバカな奴だな。正式な場での勝負ならもう少しそっちにも公平にできたものをこんな条件飲むバカなんてはじめて見たぜ」


「そうかい? むしろ、ちょうどいいハンデだと思うけど」


 そう言ってオレが相手の手に触れ肘をテーブルに置いた際、その発言にカチンときたのだろう。

 ほぼ同時にゴングがなり、目の前のオーガの腕に力が込められそれがそのまま手へと伝達されていく。


「バカが! いきがってるんじゃねぇぞ! 人族がどうあがいてもオレ達オーガ族の筋力に勝てるわ――」


 バチーン!!


 この大通り中に広がるような大きな音を立て、一瞬でオーガの腕が倒れ、その手の平がテーブルへと叩きつけられた。


 なにが起こったのか当のオーガを含め観客達も分からず、次の瞬間、オーガが一瞬で負けたのを悟ると、この大通りを中心に歓声が湧き上がる。


「うおおおおおおおお!! すげえええええ!! 見たか今の一瞬だった!!!」


「さすがだぜ! さすがは天士様!! オーガ族の筋力をものともしねえ!!」


「当たり前だぜ! なんせ天士様は発泡岩を素手で砕くほどの筋力を持ってるんだぜ! 連中に負けるはずがないんだよ!!」


 その湧き上がる歓声とは裏腹に残る二人のオーガ達は明らかに動揺する様子で怯えていた。


「お、おい! どうなってんだよ、こいつ! 人族が俺らオーガ族よりも筋力があるっていうのか?!」


「お、落ち着け! きっとスキルかなにかだ! 奴だって今のでかなり疲労してるはずだ、オレ達二人で一気に畳み掛ければこんなひ弱そうな奴……!」


 そう言って虚勢を張りこちらを見るオーガに対し、オレは静かに指先を動かし挑発を行う。


「さて、残り二人ですが、遠慮なくどうぞ。こちらは連戦でも全然構いませんよ」


 そのオレのまるで疲労を感じさせない素振りに改めて恐れを抱いたオーガ二人は開始と同時にスキルを使っては全力でこちらの腕を倒そうとしてくるが――


「うおおおおおおおおおお!! バカなああああああああああ!!!」


 連続でほぼ瞬殺。

 全力で腕相撲をした際、どうやらこの世界では力自慢のオーガも一瞬でねじ伏せられるほどの筋力が地球人にあることが発覚し、オレは三連戦という前代未聞の勝利を収め、この世界の人族の歴史にまた華々しい勝利を与えた。


「それまで! 勝者は天士様ー!!」


 そう言って呆気に取られたオーガ族を尻目に、喜びのまま跳ね上がり勝利宣言を行うミーティアを中心に中央通りに集まった人族全員が勝利を祝福し、エルフの奴隷となるはずだった少女イノを無事、助け出すことに成功した。

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