夜の出来事
僕たちは夜、星を見上げてただ思いを馳せる。
色々なことに思いを巡らせその記憶の曖昧さに恐怖する。好きだったこと.....。思い出......。
月。星。夜空。耳に流れるメロディ。隣の君。この気持ち。この気持ち。この気持ち。この気持ち!
「星は綺麗だね。」
「うん。」
「私今のことを忘れたくないけど、いつかは。」
「そうだね。」
僕の記憶はどこへ行く。
どうもがけばいいんだ。
どうしてこの大事な一瞬を
好きな人と一緒にいたことを
この綺麗な星空を
ここでこう考えたことを
自分の中にあるこの記憶の断片を
この気持ちを
どうして忘れてしまうんだ!
こんなに大切で忘れたくないのに!
この気持ちの風化を止めるにはどうすればいい....。
「どうして人は忘れて行くんだと思う?」
「さあ?僕はわかんないや。」
「多分この一瞬を大切にするためだよ。」
そう言って彼女は笑う。
「ああ......そうだね..........。」
僕は力なく笑う。彼女も残念そうに笑う。
「私は今幸せだよ。」
「うん。」
「星は綺麗だね。」
「うん。」
「私今日を忘れちゃうかもしれないけど、忘れたくない気持ちは本当だよ。」




