(7)
ーーー私は一瞬、何が起こったのか分からなかった。
確かに私は男に発砲した。男の銃が弾切れになったから、すぐに殺せると思ったからだ。そこまではいい。
ーだけどなぜ?ー
私の頬には赤い線が出来ていた。そこから血が一筋流れる。後ろには私の頬をかすった弾が壁にめり込んでいる。
「弾切れになれば俺は弾を込めるしかない。その隙に発砲すれば俺を殺せる…とでも思ったか?」
男は鼻で笑う。右手と左手にはそれぞれ別の銃が握られている。
しまった、と私は思った。あれは罠だったのだ。私をおびき寄せるための罠に私はまんまとはまったのだ。
「お前は頭がいい。訓練すれば俺よりも遥かに凌駕する頭脳の持ち主になっただろう…だが、俺の方が一枚上手だったようだな」
男は私の方に銃を向ける。あのまま彼がトリガーを引けば、私の額に確実に当たることだろう。
「ま、せいぜい自分のした事を後悔するんだな」私の頭の中は真っ白になった。ただ、終わったなということだけが直感で分かった。
「じゃあな、糞ガキ」
男がトリガーをゆっくりと引く。
死ぬ…そう思った時だった。
「!…いっ…」
突然、男が体勢を崩した。と、同時に何かが刺さる音が聞こえる。
「ちっ…いてぇなッ」
男が後ろを振り返る。私は無意識に立ち上がりながら男に向かって走り出す。
「?!…しまっ…」
男が私の方を再び振り返り、発砲しようとするが、一歩遅かった。
ガンッ、という鈍い音が病室内に響き渡った。