(6)
戦闘は終盤を迎えていた。私と加奈子は疲弊していた。目の前の男の軍人は疲弊という言葉を知らないらしい。私達は息を荒くしているのに、男はそんな様子など微塵も見せない。
男が上に向けて銃をぶっ放す。
「なぁ!そろそろ終わりにしないか?」
男は私達に叫ぶ。
「お前らじゃあ俺を殺せない。分かってるだろ?俺は軍人でお前らはただの一般人、格が違う」
私は思考を巡らせる。どうやら男は私達に「諦めて殺されろ」ということを遠まわしに伝えているらしい。
「要するに殺されろって事でしょ?冗談じゃないわ」
私は男に叫び返す。
確かに諦めてしまえばこの地獄から逃れられるかもしれない。この苦しみから、この痛みから。
でも…
「あんたみたいなイかれた殺人鬼になんかに殺される筋合いはないわ。もし、殺されるなら自分で自分を殺した方がましだ!」
「はっ、いつまでそう強気でいられるかな!」
男は手当たり次第に私達が隠れていそうな場所に発砲しているらしい。
私があそこまで強気でいられる理由は一つ。チャンスを待っているからだ。その時が来るのを、その機会が来るのを、私は待った。
(まだだめだ。まだ…もう少し待て)
私は目を閉じて男にこれから起こるであろう出来事を待ち続けた。
ーーーそして、ついにその時がやってきた。
男がいる方からカチッ、という軽い音が聞こえた。
ー今だッー
私は奥のベットから出て、男に発砲した。